自社と顧客、両者の成功に必要なマインドとは
──早速ですが、大軒さんの現職に至るまでのキャリアを教えてください。
新卒で日商岩井(現:双日)に入社し、営業部門で勤務していたとき、私が所属していた部門と販売会社2社を統合する大型プロジェクトが立ち上がり、私も参画しました。統合に関する経験の中で、自分が「している仕事」は、実は会社の看板で「させてもらえていた」と思い知りました。仕事は自身の力量が伴わなければ、ままならないと知る、とても良い機会になりました。
そこで、自分に裁量権があり、チャレンジできる環境に身を置けば、もっと力がつくのではないかと転職を決め、Works Human Intelligence(以下、WHI)の前身の会社に入社したんです。
──商社からIT業界へ、業界も変えてチャレンジの場を選んだ理由もうかがえますか。
当社の経営層との面接で、希望していた経営企画ではなく、「ユーザーコミッティ」という仕事があると紹介され、それがとても面白そうな仕事だったからというのが大きな理由ですね。成長できる、裁量権が大きな土壌を求めての転職だったため、「お客様の満足度を上げることに関わるなら、どんなことをしても良い」という言葉で転職を決めました。
当時はお客様が増加しつつあるタイミングで、100社超のユーザーを抱えるユーザー会という母体がありました。それを本格的に活性化させていくフェーズで、私が担当になったんです。その後1,000社を超える規模に育てることができたのですが、そこまでにお客様からのフィードバックをいただいて新しいサービスを立ち上げたり、ユーザー会という枠組みにとらわれずにさまざまなことを試したり、多くの経験を積ませてもらえました。
その後ユーザーコミッティを一度離れ、「お客様の満足度調査等を実施する組織」の立ち上げに関わりました。お客様からの声をしっかりと捉え、経営や開発に課題を上げる仕事を担当したのですが、ユーザーコミッティを担当していたときとは違う角度からお客様の声に触れ、私の中で「満足度」に対する見方が変わったんです。
かつて私はお客様全体にとっての最適解を出すことがユーザー会の使命だと思っていました。もちろんそれは引き続き重要ですが、お客様から見た当社の姿や、製品・サービスの捉え方を通じて、そのうえで個々のお客様の成功や幸せを追求する姿勢もまた大切だと思い至ることができました。そして組織改編と共にユーザーコミッティへまた戻ってきたというわけです。
──さまざまな角度からお客様の成功について考え抜かれたのだなと感じます。ユーザーコミッティが入社の決め手だったということで、もともと「お客様と自社の成功を両立すること」に対する課題感もあったのでしょうか。
前職の商社は自社製品を持たないため、問題が生じた場合でも、商品に関するトラブルの場合にできることが少なく、葛藤がありました。誠実でありたいと思っていても、メーカーとお客様の間をおつなぎする立場であるため、うまく連携できずに不幸な結果になってしまうケースも正直あったのです。
自社製品の強い会社に行きたいという思いで転職したのが、現在の当社です。しかし、ジレンマがすべて解決したわけではありません。自社製品が強いからこそ、見落としてしまうお客様の声も多々あったと感じています。
いま強く感じているのは、お客様には法人としての立場と、組織に所属した個人としての立場、そしてそこを離れた自分自身の立場があり、さまざまな要素が混ざり合ったうえで発言していらっしゃるということ。関わる人たちのあらゆる事情を理解したうえで融合させる仕事ができれば、両者の幸せや成功に貢献できるのではないでしょうか。