全営業担当者に「フォーキャスティング」が求められるワケ
数多くの営業組織を見てきた中で、「メンバー全員にフォーキャスト力のある営業組織」の成長力の高さを最近あらためて実感しています。あなたの所属する営業チームにも、すでにフォーキャスティングを軸にした営業活動に勤しむ人材がいることでしょう。しかし、それは一部の人に限られていないでしょうか。特定の人の属人的なスキルやパフォーマンスに依存しているチームは、その人が退職すると組織が不安定になるリスクがありますし、大きな成長を目指すのも難しいはずです。
ビジネスの継続的な成長に重要なのは、何よりも再現性です。1人ひとりがフォーキャスティングができる組織は、高い営業成果を出す再現性が「プロセス」に織り込まれているからこそ強いのです。誰かに言われる前に目標に対するギャップに気がつき、目標達成に向けてアクションをし、自信を持ってたしかな受注予測ができる営業パーソンばかりがいる営業チームとそうでないチーム、どちらが強い組織でしょうか。答えは明白ですね。前者のような営業パーソンが組織の中に増えれば増えるほど企業全体として生産性を上げ、収益を持続的に上げることが可能になるのです。
また昨今、営業パーソンの雇用条件も少しずつ変化していることを実感します。日本企業においても雇用形態がメンバーシップ型からジョブ型にシフトしつつあります。ジョブ型とは、“業務に対して人を配置する”方策です。以前から日本企業にある“人に対して業務を配置する”メンバーシップ型とは真逆の雇用形態です。ジョブ型では、業務遂行に対して求められる能力が明記されます。つまり、求められる能力を満たす人が雇用されるということです。
最近の営業中途採用の募集要項を見ていると、商材に対する知識や経験は元より、自分のテリトリーにおける営業戦略の立案、実行、レポーティングに至るまでの職務内容が詳細に説明されていることに気がつきます。営業業務の一環として、定量的な売上目標に即した進捗の報告が求められるわけで、これまで以上の精度でのフォーキャスト管理が個人レベルでも求められるでしょう。ジョブ型雇用のシフトにより人材流動性が高まりますが、フォーキャスティングのスキルは、営業という専門領域において転職する際の必須スキルとして今後もますます求められてくると考えています。
「専門職としての営業」は、多くの外資系企業ではすでに確立されています。一方、現在でも日本企業の営業チームでは、営業チームとして目標を持ち、チームリーダーだけにフォーキャスティングのミッションを持たせるケースも多いと思います。ただし前述のとおり、ジョブ型の流れを受けて中長期的にはこの方針も変化していくでしょう。
このような理由から、私は日本の営業担当者全員にフォーキャスティングが根づいていく必要がある、それがこれからの日本経済の発展に欠かせないと考えています。