営業から経営、バックオフィスまでビジネスの流れをひととおり経験
――まずは藤田さんのキャリアから伺えますか?
調理専門学校を卒業し、ホテルに就職したのですが、そのホテルが閉鎖すると同時にリストラされました。24歳で結婚を機にサラリーマンの道を志し、光通信に入社します。あらためて営業のいろはを学んだのち、地域の資本家と一緒につくった合弁会社で事業計画や損益の計算、人材の採用育成など経営に携わるような仕事をひととおり経験しました。
前々職のパイプドビッツでは営業組織のマネジメントを経て取締役になったのですが、マーケティングの経験者がいなかったためCMOの肩書きも引き受け、パートナーや支店に向けたSaaSのマーケティングを経験しました。その後、クラウド人材管理システムを提供するカオナビに転職し、コーポレート側として上場に携わりました。
――異業種から営業、経営、マーケティングと多岐にわたる職種を経験されてきた藤田さんが、ROBOT PAYMENTへと移ったきっかけは何だったのでしょうか。
カオナビ時代、ビジネスの急成長を受けて2~3名の担当者が1,000社以上の取引企業を相手に請求書の発行や入金の消込をすべて手動で行っていました。「何とかしたい」との思いで、パイプドビッツ時代に縁のあったROBOT PAYMENTの営業担当者に連絡したところ、請求管理ロボを紹介されたのです。
属人化している業務を改善できるとても良いサービスだと感じたのですが、それだけでなく営業や経理の働き方を変えるようなポテンシャルを持つ事業だと感じたことが原体験となっています。弊社には決済事業と「請求管理ロボ」を扱うクラウド事業があるのですが、私は後者の事業責任者としてマーケティング、営業、開発、カスタマーサポートまで一貫して見ています。
20年培ってきた決済知識が強み!
請求から入金、消込までカバーする「請求管理ロボ」
――クライアントの立場でポテンシャルの高いサービスだと感じられたのですね。そもそも、請求管理ロボが開発された背景についても伺えますか?
もともと決済事業を先に展開していたのですが、事業拡大を見据えてBtoB領域にアプローチできるサービスをつくろうとした結果、請求書発行を自動化できる請求管理ロボが誕生しています。請求管理ロボはSaaSモデルであるため個社カスタマイズには対応していなかったのですが、請求管理システムはそれだけで独立しているものではなく、業務フローに組み込まれて初めてベネフィットを出せるものですから、その前後にあるシステムとの連携を強化していくと自然な成り行きで、Salesforce版のアプリを立ち上げることになりました。
たとえば、Salesforceで取引先管理や商談管理をし、受注後はその顧客情報を活用しながら請求管理の一連の流れを完全に自動化することができます。請求と入金、両方のデータを持つことで、自動消込も行い、最終的には会計ソフトに連携することも可能です。すべてをSalesforce上で行っているので、レポートやダッシュボードで情報の共有・見える化が可能となり、部署間のシームレスな連携を実現し、矛盾ないデータによってミスがなくなり、リスクは軽減されます。
――需要に応じて機能を強化してこられたと思いますが、ほかの請求システムにない請求管理ロボの強みはどこにあると思われますか?
