退職者ひとりあたりの損失額は662万円 「メンタルヘルス」に注目が集まる理由
20代半ばから30代の「ミレニアル世代」のうち「自分たちは親世代よりも幸せ」と回答した人はわずか26%――デロイトトーマツが実施した「2020年 デロイト ミレニアル年次調査」でこのような結果が出ました。調査対象の44%は常に不安などを抱え、「経済的な安定」以上に「メンタルヘルス」を優先する傾向が強いという結果が示されていました。
同様に、いわゆる「Z世代」に該当する日本の若者も、メンタルヘルスへの関心は高い傾向にあります。労働人口に占める若い世代の比率が高まる今、企業が優秀な人材を確保するためには「社員の心身のサポート」へ目を向ける必要性があると言えるでしょう。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が2012年に調査結果を発表した「職場におけるメンタルヘルス対策の実態調査」 によると、メンタルヘルスに問題を抱えている正社員がいる事業所は6割弱、そのうちの3割強の事業所は、「3年前と比較して人数が増加している」そうです。
メンタル不調者の有無(正社員)を企業規模別で見ると、1,000人未満の組織では、不調者が「いる」事業所は、「いない」事業所をわずかに上回る程度です。一方、1,000人以上が在籍する組織では、不調者の「いる」割合が72.6%であるのに対して、「いない」事業所は26.6%と、前者が大きく上回っていることがわかります。
また、雇用形態にかかわらず、メンタルヘルス上の理由により過去1年間で「連続1ヵ月以上休職、もしくは退職した人がいた」事業所は25.8%、正社員に限定すると23.5%という結果も示されていました。年々増加傾向にあったメンタルヘルス不調による休職や離職は、コロナ禍の影響でいっそう増えていることが予想されています。
退職者が出た際の損失額は、ひとりあたり約662万円と言われており、休職や離職は企業にとっては大きな痛手です。ゆえに、休職・離職に直結する従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐべく、メンタルヘルスケアに注目が集まっているのです。
退職者ひとりあたりの損失額
退職者が年収300万円、試用期間6ヵ月の場合
500万円+125万円+25万円+12万円=662万円
計算内訳
◆労働分配率
年収300万円(人件費)÷50%(付加価値)=600万円
◆付加価値額を確保するために必要な売上額
600万円(労働分配率)÷30%(売上総歴率)=2,000万円
◆試用期間のコスト
2,000万円×1/2年(一人前に成長するまで)=500万円
◆教育のコスト
20日(ひと月の勤務日数)×6ヵ月×1時間=120時間=15日間相当
2,000万円×1/12(1ヵ月分)×3/4(20日勤務のうち15日)=125万円
◆退職金
25万円
◆その他のコスト
5万円(面接)+2万円(入退社手続き)+5万円(後任採用の広告費)=12万円