顧客層が変化、コロナ禍で解約率も上昇
──まず、おふたりのこれまでのキャリアと現在のお立場についておうかがいできればと思います。
宮崎 新卒で三菱電機に入社し、通信製品の事業企画等に携わったのち、ソフトバンクに転職し経営企画の仕事に就きました。その中で法人向けの新規事業開発や既存事業の拡大の支援においてSPEEDAを活用していました。その後、ご縁があって2020年10月にユーザベースに入社し、SPEEDAのカスタマーサクセスに携わってきました。
現在はカスタマーサクセス組織の中で「Engagement Unit」のリーダーを務めています。SPEEDAは多様な企業・部署でお使いいただいているサービスですが、その中でも事業会社を中心に、会社として初めてSPEEDAを活用される企業様や、経済情報の調査・分析を本格的に取り組まれるようなユーザー様に対して、皆さまの目的・業務に基づいた活用のご支援や、他社事例や一般的なフレームワークを踏まえたご提案など、お客様に伴走しながら活用の支援を行っています。
中尾 前職のNTTドコモで経営企画やサービスの立ち上げ、法人営業戦略などを担当しました。MBA取得のために通っていたビジネススクールでの出会いをきっかけにカスタマーサクセスという職種に興味を持ち、ユーザベースにはカスタマーサクセスとして2021年4月に入社しました。現在は宮崎と同じく「Engagement Unit」の一員として、主に、SPEEDAのようなツールを初めて使うお客様をはじめとした多くの事業会社のユーザー様を中心にのご支援サポートを担当しています。
──SPEEDA事業からカスタマーサクセスの重要性に気づき、おふたりのような方がジョインされるようになった背景について、教えてください。
宮崎 カスタマーサクセス組織の立ち上げとGainsight導入は2018年にスタートしました。その中でカスタマーサクセスの重要性が高まったタイミングは、大きくふたつあります。ひとつがSPEEDAのお客様の変化、ふたつめがコロナ禍の影響です。
ひとつめのお客様の変化については、元々SPEEDAは金融機関やコンサルティングファームのお客様が多かったんですね。SPEEDAの誕生の経緯も、創業者である梅田(梅田優祐/現:非常勤取締役)が外資系証券会社で働いていた際、大量のビジネス情報を収集する効率が悪いことを課題に感じ、BtoBの経済情報へのアクセスをスムーズにしようと始めたのがきっかけです。
それが2016年ぐらいから事業会社でも情報収集を効率化するニーズが高まり、導入企業が増えてきました。しかし、事業会社では、調査をする業務がメインではない場合も多く、業務にSPEEDAを活用することが定着せず、長期利用に至らないケースもありました。そこで、2018年に解約率の低減を目的にカスタマーサクセス組織が立ち上がったのです。
それに加えてコロナ禍の影響で、さらにカスタマーサクセスの重要性を認識することになりました。というのも、コロナ禍で業績の悪化や外部環境の変化・不透明性を理由に、利用継続に難色を示すお客様が増えたのです。SPEEDAが「Must Have」ではなく「Nice to Have」のサービスだと捉えられてしまっていたんですね。私たちは、SPEEDAは大多数のユーザー様のMust Haveになりえるサービスだと思っているため、その真価が伝わっていない実態が浮き彫りになったことで、ますますカスタマーサクセスの重要性が高まりました。そうした中で、1件1件誠実にユーザー様に向き合いつつ、継続して事業会社のユーザー様の成功を担っていくために、私や中尾のような事業会社出身の人間が入社したという状況です。
日本に本格展開前だったGainsight、導入の決め手
──ユーザベースさんが導入された2018年は、まだGainsightの日本法人設立前でしたよね。そんな中、Gainsightを採用された経緯を教えてください。
中尾 カスタマーサクセス組織を立ち上げたばかりで、まさにどうしたものか悩んでいる際に、当時すでにお世話になっていたマルケトさん(現:アドビ)から紹介いただいたのがきっかけでした。
最終的な決め手としては2点あります。ひとつは、導入実績。もうひとつが手厚いサポートです。当初、国内ツールと比較していたのですが、実際に導入している企業の話を聞くことができるツールはまだあまりなかったのです。そこで、グローバルで実績のあるGainsightを導入する方向になりました。
またサポートという意味では、導入することで私たち自身が「そもそもカスタマーサクセスとは何か」を学ぶ機会になった点が大きいです。顧客として支援を受ける中で、どのようにお客様に寄り添うべきか、どうお客様とともにプロダクトをつくっていけば良いのかを理解できました。
