営業だからこその「気づき」
高橋(SalesZine編集部) おふたりが牽引する事業は、営業活動の中で見えてきた顧客や市場の課題を起点にスタートしたとうかがっています。その経緯を教えてください。
野田(エン・ジャパン) 当社は求人サイトや人材紹介サービスなどHRに関連する事業がよく知られていると思いますが、私自身は現在非HR分野に携わっています。とくに力を入れているのが、2021年にスタートした「エンSX(セールストランスフォーメーション)」です。
「エンSX」を立ち上げた主なきっかけはコロナ禍でした。当時、多くの企業は売上の確保に苦労している状況で採用活動どころではなく、私たちにとっても苦しい時期が続きました。このとき改めて考えたのが「結局、事業成長がなければ採用は生まれない」ということです。そこで採用を生み出す手前の動き、つまり事業の成長を支援しようと、私たち自身が実践した営業改革のノウハウを外部に提供することにしたのです。
竹田(jinjer) jinjerは2021年に設立されました。「世界で最もお客様を大切にする」という価値観を大切にしており、現在提供しているクラウド型の人事労務システム「ジンジャー」にもこの考えが反映されています。
「ジンジャー」自体は2016年にサービス提供を開始したのですが、その背景には当時の人事労務領域の非効率さがありました。人事労務領域は多くのバックオフィス業務が存在します。国内は紙が多用される一方、欧米ではSaaSやクラウドサービスの技術がどんどん進化している状況でした。そこで、これらの技術と人にまつわるデータを活用してビジネスを展開し、シナジーを生み出すことで、お客様が抱える問題や業務の非効率性に対して価値を提供しようと考えたんです。
高橋 実は私もコロナ禍を人材業界で過ごしたのですが、野田さんが言及された「採用の前に事業成長が必要」という課題は同様に感じていました。とくに営業は、お客様と相対する中でさまざまな課題に直面していたと思います。
野田 私も当時営業現場にいましたが、売上目標を高く設定していたこともあり、目標の4割程度しか達成できないような状況でたいへん苦労しました。その原因を探ってみると、そもそも店舗を開くことができない事業では「どう人員配置を変えるか」「どう事業をシフトさせるか」などの議論がまずは必要で、お客様の思考がまったく採用に向かっていないことがわかったんです。
ただ、もともと私たちは求人情報を扱うためにお客様の事業内容を詳しくお聞きする機会が多く、その中で営業戦略をご提案する機会などもありました。コロナ禍の状況に加えて、こうしたお客様との関係性も「エンSX」事業立ち上げの背景にあったと思います。