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2024年4月18日(木)14:00~15:30

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「代理店が自社製品を売ってくれない問題」を解決するカギとは? 才流がパートナービジネスの実態を調査

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 SaaS企業が成⻑を続けるために有効な「代理店(パートナー)ビジネス」。経営戦略として掲げる企業も出てくるなどその重要性は年々増している。しかし、国内ではまだまだノウハウが少ないのが実情だ。「代理店がなかなか売ってくれない」「パートナービジネスで成果を出すのは難しい」と悩む声も依然として挙がっている。このような課題の原因を探るため、編集部は「代理店(パートナー)ビジネス実態調査」を行った才流の桂川さんにインタビューを実施した。なぜ代理店は自社の製品を売ってくれないのか、どうすれば売ってくれるのか……。本稿はそんな疑問や悩みを解消するヒントとなるはずだ。

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調査結果から浮かび上がる、パートナービジネスの実態

──SaaS企業の成長には欠かせない代理店(パートナー)ビジネスについて、「代理店側の営業担当者」を対象に調査を実施した背景をうかがってもよろしいでしょうか。

才流は2023年2月、代理店(パートナー)ビジネスに関するインターネット調査を行った
(有効回答数:200件 調査対象:次の条件をすべて満たす22~65歳の会社員男女 (1)システムインテグレーター、商社・卸売、OA機器サービスのいずれかに所属(2)他社製品/他社サービスを自ら販売した経験がある(3)製造業、情報通信業、商社・卸売り・小売業、その他)

本調査を実施した背景としては、近年のSaaS企業の急成長において、代理店が原動力となっていることが挙げられます。Sansanを筆頭にARR(Annual Recurring Revenue=年間経常収益)が100億を超える企業が複数現れる中、売上の約6割をパートナーチャネルで生み出し、約4割の粗利を実現している企業も存在しています。多くのSaaS企業は依然としてThe Model型(営業プロセスを細分化し、部門ごとに分業化する営業モデル)の直販体制に主眼を置いていますが、急速に事業拡大を遂げている上場企業の多くは、代理店に販売を委託しているのです。

しかし、パートナービジネスに取り組んだものの、案件が増えないメーカー(ベンダー)も少なくありません。なぜなら、パートナー戦略に関する情報が限られているため、経験や勘に頼って進めている現状があるからです。また、パートナービジネス経験者がSaaS企業に転職しても、応用が効かない場合が多々あります。これは価格や業界といった商材特性により、代理店に働く力学が異なることが原因です。

パートナービジネスの成功への第一歩は、代理店に働く力学を抑えた戦略立案です。そこで本調査は、パートナービジネスの実態を定量的に明らかにし、メーカーと代理店双方にとって意義ある提携を増やすことを目指して行いました。日本では珍しい調査かと思います。

株式会社才流 コンサルタント 桂川誠さん
東証プライム社員5,000人のメーカー系商社で、SE・法人営業を経て、10年超にわたりPMMとして事業を管轄。BtoBマーケティング全域およびアライアンスを展開後、全社のデジタルマーケティング戦略を担う。才流ではパートナー支援事業の責任者およびコンサルタントとして活動。ITサービス、製造業などの業界を中心に、BtoBマーケティング、パートナー戦略などの支援を行っている

──なるほど。「メーカーと代理店双方にとって意義ある提携」を目指すには、メーカーは自社の視点だけでなく、代理店側の視点もとり入れる必要があると。

そのとおりです。多くの企業でパートナービジネスがうまくいっていない理由は、主にメーカーと代理店の間の“認識の齟齬”にあります。

齟齬が生じる大きな原因は2点で、ひとつめは、「代理店と契約すれば、すぐに売ってもらえる」という勘違いがあること。ふたつめは、「契約締結の窓口部門とさえコミュニケーションをとっておけば、現場の営業部門は顧客に紹介してくれる」と考えていることです。どちらもメーカーが自社都合の考え方で進めているため、成功につながりません。

調査によると、代理店の営業担当者の8割が、1社の製品だけでなく、競合他社の製品も取り扱っていることが明らかになっています(図1)。自社製品を優先的に取り扱ってもらうには、「競合や代替手段と比較して、自社の製品にどのような利点があるか」を明確に伝えなければなりません。

【図1】代理店営業担当者の80%以上が、同⼀カテゴリー内で 競合する複数の製品・サービスを取り扱っている。同⼀カテゴリー内で、取り扱っている製品・サービスが 6つ以上ある営業担当者は4⼈にひとり

また、代理店が自社の製品を売ってくれない理由を探るには、代理店にとってネックになっている課題を理解することが必要です。マーケティングにおいて顧客理解が重要であるように、パートナービジネスでは代理店理解が大切なのです

