よくあるクロージングの失敗例
初回商談のクロージングで、「いかがでしょうか」「ご検討いただけませんでしょうか」と顧客に問いかける営業をよく見かけます。なんとかして初回で決着をつけようとする意識の表れでしょう。
しかし、数百万~数千万もする製品・サービスの導入を初回商談の場で担当者がすぐに決めることができるでしょうか? 決裁権限のある役員層との商談でない限り、その場で意思決定を行うのは不可能なはずです。
それなのにも関わらず、「ご検討いただけませんでしょうか」と聞かれると、顧客はその場でYESかNOの判断をしなければならないと感じてしまいます。もちろんすぐに判断はできないため、「では、いったん社内で検討してみます」と答えざるをえなくなるわけです。
そして営業はその言葉を信じて、後日検討結果についてフォローをするのですが、ここから話が前向きに進むことはあまりありません。
そもそも、初回商談は契約までのプロセスの中のひとつのステップにしかすぎないはずです。つまり、初回商談のクロージングでは「決着をつけること」ではなく、「次に進むこと」をゴールとしてアプローチをする必要があります。
「トライアルしませんか?」のハードルは意外と高い
ある程度営業経験があれば、「いきなり『導入検討いただけませんか』はさすがにありえない。まずは『検証/トライアルをしませんか』と案内するようにしています」という方も多いでしょう。「導入のハードルは高いけれど、無償のトライアルならすぐにやってくれるのでは」と考えているからです。しかし、意外にも「トライアルしませんか?」とダイレクトに聞くことで次のステップに進む確率はそれほど高くはありません。
なぜなのでしょうか? 無償トライアルは、一見顧客にとってメリットしかないように見えます。しかし、トライアルにあたって、マニュアルを読んだり、環境を準備したりする必要がありますし、検証をしている時間、担当者は通常業務ができません。すなわち、見えないコストが発生するのです。
つまり、お客様にとってトライアルは「気軽にできること」ではなく、しっかり準備して行わなくてはならない、ハードルが高いものなのです。
また、「検討いただけませんか」「トライアルしませんか」というアプローチには、顧客にその場でYESかNOで回答してもらおうとしている、という共通点があります。顧客はその場で判断を迫られているように感じるため、「いったん検討します」と回答しやすく、結果として案件が前に進まない要因になってしまっています。
では、どうすれば「検討します」で終わらせず、次の商談につなげることができるのでしょうか。ポイントは、「YESかNOか」を迫るのではなく、顧客が自ら「今後はこうしたい」と言ってくれるように誘導していくことです。顧客が「次に進みたい」と思ってくれるクロージング手法をご紹介します。