見積書を提出した途端アポイントがとれなくなる!?
見積書を出した途端、アポイントがとれなくなる。これは営業パーソンが必ず経験すること。今までの苦労が水の泡になったとわかった瞬間、「あぁ、タイミングを間違えたか……」と頭を抱えるものだ。
ハウスメーカーの営業スタッフだった私は何度も苦汁を飲まされた。多くのお客様とって“住宅の契約”は人生の一大イベント。長い時間をかけ、さまざまな会社を検討する。営業スタッフサイドも、かなりの時間と労力をつぎ込むことになる。だんだんと金額を提示するタイミングが難しくなっていくのだ。
いちばん好ましいのは、見積書を出したその場で「これで結構です。菊原さんに決めます」と言われること。しかし、そんなことはまずない。大抵は「ではこれで一度検討して、あとで連絡します」という感じになる。
しかしその“あとで”はやってこない。そのまま連絡がつかなくなることがほとんど。運よく連絡がついたとしても「ほかで決めましたから」と冷たく言い放たれるだけだった。
私の実体験を紹介する。20代後半の若い夫婦と商談していたときのこと。3回、4回とじっくり打ち合わせを重ねた。 お客様の要望も十分に聞きとり、最高の提案ができた。しかも金額的にもかなり工夫したため、コストダウンにも成功した。満を持して見積書を提出。その場では決まらなかったものの好感触、「これは決まるのでは」と期待した。
しかし、その後メールをしても返信がこないし、電話にも出てくれなかった。そして1週間後に「金額も安かったA社のほうに決めました」というメールが届いた。
工夫してコストダウンした見積書を提出しても決まらない。値引きしたところで、他社はさらに値引きしてくる。 当時の私は「金額が安いほうを選ぶのは仕方がない」と思い込んでいた。
また、40代のお客様と商談していたときのこと。ライバルが多かったものの何とか粘り、最後の2択まで残って渾身の見積書を提出した。そして3日後。奥さんから直接「○○工務店のほうが金額は高かったのですが、主人が気に入ったものですから」といったお断りの電話をいただいた。悔しかったが「今までありがとうございました」と唇をかみしめながら電話を切った。
他社より金額が高くても安くても敗戦する。どうにもならない状態だった。ただ、この2例はまだ良いほうだ。愛想よく商談に対応してくれていたお客様が、見積書を出した途端に音信不通になるということも少なくなかった。そのたびに人間不信に陥ったもの。とにかく見積書を提出するたびに悔しい思いをさせられた。
そんなある日、トップ営業スタッフにその悩みを打ち明けたところ、「見積書は最後に出さなゃ決まらないよ」と言われたことがあった。