顧客の事業成果につながる「付加価値」の6つの要素
付加価値を生み出す営業組織のつくり方と、生成AIの新たな役割について考える本連載。第1回は、BtoBビジネスにおける付加価値の本質と、付加価値を継続的に創出できる理想の営業組織について解説します。
BtoBビジネスにおける「付加価値」とは、たんに製品やサービスの機能や品質を向上させることではありません。真の付加価値とは、顧客企業の事業成果へ直接的に貢献し、その成長を加速させる要素のことを指します。
BtoBビジネスにおける付加価値の6つの要素
1.生産性の向上:生産性向上は、多くのBtoB企業にとって最重要課題のひとつです。たとえば、従業員ひとり当たりの売上高、生産リードタイムの短縮率、自動化による人的エラーの削減率などがあげられます。
2.財務の改善:顧客企業の財務状況を改善することは、長期的な信頼関係構築につながります。たとえば、ROI(投資収益率)の向上、運転資金の削減額、債権回収期間の短縮日数などがあげられます。
3.CSR(企業の社会的責任)の向上:持続可能性と社会的責任は、現代のビジネスにおいて不可欠な要素です。CO2排出量の削減率、サステナビリティレポートの品質向上、社会貢献活動への参加率上昇などがあげられます。
4.コストダウン:効果的なコスト削減は、顧客企業の競争力強化に直結します。品質を維持した状態で、総コスト削減率、エネルギー使用量の削減率、在庫回転率の向上などがあげられます。
5.リスクの回避・軽減:不確実性の高いビジネス環境下で、リスク管理の重要性は増しています。セキュリティインシデントの減少率、コンプライアンス違反の削減、リスク対応時間の短縮などがあげられます。
6.付加価値の向上:最終的に、提供する商品やサービス自体の価値を高めることが重要です。商品単価の向上、顧客満足度スコアの向上、リピート率・クロスセル率の上昇、新規顧客獲得コストの低減などがあげられます。
これらの要素を総合的に提供することで、自社は顧客にとってかけがえのない存在となり、長期的な信頼関係を築くことができていきます。実は、そこまで難しい話ではありません。
- 工場がこのような状況では、従業員の皆さんは働きにくいだろう
- 商品棚がこのような陳列では、お客様が買いにくいだろう
- 取引先の経理の人たちは、月末は煩雑な仕事が増えて忙しいだろう
このように、お客様の痛みを自分の痛みとしてとらえて、その痛みを解決していくことが基本的な姿勢です。つまり付加価値を正しく理解するためには、自社の視点ではなく顧客の視点に立つことが重要です。たとえば、製品の機能追加が必ずしも顧客にとって価値があるとは限りません。複雑な機能を追加するよりも、画面遷移にかかるクリックがたった1回でも少ないほうが顧客にとっての価値になることもあるのです。
わかりやすい例として、コンビニや飲食店でのセルフレジを思い浮かべてください。この場合、機能を追加するどころか、画面遷移時間を優先して機能を減らしています。たった1回のタッチを減らすことで、そのコンビニの昼の売上が何千円も上がるとして、2万店舗あったらどうなるでしょうか? 顧客企業の業務効率化やコスト削減、売上増加などの具体的な成果につながる提案こそが、真の付加価値となります。今も昔も、ビジネスの本質が変わっているわけではないのです。