見込み客の「情報収集」の内容を掘り下げる
前回はインサイドセールスが「プ譜」を活用して架電前にどのように仮説を立てるべきかを解説しました。今回は、事前の仮説をもとに架電時の対話を通じて、見込み客の「成功の定義」を一緒に見つけていくための方法について解説していきます。
架電前に仮説のプ譜を表示しましょう。シートをコピペし、そこに議事録代わりに見込客から得る情報を入力できるようにしておきます。なお、解説にあたり前回の記事でも記載した次のシチュエーションを用います。
・提供製品:AIを使用した会議支援SaaS「kaigee(カイギー)」
・架電前に行った施策:「AIは企業の仕事をどのように変革するのか?」というウェビナーを開催。その参加者に資料ダウンロードのURLのついたサンクスメールを送信
・電話をかける相手:メールを開封してkaigeeの資料ダウンロードしてくれた見込み客
それでは早速上記の見込み客に電話をかけてみるとしましょう(以下、インサイドセールスは「IS」と表記)。
IS 先日はセミナーに参加いただきありがとうございます。「AIは企業の仕事をどのように変革するのか?」というテーマで、○○さまには会議効率化のセッションを聴講いただいたのですが、どのように会議を効率化できていたら成功と言えるでしょうか?
見込み客 ちょっとわからないです……(藪から棒になんだろう……?)
本連載でもお伝えしてきたとおり、「わが社の勝利条件はこれ」と最初からズバッと言ってくれる見込み客はほとんどいません。このような状態の見込み客に、知りたいことを直接たずねても、かえって相手を白けさせてしまいかねません。そこで、数ある選択肢のなかでも、自社に関心を持ってもらった理由や背景について問いかけてみましょう。
IS AIによって効率化できる業務がたくさんあるなかで、今回どうして会議の効率化に関する製品資料をダウンロードいただいたんでしょうか?
見込み客 ちょっと興味があったのと、情報収集もしておきたくてですね
「情報収集」は見込み客からよく聞く言葉ですが、ここで「まだ情報収集段階か」とヒアリングを止めたり、予算や導入時期の質問に切り換えるのは尚早です。インサイドセールスはフィールドセールスにつなげるために「BANT条件」を聞こうとしますが、プロジェクトの初期段階ではこのような情報は決まっていないことがほとんどです。このタイミングでは、売り手側のための情報だけを引き出そうとするのではなく、見込み客のために、見込み客のあいまい模糊とした状態を助けていく必要があります。
「情報収集」という言葉が出たら、さらに具体的に聞きにいきましょう。このとき「仮説プ譜」に書いた中間目的が役に立ちます。中間目的には「会議の生産性を向上させる」ための一般的な要素とあるべき状態を記述しています。「あるべきではない状態=課題」と考えて、いくつか候補を出し、相手がどのような情報収集をしたかったのか具体的に聞いていくのです。仮説プ譜があれば経験の浅いメンバーでも、安心して質問をすることができます。
IS 会議が生産的ではないと感じる方は「会議の着地点がわからない」「出なくて良い会議に出る時間や回数が多い」「すぐに脱線してしまう」などさまざまな課題をお持ちですが、○○さまがとくに情報収集したいと思われた、あるいは日ごろ課題に感じておられるのは、どのようなところなのでしょうか?
見込み客 個人的に課題だと感じているのは、議論がよく脱線してしまって、結論が決まらないとか……参加者もよくわからず終わってしまうところですね……
見込み客からの返答内容に、プ譜に書き出した中間目的に当てはまるものがあれば、返答内容の意味が該当する中間目的と同じ意味ととらえて良いかを確認します。ニュアンスが異なるのであれば目的を書き換え、当てはまらなければ新しく書き加えます。ここでは「会議の目的・議題に適した発言・進行が行われていない」という中間目的に該当しそうなので、この中間目的が見込み客の返答内容と合致しているか(あるいは見込み客の言わんとしていることを表現できているか)を確認します。
IS 脱線してしまって結論が決まらず、参加者も次に何をしたら良いかがよくわからない状態だと、プロジェクトや業務の進捗スピードが上がらないですよね
見込み客 そうなんですよ
IS 今おっしゃった内容を「会議の目的・議題に適した発言・進行が行われているべき」とお考えだと捉えてもよろしいでしょうか?
見込み客 まさにそのとおりですね
具体的な課題がわかれば、課題に対してこれまで行った施策について質問することができます。