代理店が自社製品を売ってくれない…… 解決のカギは「コミュニケーション」にあり

──「代理店が自社製品を優先的に売ってくれない」というのは、メーカー側のパートナービジネス担当者が持つ最たる課題だと思いますが、本調査ではどのような解決の糸口が見えてきたのでしょうか。

代理店を動かす力学が見えてきました。ポイントは「代理店内における製品選定の意思決定者」「代理店内で意思決定に影響する因子」「代理店が必要とするセールスツール」の3点です。

ひとつずつご説明しましょう。第一のポイントは、代理店内の意思決定を左右するキーパーソンを見極め、コミュニケーションをとり続けることです。

代理店が注力する製品・サービスを選定する際に、会社や部署の方針で決まっていると答えた人は53%、現場の判断と答えた人は45%でした(図2)。つまり、「経営層と現場のどちらが代理店を動かすのか」を見極めなければいけないことを示唆しています。

【図2】代理店が注⼒する製品・サービスを決定する際、 「会社・部署の⽅針」で決めている⼈は53%。⽅針はなく、現場での判断を⾏っている⼈は45%

よくある失敗のパターンは、大企業の本社部門で代理店契約を締結しただけで終わらせてしまうケース。支店や営業所に所属する、現場の営業担当者とのコミュニケーションがおろそかになっているため、現場で製品を選定する際に漏れてしまい、顧客に提案してもらえないパターンですね。

アンケートでもほぼ半々の回答になっているように、意思決定のパワーバランスは代理店によって異なります。そのため、経営層とも現場ともコミュニケーションをとりながら意思決定者を見極めていく必要があります。

そして第二のポイントは、注力製品を決定する因子は、機能や価格ではなく「コミュニケーションの密度」である点です。メーカーは「代理店が売りやすいのは、機能や価格が優れた製品」「インセンティブが重要」と考えがちです。しかし、アンケートの結果はその思い込みを覆しています(図3)。

画像を説明するテキストなくても可
【図3】代理店営業担当者が注力製品・サービスを選ぶ決め手は、機能や価格、インセンティブ制度よりも「メーカーとのコミュニケーションや連携」

コミュニケーションなくして、利害関係がない相手を動かすことは困難です。改めて言われれば当然ですが、パートナービジネスがうまくいかずに悩んでいる企業は、コミュニケーションがおざなりになっているケースが珍しくありません。

パートナービジネスは人と人との信頼関係から始まります。パートナービジネスが泥臭いと言われる所以ですね。信頼貯金がないと、代理店には積極的に売ってもらえません。

第三のポイントは、セールスツールの充実です。代理店の営業担当者は、複数の製品を取り扱っています。代理店側がすべての製品のセールスツールを自前で用意する時間はないですし、他社の製品を詳しく理解し顧客に紹介するのはかんたんではありません。言葉を選ばずに言うと「無理ゲー」です(笑)。

そのため、代理店はメーカーに「実績事例」「比較表」「デモ環境」といった説得力のあるセールスツールを用意してもらいたいと考えています(図4)。

【図4】メーカーに用意してもらいたいセールスツールは「実績事例」が42%。次いで「⽐較表」「デモ環境」など、 顧客メリットを裏付ける資料や体験が求められている

メーカー側は勘違いしやすいのですが、一度勉強会を実施したからといって、代理店が製品を深く理解し、顧客に適切に説明してくれることはありません。先ほども申し上げたように、8割の代理店が複数のプロダクトを取り扱っている状況ですから、顧客にどんな価値を提供できるのかを言語化しコンテンツに落とし込み、コンテンツが語ってくれる状態にする必要があるのです。

このような調査結果は、パートナービジネスに長く関わってきた方にとっては、肌で感じていたことが数字で証明された感覚があるのではないでしょうか。

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代理店の感情は「面倒」や「不安」 パートナービジネス成功のカギは3つの“KSF”

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この記事の著者

猪飼 綾(イカイ アヤ)

キクカク及びライティングユニットおたばぶのライターとして、IT・機械技術を中心に、ものづくりから飲食まで幅広い分野で取材・執筆。また、読者に愛されて、積極的かつ継続的な購買につながるファンマーケティングの観点から、オウンドメディアの運用支援やSNS運用など、Webマーケティング、ブランディング支援を...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

SalesZine編集部 宮地真里衣(セールスジンヘンシュウブ ミヤジマリイ)

新卒で営業職を経験したのち、編集プロダクションに転職し雑誌やウェブ広告の編集業務に携わる。2022年11月翔泳社入社。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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