失われた日本経済の30年を取り戻すために
現在、日本経済が置かれている状況は非常に苦しいものとなっています。バブル崩壊以降、日本経済の低迷は「失われた30年」と呼ばれ、諸先進国と比べるとGDPの成長も落ち込む一方です。日経新聞の記事によると、2021年12月の時点で時価総額世界上位1,000社のうち、日本企業はわずか5%にも満たない数字でした。国内のビジネスに関わるプレイヤーの皆さんも、日本経済の落ち込みを年々感じていることでしょう。
私はバブル崩壊後に社会人になり、外資系IT業界で営業を中心に長年キャリアを築いてきました。2000年代初頭のITバブルもあり、成長著しい業界の中で揉まれてきましたが、それでも「あのころは良かった」と90年代前後のバブル期を懐古する話をよく先輩から聞かされたものです。「失われた」あとの世代である私にとっては、別世界の話のように聞こえました。
現在は「強い日本経済」が復活することに、何らかのかたちで貢献していきたいと考えています。本連載では私のキャリアも活かしつつ、Xactlyが強くコミットできる分野でもある「営業」を中心に、企業が持続的に収益を最大化するための考え方や提言などをお伝えしようと思います。
解決すべきは賃金格差 給与への不満が人材流失にも
現状の日本経済において、直近で解決するべき問題は賃金格差であると私は考えています。成長著しい諸外国の企業に比べ、日本国内企業の賃金はあまりにも少ないと言えるでしょう。実際、2020年3月に実施されたマーサージャパンの調査を見ると、その差がはっきりとわかります。調査によると、外資系企業と日系企業の年間総直接報酬を比較した場合、課長クラスで約300万円、部長クラスで約600万円も外資系企業が上回っていたのです。
実際、給与が少ないことを理由に「国内企業から外資企業に転職したい」という方に面接時によく出会ってきました。中でも目立つのが、「所属企業に仕事で貢献している自負があるのに、いつまで経っても給与が増えない」「同僚の仕事内容を見ると明らかに自分よりも会社への貢献が少ないのに、多くの給与が支払われており、不公平感がある」という声です。
つまり、現状の国内企業では、正当な報酬が支払われないために人材の流出が起こってしまっているのではないでしょうか。そのような転職志望者は報酬へのこだわりがあるだけでではありません。スキルが高く、自己成長を求め、「会社を良い方向に変えていきたい」という思いを持っているなど、仕事に対する志が高い方も多いです。外資の営業人材と比べても何の遜色もない、むしろ素晴らしい人材であることが往々にしてあります。本来ならば国内企業でエースとして働き、日本経済に変革を起こすリーダーになれるはずの優秀な人材が日本企業からいなくなってしまう。このような悪循環が発生しているのは不健全な状況であると言えるでしょう。
では、彼らに正当な報酬を与えるために、日本企業には何が必要なのでしょうか。