“守りのCS”で、リソース配分に有効な優先度の設定
法人企業マスターデータベース「LBC」を搭載した顧客統合プラットフォーム「uSonar」を提供し、企業のCS、マーケティング活動を支援するユーソナー。同社の湯浅氏は、「LTVを最大化するためのCSには、利用や定着率向上などの“守り”と販売拡大の“攻め”の両軸が必要」と語る。
まず“守り”では、顧客に契約を継続してもらうことが重要なKPIとなる。ユーソナー自身が、多くの企業へuSonarを提供していく中で、「導入後の定着率を上げたい」「重要企業の解約を防ぎたい」「導入企業のサービス利用率を上げたい」という課題が発生した。そこで同社では、2019年ごろからCSの体制強化を図り、さまざまな施策を行ってきた。
CS部門の体制としては、責任者であるマネージャーのもと、「カスタマーサクセス担当」「カスタマーサポート担当」のユニットが組まれている。前者は「定期巡回コール」として1社1社への声かけや、新機能を紹介し使ってもらうための定期的な1対Nのセミナーなど、いわば「バックアップ」を担う。とくにセミナーは、困りごとや要望などを知る機会にもなるため、接点を継続することを目的に積極的に開催しているという。一方、後者のカスタマーサポート担当は、顧客からの質問やトラブルなど「問い合わせ対応」がメインになる。
「とくに問題がないというお客様についても定期的に巡回し、3ヵ月に1回以上のフォローを行い、課題感を引き出すようにしています。導入直後に問題がなくても、運用後しばらく経ってから、1年後、2~3年後でお客様の課題は変化していくものです。それに気がつかずに放置してしまうと満足度が下がり、解約につながる可能性があります」(湯浅氏)
しかしながら、すべての課題や困りごとに対応しようとしても、リソースは無尽蔵ではない。効率的に対応するためには、フォローの優先順位づけが必要となる。そこでユーソナーでは企業規模と年間の取引額でマトリクスに落とし込み、優先順位を決めてフォローを行っている。
活用範囲や規模が大きく、自社製品と共に事業成長を実現している「S顧客=優良顧客」には最優先でサポート・フォローを行い、企業規模は大きくても導入部門や機能が限定的な「A顧客=ポテンシャル顧客」に対しては、他社事例や機能紹介などを積極的に行いながらアプローチし、共にS顧客の状態を目指していく。
また企業規模は小さくても取引額の大きい「B顧客=準優良顧客」については、解約リスクの回避を意識しながらフォローを行い、将来性の高いスタートアップなど取引額がさらに大きくなる可能性を意識してアプローチしていく。そして、「C顧客=企業規模・取引額ともに小さい企業」についても放置するわけではなく、状況に応じてできる限りのフォローを行っていく。
攻守のタイミング見極めに必要な“企業情報”の収集
CSの“守り”のための対応は、時に“攻め”のきっかけにもなりうる。その指標となるのが「取引額の増加」と「売上規模の拡大」だ。たとえば、その業界景気の向上に加え、利用状況や問い合わせ数、ホームページへのアクセスの増加があれば、「取引額の増加」の可能性を捉えることができ、また資本金やグループ情報、合併情報、プレスリリースなどの情報から「売上規模の拡大」の機会を知ることができる。逆の情報が得られたら、解約の恐れがあるものとしてさらに効果的な“守り”のための対応を考える必要があるというわけだ。
そうした優先順位や攻守のタイミングについて、湯浅氏は「いつ、誰に、何を案内すべきかを可視化することが大切」と語る。しかしながら、1社1社に“刺さる”機能や状況、背景なども時間に応じて変わってくる可能性があり、それらの情報収集には時間がかかるのも、悩ましい問題だ。そこでユーソナーでは、自社ツール「sideSonar」で顧客企業に紐づく情報を一覧化し、アプローチのためのきっかけを見つけることに役立てているという。
情報源は、類似企業や系列、事業所などを集めた法人企業マスターデータベース「LBC」に加え、属性や企業の傾向、登記簿情報などの「企業情報」、最新ニュースや人事異動、有価証券報告書や株価などの「外部情報」、そして業界概要や最新動向に加え、サプライチェーンなどの「業界情報」、そしてCRM/SFA連携による取引活動履歴なども該当する。湯浅氏は「CS活動の中で、数千万ものニュースサイトやコーポレートサイトなどから、日々情報の収集活動を行い、事業活動に活かしている」と語った。
また、sideSonarには「ライブアクセス機能」が設けられており、インテントデータの利用も可能だ。インテントデータとは、顧客が自社の商品やサービスなどに興味・関心などを持ち、意図(intent)を持って起こした行動のデータであり、自社サイトへの来訪や資料のダウンロード、サイトのどのページに訪れているのか、どの部分を熱心に読んでいるのかなどが該当する。CSは顧客と接点を持つ前に、企業IPから逆引きしてそれらの情報を収集し、対応の参考にしているというわけだ。たとえば、普段使っているサービスとは異なるサービスを閲覧していたら、導入事例を紹介し、希望があれば資料を送るといった対応が有効となる。