──グローバルでの実績があるからこそ、カスタマーサクセスの考え方や指標まで学ぶことができたのですね。当時は、本国からサポートを受けられたと思うのですが、いかがでしたか。
中尾 当時のメンバーがアメリカのGainsight本社で研修を受け、細かい数値の設計や、ヘルススコアの設計ルール、ロジックの組み立て方を吸収しました。そこでかなり理解が深まったと聞いています。
利用状況を10秒で可視化、解約率を改善
──Gainsight導入前にあった課題をGainsight導入によってどう解消されたのか教えてください。
中尾 課題は大きくふたつありました。ひとつは、お客様の利用状況がよくわかっていなかったこと。どれぐらい使ってもらっているのか、当時もデータを取得しようと思えばできたのですが、とても手間がかかる仕様だったため、結果として可視化できていませんでした。
ふたつめは、それに伴って「このお客様に対して手厚いフォローをすべきなのか、ライトなフォローでいいのか」ということも当然わからず、属人的かつばらつきのある対応になってしまっていたことでした。
Gainsightを導入したことで、お客様の企業全体としての利用状況を容易に可視化できるようになりました。以前はデータベースにアクセスして数値を加工してグラフ化して……といった作業に10~15分はかかっていましたが、Gainsightでデータ取得や加工のルールを決めてパターンをセットしておけば、5~10秒でダッシュボードとして表示できます。ひとりが複数社を担当しているため、その分かなりの工数が削減され、利用状況がクリアになりました。
ふたつめの課題であった対応のばらつきに関しても、工数が削減されたおかげで、新しい取り組みに時間を割けるようになり、解消されていきました。1人ひとりがユースケースづくりなど、各お客様に対するベストプラクティスを考える余裕ができたんです。
──コロナ禍で浮き彫りになった解約率について、変化はありましたか?
中尾 Gainsightによってお客様の状態をヘルススコアによって数値で可視化できるようになったため、CTA(コールトゥーアクション)の設計をしました。GainsightのCTAとは、あらかじめ設定した条件にしたがって、とるべきアクションを各担当者に明示するものです。SPEEDAでは、CTAをSlackに連携し、「お客様が一定の利用状況になったら、担当者にSlackでメンションして対応を促す」ことが自動でできるようになりました。
コロナの危機で1.3%まで膨れ上がっていた解約率は、Gainsightの活用を含めたアクションにより、2022年6月時点で0.8%にまで下がってきています。当時1,500社を超えるユーザーの皆様と1件1件いかに向き合っていくか、が重要であり、Gainsightを活用した定量定性の成果がかなり効果的であったと感じています。0.8%という数字についても、まだまだ改善できる数字だとは思っていますし、実際にアプローチも続けている最中ですが、当時から比べるとかなり改善が進んでいます。
※取り組みの全体像は末尾の関連リンクをご参照ください。
最大の魅力はカスタマイズ性
──Gainsightを4年間活用し続けてきて、感じている魅力をあらためてうかがえますか。
中尾 先ほど可視化やヘルススコア、CTAの話をしましたが、最大の魅力は「カスタマイズ性」です。私たちなりに「こうしたほうが良いな」と思ったとおりに設計でき、それをSlackに連携してメンバーに通知するところまで一貫してできるのが魅力的です。
他社ツールを検証した際には、ある程度型が決まっていて、「もう少し自由に設計したいのに」と思うこともしばしばでした。そういう意味で、まっさらなところからくみ上げられるのがGainsightのいちばんの魅力だと感じています。とくに可視化においては、その自由度とデータ連携のしやすさから、Gainsightを見れば一定の状況が把握できる状態をつくることができています。会社によって見たい指標が違うのは自明かつ、指標は変わりゆくものですから、かんたんにアップデートできるのは非常にありがたいです。
宮崎 日々プロダクトもお客様の状況も変化するため、柔軟に対応していかなければなりません。その中でGainsightの自由度の高さには助かっています。社内では「アジャイル」という言葉をよく使うのですが、カスタマーサクセスの設計もアジャイルに変えていけるところは最大の魅力ですね。
──ビジネスサイドの組織や取り組みをアジャイル化するときに非常に相性が良さそうですね。今後の課題や、Gainsightにさらに期待する機能はありますか。
