顧客の変化に気づき、3年前からリモートセールスに挑戦
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會田 2008~2009年の金融危機と2020年現在の違いは、2008年は経営の3要素である「ヒト・モノ・カネ」のうち「カネ」がストップしましたが、いまは「ヒト」と「モノ」がストップしていることにあると私は考えています。これまでにない事態に困っている営業組織も多いと思いますが、エン・ジャパンの営業組織が取り組んできたことはありますか。
鈴木 コロナ禍では営業活動の仕方に大きな制限がかかりましたが、我々は変革のチャンスだと捉えています。実はコロナ以前から、営業のあり方が変化していくであろうと考えていました。営業が持つデバイスも随分変わりましたし、お客様に評価されるポイントも変わってきています。以前は足繁く通うことが評価されていましたが、いまはオンラインツールで必要な情報を必要なタイミングで提供してくれる営業のほうが信頼されます。また、入社間もない営業のたどたどしい説明を受けるよりも動画で見たほうがわかりやすいということにも顧客は気がついています。
一方、顧客企業を理解して困っていることや困るであろうことを読み解き、解決策や他社事例を適切に示すことは人がやったほうが良いことだと考えました。そこで、人でなくても良いこと、人ではないといけないこと。非対面でも良いこと、面と向かったほうが良いことを徹底的に切り分けることを意図的に行ってきました。
会社にいながらオンラインで商談をすることも3年前から率先してやっていましたが、最初は営業側が、「お客様に断られてしまって……」と顧客のせいにして抵抗していました(笑)。それでも取り組むうちに営業社員の意識も少しずつ変化していきました。移動時間が少なくなり、訪問できる件数が増えたことはもちろん、上司の同行が効率的になりました。席に居ながらにして、複数の営業担当の商談に同席できるわけですから。
今回、世の中が劇的に変化したことで我々自身はよりオンライン商談を推進しやすくなりました。とはいえ、今後直接接点をゼロにするわけではありません。むしろどんなときは直接会うべきか、営業担当者の役割を複数に切り分ることについても考え始めています。以前は、営業ひとりが7つ役割を担っていました。それがソリューションを提供することにつながるし、やっていておもしろかったからです。いまはヒトがやるべきことに最大限時間を割けるようリモートセールスの導入も進め、業務の見直しにも取り組んでいます。
會田 1年半前にお会いしたときから、鈴木さんはリモートセールスの重要性を語っていらっしゃいましたよね。エン・ジャパンさんはデジタルトランスフォーメーションは進んでいた印象ですが、今回それがグッと早まった感じですよね。
鈴木 自分たちの効率化ではなく、お客様に提供する価値を高めないと意味がありません。訪問することそのものではなく、わかりやすく説明すること、課題に応じた提案をすること、チームで顧客と向き合うことが顧客にとっての価値になる時代への変化が起こっており、それを実現するひとつの手段としてリモートセールスに取り組み始めました。
會田 「仕組み」を固定するのではなく、時代や顧客に合わせて変化させてきたんですね。
鈴木 属人化しないように仕組み化することはいつの時代も大事ですが、同時に気をつけなければならないのは、「つまらない仕事」にしないこと。つまらない仕事をやりがい持ってできる人はいません。仕組み化した仕事に価値ややりがいを付加できなければ、活躍する人材の定着はうまくいきません。高いレベルの標準化の上に、属人化を適度に残すことで本人のやりがいと成長につなげるというのは、かなりクリエイティブな仕事だと思います。