仕組み化を進めながら「猛者」採用を目指す営業組織のアンバランス
會田 新型コロナウイルス感染症の拡大以降、世の中に閉塞感があります。以前、鈴木さんに営業組織に関するお話をしてもらったとき、とても前向きな気持ちになりました。ぜひ今日は営業組織の皆さんにも、鈴木さんのメッセージを届けていきたいです。まずは、ご経歴から伺えますか。
鈴木 1995年、エン・ジャパンの前身となる日本ブレーンセンターに新卒入社しました。人事支援全般、採用から教育戦略立案までをトータルに行う、100名くらいの会社でした。私は入社以来ずっと営業畑です。中途・新卒採用支援の営業をそれぞれ経験したのち、営業組織の教育や制度づくりを支援する新規事業に参画しました。数多くの営業組織を支援した当時の経験はエン・ジャパンの営業組織をつくることにも活きています。
2000年、インターネットの求人サービスの事業が分社化してできたのがエン・ジャパンです。立ち上げメンバーに選出され、29歳で取締役兼営業部長に。取締役と言っても、営業は私を含め4名、会社も14名規模からスタートしました。世の中では誰もエン・ジャパンを知らないし、インターネットの求人サイトの認知も低いなか、ゼロから立ち上げていきました。
會田 エン・ジャパンの立ち上げ前に携わっていた新規事業ではどんなことをされていたのですか。
鈴木 当時、ほとんどの企業で営業組織の仕組み化やルール化が進んでいませんでした。個別の能力もばらばらで、成果を出せる人をせっかく採用できても、なぜその人がうまくいくかがわからない。営業部長のような意思決定者も「気合いと根性がある人」「笑顔で人当りの良い人」を採用基準にしてしまいがちでしたが、その会社で成果を出せるのは異なるタイプの人材だったという場合も多くあったのです。
各営業組織の課題がどこにあるかというところから一緒に探ってゆき、採用から支援すべきか、教育から支援すべきか見極めながら提案を進めていました。適性テストなども活用しながら、その企業で成果を出せる営業の要素を抽出し採用基準を構築します。採用と育成が仕組み化できれば、育成できた人たちが活躍し続けるための「制度」が必要ですから、そこも支援しました。
會田 採用や育成も営業組織の永遠の悩みですよね。私もインサイドセールス立ち上げの相談をよく受けますが、なかでも採用・教育の相談が多いです。採用のプロフェッショナルの鈴木さんが考える採用時に工夫すべきことがあれば教えてください。
鈴木 営業組織はつい「猛者」を採ろうとしがちです。徹底的に負けず嫌いで自ら諦めずにやり続ける自律的な人材――理想ですね。ただ、そんな人はなかなか採用できません。事業や組織を拡大したいのであれば、一定レベル以上の人がある程度成果を出せるような商品やサービス、そして仕組みを用意することが重要です。
この組織設計と採用基準は密接ですが、意外と両者がずれている企業も多いです。突拍子もない採用ターゲットを設定すると組織は大きくなりません。普通の人が普通以上の成果を出せるようにすることは、自社組織でもかなり意識しています。