米国と日本、セールス・イネーブルメントの大きな差
こんにちは。amptalk 代表の猪瀬竜馬です。連載第1回では「セールス・イネーブルメントって何?」というテーマについて、日米における差や、米国における定義に基づいて解説していきます。
私は2017年頃から数年間、米国でセールス・イネーブルメントに携わっていました。米国全体で600名程度の営業組織を持つ医療機器の会社に勤めていたのですが、オンボーディングは本社で隔週で行われており、応酬話法からデータの使い方までスクリプトレベルで徹底的に型化されていました。
このように、セールス・イネーブルメントの本場である米国では、オンボーディングをはじめ、さまざまな型化が進んでいます。 要因はふたつ。ひとつめは土地の広さ、ふたつめは離職率の高さです。これらの要素があるため「徹底的な型化をしなければとても人材のROIが合わない」という考え方が浸透しているのだと思われます。
ただ、当時の組織内で「Sales Enablement」という言葉を使っている人は誰もいませんでした。社内にあったのは「Sales Training」という部門。ロールプレイやインプットの研修などが行われており、徹底の度合いに違いはあれども日本と米国で実施している内容に大きな差はありませんでした。
しかし現在、イネーブルメントに関する認識の差は、日米間で大きく広がりつつあります。次の図は、日本と米国のGoogle Trendsのイネーブルメントの検索トレンドの差を表しています。
5年間の推移をご覧いただくと、米国の平均「63」に対して日本は「9」(2023/7/22現在)と圧倒的な差が生まれています。また、米国は上昇傾向である一方、日本は横ばいであることも見てとれます。
Gartner社の調査(※)でも「2027年までにSales Enablementの予算は50%増加する」というレポートが出されています。
※引用元:2023年2月に発表されたGartner社のニュースリリース
Gartner Expects Sales Enablement Budgets to Increase by 50% by 2027
また、LinkedInの定点調査「“Sales Enablement”の肩書きを持つ人数」が基本的に上昇傾向であることから見ても、米国ではイネーブルメントへの注目度が高いことがわかります。
では、日米で差が広がってしまっているのはなぜでしょうか?
前述のとおり、米国では地理的な背景や労働市場の背景から、高比率のインセンティブ設計や人材確保のための充実した育成プログラムが必須になってきます。 またSaaSプロダクトが世界でもっとも生み出されている国でもあり、ツールの利用も先進的に行われています。これらが要因となり、米国ではセールス・イネーブルメントが注目されているのです。
一方、日本においては、米国に対して国土が小さいことや、ツールの普及が米国より遅れていることも影響し、米国ほどセールス・イネーブルメントが浸透していないと考えられます。
しかし、新型コロナウイルスの影響によるリモートワークやオンライン商談の浸透、営業人材の減少を背景に、日本でも、セールス・イネーブルメントは各社が取り組んでいかなければならないものとなっています。