ベネフィットとは“相手にとって”良いこと
商品の魅力を最大限に伝えたのに、顧客の関心を惹くことができなかった経験はありませんか。もしかすると、あなたが伝えたのは売り手視点の魅力だったかもしれません。顧客に響くのは買い手視点=「顧客視点」の魅力です。よく「顧客視点で考えろ」と言われますよね。顧客視点とはいったい何か? どうすれば顧客視点に立てるのか? その鍵は、これからご紹介する「ベネフィット」にあります。
コピーライティングの世界では「商品自体を売るのではない。売るのはベネフィットである」と言われています。ベネフィットとは「相手にとって良いこと」を意味します。良いことや利点を表す場合、「メリット」という語が一般的ですね。メリットとは、誰の目から見ても優れている点や特徴を示します。一方ベネフィットは、商品・サービスがどのように優れているかではなく「相手(顧客)にとって良いこと、役立つこと」という顧客の内面にフォーカスしているのです。一般的にベネフィットとメリットは似たものとして理解されますが、コピーライティングでは「顧客にとって良いこと」である点を強調するために、あえてメリットと言わずにベネフィットと呼んでいます。
『究極のセールスレター──シンプルだけど、一生役に立つ! お客様の心をわしづかみにするためのバイブル』(著:ダン・S・ケネディ、監訳:神田昌典、訳:齋藤慎子/東洋経済新報社)にこんなエピソードがあります。
やり手セールスマンのこんな逸話がある。新型の住宅暖房システムを小柄な老婦人に売り込もうとしたときのこと。熱出力・構造・保証・サービスなど、言うべきことをすべて説明し終わると、老婦人が尋ねた。「ひとつだけおうかがいしますけど、それは私みたいなおばあちゃんでも暖がとれるものなの?」
この住宅暖房システムはたしかに素晴らしい機能を持っているのでしょう。しかし、ハイスペックな機能に関心がなく「暖がとれたら良い」と考えているおばあさんには魅力的に思えませんでした。相手がその製品・サービス自体に関心がない限り、いくら丁寧に製品・サービスのメリットを説明しても「だから何?」と思われて終わりなのです。
一方、「熱出力が優れていて今までの10分の1の時間で部屋が温まるため、外から帰ったあと寒さを我慢しなくて良くなります」と説明したらどうでしょう。おばあさんも「寒さを我慢しなくて良くなるなら、私にとって良いものだわ」とわかりますね。このように、その製品・サービスによって相手(顧客)がどのような悩みから解放されるか、どんな願いが叶うのかが「ベネフィット」です。人によって悩みや願いは異なるため、ベネフィットも、目の前の顧客に合わせて考えなくてはいけません。