自然に雑談できる人は、人に教えるのが苦手
私は雑談がとても苦手でした。学生のころは「おとなしいヤツ」と思われるだけで済んでいましたが、社会人になっていざ営業に行ったとき、初めて雑談の重要性を痛感しました。気難しそうなお客様を目の前にして、何も言えずにいきなり沈黙してしまったのです。
私「……」
お客様「……」
私「あの……、お忙しそうなのでさっそくご説明させていただきます」
早口で商品説明を進める間、お客様はひと言も発しません。話し終わると逃げるように帰ってくる。そんなことの繰り返しでした。
さすがに自分でもわかります。最初に軽く雑談して場の雰囲気を和らげないと、そのあとの商談も前向きな姿勢で聞いてもらえません。これは営業として死活問題です。しかし、どんな話をすれば良いのかがまったくわかりませんでした。そこで、トークがうまい先輩に聞くと、「なにをあたりまえのことを聞くんだ」と言わんばかりに、次のように言われました。
「その場で思いついたことを話せば良いんだよ」
しかし、その人にとってのあたりまえは、私にとってのあたりまえではありません。雑談は、自然にできる人にはごく普通のことかもしれませんが、できない人にとってはとてもハードルが高いのです。
本に「天気の話をすると良い」と書いてあったので実践しましたが、それも私にはしっくりきませんでした。雑談がうまい人の話を隣で聞くたびに落ち込みます。即興でどんどん言葉が出てきて、瞬時に対応できる頭の回転の速さに憧れました。
もしかしたら、あなたの部下にも私のようなタイプがいるかもしれません。その人に、「もっと盛り上げなさい」とか「おもしろい話で笑わせなさい」などと指導しても、おそらくうまくできないでしょう。それよりも、誰でも実践できる効果抜群の方法があります。次ページから、売れている営業が行っている営業プロセスを可視化した「ステップ営業法」のふたつめ、「アイスブレイク」のコツについて解説します。