一方、ネガティブな情報をキャッチすることにも効力を発揮する。たとえば同社ではFAQページに「解約の仕方について」という項目を設けており、それを閲覧している顧客を察知した場合は、早めにフォローを行って困りごとをヒアリングしたり、次回の契約更新を促したりしていくというわけだ。契約更新のタイミングぎりぎりに解約を言い渡されても、そこからの巻き返しは難しい。まさに“守り”についてもタイミングが重要と言えるだろう。
湯浅氏は、「企業にまつわるさまざまな情報を知り、顧客の動向を把握し、攻守の適切な対応が可能になる。時間がかかる情報収集および活用において、ユーソナーがお手伝いできることは多い」と語った。
新規受注1.5倍 uSonarを効率的な“攻め”のアプローチに活用
そして、湯浅氏はもうひとつ意識すべき観点として「正しい顧客への販売ができているか」をあげた。これをCSが判断していくのは役割的に難しいとはいえ、自社サービスが顧客のニーズにフィットしていないと、継続的なフォローがCSの大きな負担となる。そこで、CSから営業などにそうした情報をフィードバックし、自社の強みが活きる「適切な顧客」への販売を促していくこと、いわば「プロダクトマーケットフィット(PMF)」を実現することで、全体的な効率性、高収益性、さらにはLTV向上につなげていくというわけだ。
実際、ユーソナーの顧客でも企業情報を活用した「攻守のCS」を実現し、戦略的に成果を上げている企業は多い。たとえば、某ICT事業会社では、「バンドル」と呼ばれる付随サービスを多数利用している顧客について分析し、既存顧客の中でも優良顧客以外、前述で言うところの「A顧客」に該当する企業リストを抽出してアプローチすることで、取引額が向上したという。湯浅氏は「正しい顧客への販売を意識し、CSで正しいタイミングで正しい内容のフォローを行うことで、より少ない工数で利用・定着率の向上が可能になる」と語った。
さらに企業情報を活用することで積極的な“攻め”のCSにも大きな効果をもたらす。たとえば、契約後のフォローをし続けていても、1社あたりの利益が思うように増えない、顧客の購買ポテンシャルを活かせていないことがある。湯浅氏は「顧客理解の高度化によって、アップセル・クロスセルを的確に行っていくことが重要」と語る。
たとえば、uSonarでは事業内容や基本的な属性、業種、役員構成などに加え、「ストーリー」という企業特徴に関する情報を提供している。ストーリーは有価証券報告書や求人広告、自社サイト内などから情報を収集し、項目づけがなされている。それによって新規事業開発を実施していることや、マーケティングや営業職、管理職などを募集していくことがわかり、「どのようなコンテキストで事業活動を行っているか」が可視化できるのだ。さらに、インテントデータとして、その企業が自社のサービスサイトに来訪しているかどうかもわかるため、どのサービスに興味があるのかも推測できる。
「uSonarでは、タブで遷移することでこれらの情報を一元的に閲覧することができます。イチから情報収集しようとすると、サイトやプレスリリースを検索したり、Googleアナリティクスで分析したりする必要があり、膨大な手間がかかるのです」(湯浅氏)
実際、インサイドセールス組織でuSonarを活用している企業では、1社の情報収集に30分〜1時間もかかっていたが、15分以内で必要な情報の収集が可能になった。結果的に、架電などの対応効率が上がったという報告もある。
さらに支店や店舗、工場などの複数拠点の情報も一覧化できるため、未取引の事業所を可視化して優先的にアプローチすることも可能だ。それによってコストダウンが図れたり、組織内でのスタンダートとなったりすることで、解約のリスクを低減し、LTVを向上させていく。
たとえば、ある企業ではこうした法人データの複数拠点情報を活用することで、既存顧客の未導入の部門や事業所を可視化してアプローチし、新規受注が1.5倍に拡大したという。また、SalesforceとuSonarを連携させることで、狙うべきターゲットなど企業情報やリスト作成の工数も最大4分の1へと削減している。
「LTVを最大化するためには、顧客理解の高度化によるアップ&クロスセル提案で販売拡大につなげ、さらにヒアリングの機会とすることで関係性を深めることが大切です。また事業所紐づけ情報を活用した各拠点への横展開、資本関係紐づけを活用したグループ企業への横展開などによって、LTVはもちろん自社全体の利益の最大化など“攻め”の活動に結びつけていくことができます」(湯浅氏)
最後に湯浅氏は、「効率的な企業の情報活用によって、利用や定着率向上などの“守り”と販売拡大の“攻め”の両軸におけるCSによる活動効果を高め、LTVの最大化につなげていくことができる」と呼びかけ、「デモや導入事例の要望、詳しく知りたいことなどがあれば、気軽に相談してほしい」と語り、セッションのまとめとした。
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