中尾 Gainsightのカスタマイズなどの活用の中心を、今は私が担っている状態です。ひとりに依存してしまうと、活用の幅が広がらなかったり、進化のスピードが遅くなったりと組織としてあまり健全ではないですから、私以外のメンバーもより活用できるように全体最適の取り組みを検討していきたいと思っています。
あとは、導入タイミングや業務によってSPEEDA活用に季節性があるお客様もいらっしゃるため、1~2年に1回「これってどう使うんでしたっけ」と質問をもらうことも多いです。一度導入時にオンボーディングとしてご支援して終わりではなく、再オンボーディングを繰り返していくイメージで、SPEEDAならではのカスタマーサクセスの体制ややり方を確立していく必要があると考えています。
宮崎 Gainsightの日本法人も設立されたということで、これまで以上にコミュニケーションをとることで、今のSPEEDAに必要な活用方法や、チームでの活用をサポートいただけたらと思っています。
カスタマーサクセスは「機能を説明する」役割ではない
──今後はカスタマーサクセス組織としてどんなチャレンジを目指すのでしょう。
宮崎 SPEEDAの活用目的というと、情報収集の効率化がメインでしたが、今後はその先のユーザー様の意思決定までサポートできるように伴走していきたいと思っています。最近のSPEEDAの新機能として、専門分野の第一人者の知見を得られるサービス「SPEEDA EXPERT RESEARCH」も始めています。この機能の活用で、「情報収集だけでなくその後の社内議論にも役立ち、最終的に良い意思決定ができました」とお客様からフィードバックをいただきました。このような事例を増やしていきたいですね。カスタマーサクセスチームとしても、より一層お客様サイドに入り込んだ意思決定の伴走をできるチームにしていきたいです。
──Gainsightを活用し、お客様の利用状況を把握する工数が削減できたことで、そういった新たな取り組みも始められるのかなと思いました。
宮崎 おっしゃるとおりです。機能が増えたことで、お客様状況の可視化の仕方も変えていく必要がありますから、またカスタマイズしながら取り組んでいきます。
──最後に、今カスタマーサクセスの領域で活躍しているおふたりから、読者にメッセージをいただけますか。
宮崎 カスタマーサクセスは会社によって求められる役割が異なる職種ですが、根本にあるのは名前のとおり「お客様の成功を考える」ことに尽きると思います。当社の採用でも、常にお客様のことを考える気持ちがある方を重要視しています。
ユーザベースの7つのバリューの中に「ユーザーの理想から始める」というものがあって、カスタマーサクセス以外のメンバーもその意識を持っているんですね。とはいえ、ユーザーと相対している時間は圧倒的にカスタマーサクセスが長い。顧客と社内のメンバーをつないでいく、ハブのような役割を担っていると思います。
そのうえで、お客様と社内の落としどころを作るのではなく「Win-Win」の関係を目指したい。お客様とSPEEDAがともに成長していく、事業開発のような意識ですね。ほかの業界のカスタマーサクセス組織の皆さんとも、同じ意識で切磋琢磨していけると良いなと思っています。
中尾 難しいのが、カスタマーサクセスは「こんな機能がありますよ」といったサービスの説明担当になってしまうこともあると思うんです。そうではなく、お客様が実現したいことにともに向かうサポートがもっとも重要だと考えています。その意味では、プロダクトや機能に限らないアプローチやコミュニケーションを心がけると、もっとお客様のサクセスにつながっていくのではと思います。
──ありがとうございました!
動画で見る「ユーザベース導入事例」
本インタビューを動画でご覧いただけます。ポイントは次のとおり。
- Gainsight導入の背景
- Gainsightを選んでいただいた理由
- お客様の状態を可視化
- 可視化が解約率を下げる
- Gainsightを利用した今後の施策
世界トップシェアのカスタマーサクセスプラットフォーム「Gainsight」についてのお問い合わせはこちら
Gainsightは、カスタマーサクセス、製品体験、コミュニティエンゲージメントに焦点を当てた業界随一のカスタマー・サクセス・プラットフォームを提供し、あらゆる活動の中心にお客様を据えたヒューマン・ファーストの活動を可能にします。ご関心いただいた方は、Gainsight公式サイトよりお問い合わせください。
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