技術優位性はあってないようなものだと私は考えています。私たちがどれだけ先行して機能を出しても、後進はすぐに現れるからです。私たちの強みは20年もの間に培ってきた決済の知識と、金融機関との強固な関係性です。また、請求業務を自動化できるツールはいくつか存在しますが、請求・集金・消込・催促までカバーしているサービスはそこまで多くありません。請求管理ロボは営業、営業事務、経理といった組織をまたぐユニークなサービスだと思います。
――御社に問い合わせる企業はどういう課題を抱えていて、請求管理ロボのどういったところに惹かれるのでしょう。
かつての私同様、経理業務の手動管理を課題と捉えられているお客様は多いですね。経理担当者は、ちょっとしたミスが命とりになるような環境のなかで緻密な業務を行っています。請求業務のシステム化は属人化のリスクを軽減できるという企業側のメリットもありますが、彼らをストレスから解放できるので離職防止にもつながります。
また、営業と経理のコミュニケーションで悩まれているお客様もいらっしゃいます。たとえば、営業から経理に顧客からの入金があったかどうか確認したり、経理からの回答を待って督促を行ったりすると思いますが、やりとりや確認に時間をとられてしまうのは日々売上を追いかける営業担当者にとって機会損失と言えますよね。請求管理ロボは入金確認や督促の領域もカバーしているので、コミュニケーションが円滑になったという声もいただいています。
経営者の立場からすると、事業の急拡大にも対応できるというのも大きなポイントだと思います。企業や事業の規模が小さいうちは、バックオフィス業務をなるべく少ないリソースで回そうとしますよね。
ただ、急激にビジネスが成長した場合、担当者を増やそうとしてもなかなかすぐには採用できないことが多いので、現場はどんどん疲弊していきます。初期段階で請求管理ロボを導入していれば、ビジネスの規模が拡大したり、担当者の人数が減ったりしても受けるダメージを最小化できるので、リスクヘッジが可能になります。実際に導入時から急成長し、取引件数が15倍に増えた現在も、初期と変わらないリソースで請求業務が安定稼働しているお客様もいます。
セールスと請求・入金のデータをつなげば営業のアクションは変わる
――SalesZine読者にも多い、Salesforceユーザーにとってのメリットも伺いたいです。
「ひとつのプラットフォームにデータを貯める」というのがSalesforceの哲学ですよね。データをきれいにして利用可能なかたちにすることで売上は増え、コストは下がり、経営にインパクトを与えるという思想に私たちも準拠しているので、その仮説を立てる際の材料となる顧客データが増えるという点がメリットではないでしょうか。
たとえば、見込み顧客の情報がシステムに入った瞬間にその企業の取引リスクがわかれば留意しておくこともできます。商談が進み、与信調査の段階で初めてリスクが判明すると、そこまでの営業工数が無駄になってしまいますよね。逆に、一見リスクが高く感じられても、実はかなりポテンシャルが高い企業だというデータがSalesforce上で見えれば、安心してアプローチすることも可能となります。
また、定期従量課金モデルの場合、営業担当者が成約後に顧客の動きをウォッチする頻度は成約前と比べて極端に下がります。
請求管理ロボは回収状況をデータとして保持できるため、「この会社は未回収が多いからアップセルしないほうが良い」「ここは課金額が増えてきているからアップセルできそう」というふうに提案の計画も立てやすくなります。
――Salesforce上の顧客データと実際の入金データを接続することで、与信への考え方や営業のアクションが変わってくるように思います。今年からSalesforce版アプリのさらなる普及に向けて専任のチームも設けられたそうですが、今後Salesforceとともにどのような価値を提供されていきたいですか?
Salesforce社と情報共有を密に行うことは重要だと思います。なぜなら、Salesforceユーザーは、AppExchangeに存在する膨大な数のアプリケーションから自社に必要なツールを選びます。いかにユーザーに「請求管理ロボを入れておけば、営業や経理が抱えがちな課題がすべてクリアできる」ということを認識していただけるかが勝負です。その認知を広げるためには、サポートやノウハウを通じて我々が提供できる価値をユーザーはもちろん、ユーザーと向き合うSalesforceの担当営業の方々にも知っていただきたいからです。
サービスとしては、逆説的に聞こえるかもしれませんが、ユーザーが請求管理ロボの存在を忘れてしまうくらい、触らなくても業務が進むくらいの手触りで活用してもらうことが理想です。作業の負荷を減らすことが我々の最大のミッションであり、そこに時間をとられている担当者の方たちがツールを使いこなすことで次のキャリアステップに進まれたり、これまで以上に仕事を楽しめたりするきっかけになれば良いなと思います。
さらには、これまでは営業と経理が組織を分かつことでガバナンスを効かせていましたが、システムでガバナンスを効かせつつ業務を自動化することで、請求業務を営業組織で巻きとり、より顧客データをひとつにためていくチャレンジも不可能ではないとも考えています。
――高負荷の作業に充てていた時間が浮くことで営業担当者が分析業務に注力できたり、経理担当者が経理以外のキャリアを選択できたり、テクノロジーの力が業務効率化だけでなく人事にも影響を及ぼすかもしれませんね。ありがとうございました!