営業体制に見えた課題 顧客情報の収集基盤にSales Techを導入
組織体制面でも課題に直面していた。営業の売上目標数値は年々増えているのに、営業の人員数と案件数の両方が横ばいという状況にあったのだ。これでは目標を達成できないと気がついた同社は、獲得率を高めることと案件数を増やすことの両方に注力することにした。現状把握を素早く可能にしたのは、SFAツールで営業進捗の管理と商談後のレポートを徹底して行っており、ある程度のデータが揃っていたことが大きい。
課題と認識していたことは大きくふたつ。ひとつはすべての見込み客をターゲットに営業活動をしていなかったことだ。具体的には、福利厚生サービスを導入している既存顧客に対するクロスセルやアップセルのアプローチが十分ではなかった。もうひとつは、営業活動が担当者の「感覚」に依存していたものになっていたことだ。営業人数は100人弱にも関わらず、新規のターゲット顧客は全国にいる。1人あたりの担当社数が100や200よりも多く、アプローチをどの顧客にいつ行うかはそれぞれの営業の勘に頼っていた。もっとSustainable(持続可能)な営業活動が必要と考え、解決に向けて動き出した。
最初に行ったのは、営業活動をデザイン活動(対面営業)とマーケティング活動(非対面営業)のふたつに分けることであった。ここでのデザイン活動とは、企業・組織のありたい姿を実現するため、顧客に自社のソリューション以外のサービスを含むさまざまなサービスや情報などを組み合わせて提案することを意味し、営業活動の質の向上を図るもの。もうひとつのマーケティング活動は、デザイン活動の価値を最大化するための新規顧客の発掘と育成を意味する。
初めに強化したのは、デザイン活動だ。デザイン活動は、提案依頼に至るまでに必要な顧客ニーズを理解する営みでもある。それぞれの顧客について徹底的に知ること、顧客のありたい姿を共有すること、そして顧客ごとにカスタマイズした提案を行うことの3つを「デザイン活動の型」として構築。トレーニングプログラムを提供し、管理職と担当者に実践してもらったという。進めるなかで、マーケティング活動の強化も早々に行うべきだと感じた。古池氏は「最初から現在のプロセスを描いて、実践してきたわけではなく、途中途中で足りないものに気がついて対処した結果、現在の姿に行き着いた」と振り返る。
ふたつの活動の連携が定着しつつあるなかで、これまでは営業が受注に至るまでのプロセス(アプローチ顧客の選定~提案・クロージング)をすべて行っていたことに気がついた。デザイン活動は対面、マーケティング活動は非対面と分担を明確にし、営業がデザイン活動に注力してもらうようマーケティング活動の強化に着手した。顧客と直接向き合うことはないが、「マーケティング活動(非対面営業)においてもお客様と寄り添いたい」と考えた古池氏。効果的なマーケティングアプローチの仮説を立てるために、顧客の特徴や傾向を可視化できるツール導入を検討していたが、世の中の一般的な情報だけでなく「JTBベネフィットだからこそ知っている顧客情報」と合わせて顧客セグメントを可視化したいと考えていた。
そこで導入したのがAnewsとAsalesだ。Asalesは過去3~5年分の営業が作成してきたテキストのセールスレポートから、各顧客が抱えるニーズとウォンツを抽出するために、Anewsはデータを蓄積する営業が、担当顧客に関する情報の感度を高めるために活用を始めた。