ALL DIFFERENTおよび「人と組織の未来創り」に関する調査・研究を行うラーニングイノベーション総合研究所は、2025年5月20日~7月17日の期間で、管理職531名を対象に「管理職意識調査」を行った。

評価者としての最大の課題、「チーム内で極端な評価をつけることをためらってしまう」

まずはじめに、課長クラス以上の管理職(以下、「管理職」と記載)は、部下を評価する際、評価者としてどのような課題を抱えているか質問した。
結果、「チーム内で極端な評価をつけることをためらってしまう」と回答した割合が27.9%と、最大の割合になった。次に「評価時、一人ひとり十分に時間をとることができていない」が27.0%、「評価の期間全体で評価せず、直近の部下の状況に引きずられてしまう」が25.2%となった(図1)。
ステージ別の評価者としての課題、新任管理職は「部下に嫌われたくない」の割合が高く、幹部候補は「極端な評価をつけることへのためらい」が突出

次に、評価者としての課題について、管理職のうち1~3年めの課長クラスを「新任管理職」、4年め以上の課長クラスを「ベテラン管理職」、部長クラスを「幹部候補」と、3つのステージに分類し、ステージ別に違いがあるか調べた。
結果、新任管理職では、「評価の期間全体で評価せず、直近の部下の状況に引きずられてしまう」の割合が28.8%でもっとも高く、「評価時、一人ひとり十分に時間をとることができていない」が25.8%、「チーム内で極端な評価をつけることをためらってしまう」「部下に嫌われたくないために、厳しい評価から逃げている」が同率で23.5%と続いた。「部下に嫌われたくないために、厳しい評価から逃げている」の回答は、ほかのステージよりも10ポイント以上高く、「会社の評価基準を十分に理解せず、評価している」(12.1%)は、ほかのステージより2倍以上高い回答割合になった。
ベテラン管理職では、「評価時、一人ひとり十分に時間をとることができていない」の割合が27.9%ともっとも高く、「チーム内で極端な評価をつけることをためらってしまう」が26.1%、「評価の期間全体で評価せず、直近の部下の状況に引きずられてしまう」が22.5%と続いた。
幹部候補では、「チーム内で極端な評価をつけることをためらってしまう」の割合が35.7%ともっとも高く、ほかステージと比べて突出した。次に、「評価時、一人ひとり十分に時間をとることができていない」(27.6%)、「評価の期間全体で評価せず、直近の部下の状況に引きずられてしまう」(23.5%)と続いた(図2)。
部下について理解していること、新任管理職は「業務領域」 ステージが上がるにつれて「改善すべき課題や短所」「言葉・行動における特徴」が高まる

管理職が部下について理解していることを複数回答で質問した。新任管理職では「部下の現状の業務領域」の割合が59.8%ともっとも高く、次に、「部下の成果およびその変化」が51.5%、「改善すべき課題や短所」が50.0%と続いた。「部下のキャリア志向(将来なりたい姿)」「求める人材像に近づくために任せるべき業務領域」「部下の情意(思考・感情・態度)における特徴および変化」は、ほかのステージに比べて低い点傾向が見られた。
ベテラン管理職では、「部下の現状の業務領域」が58.6%ともっとも高く、次に「部下の成果およびその変化」「改善すべき課題や短所」が同率で55.0%と続いた。
幹部候補では、「改善すべき課題や短所」「部下の言葉・行動における特徴および変化」がともに56.1%ともっとも高く、次に「部下の現状の業務領域」が52.0%、「部下の成果およびその変化」が51.0%と続いた(図3)。
部下へのフィードバック、半数以上が「躊躇したことがある」と回答

部下がいる管理職に、フィードバックすることを躊躇したことがあるかと質問したところ、半数以上が「はい」と回答する結果となった(図4)。
部下へのフィードバックを躊躇した理由、1位は「部下の反応が不安」 半数以上が回答

部下へのフィードバックを躊躇したことがある管理職へ、その理由を質問した。結果、「部下の反応に対して不安があるから」と回答した割合が54.2%ともっとも高くなった。次に、「適切な伝え方がわからなかったから」(34.7%)、「自分が本当に正しいか自信がなかったから」(28.9%)と続いた(図5)。
部下へのフィードバックを躊躇した理由、ステージ関係なく「部下の反応が不安」が上位に その割合は2023年から2年連続増加し、初の半数超え

さらに、部下へのフィードバックで躊躇した理由をステージ別・経年別に比較した。
まずステージ別に比較すると、新任管理職では「部下の反応に対して不安があるから」が6割超となり、ベテラン管理職よりも14.5ポイント高くなった。次に、「適切な伝え方がわからなかったから」(37.0%)、「自分が本当に正しいか自信がなかったから」(35.6%)が続いた。「部下の反応に対して不安があるから」「自分が本当に正しいか自信がなかったから」は、ほかのステージと比較して最大の割合となった。
ベテラン管理職では「部下の反応に対して不安があるから」(48.5%)がもっとも高く、次に「適切な伝え方がわからなかったから」(33.3%)、「自分が本当に正しいか自信がなかったから」(30.3%)と続いた。
幹部候補では「部下の反応に対して不安があるから」(54.9%)がもっとも高く、次に「適切な伝え方がわからなかったから」(39.2%)、「もう少し様子を見てからでも良いかと思ったから」(27.5%)と続いた。「適切な伝え方がわからなかったから」の回答は、他のステージと比較して最大の割合となった(図6)。

2023年から3年間、各年度の管理職の回答を見たところ、「部下の反応に対して不安があるから」は3年連続でトップ。さらにその回答割合は連続で増加しており、今年は初めて半数を超えた(図7)。
部下の離職防止への取り組み、「業務量の負荷の調整」「感謝やいたわりの言葉がけ」 ステージが上がるにつれて「期待の伝達」も高まる

最後に、部下の離職防止のためにどのようなことに取り組んでいるかを質問した。
結果、新任管理職は「業務量の負荷の調整」が55.3%ともっとも高く、次に「感謝やいたわりの言葉がけ」が50.0%と続いた。
ベテラン管理職では、「感謝やいたわりの言葉がけ」が46.8%ともっとも高く、次に「業務量の負荷の調整」が44.1%と続いた。
幹部候補では、「業務量の負荷の調整」がもっとも高く、53.1%となった。次いで「感謝やいたわりの言葉がけ」が46.9%、「期待や果たしてほしい役割の伝達」が41.8%と続いた。「期待や果たしてほしい役割の伝達」はほかのステージより10ポイント以上高かった(図8)。
【調査概要】
調査対象者:当社が提供する管理職向け研修の受講者
調査時期:2025年5月20日~7月17日
調査方法:ウェブ・マークシート記入式でのアンケート調査
サンプル数:531名
属性:
(1)業種
農業、林業 4人(0.8%)
建設業 46人(8.7%)
製造業 120人(22.6%)
電気・ガス・熱供給・水道業 4人(0.8%)
情報通信業 103人(19.4%)
運輸業、郵便業 9人(1.7%)
卸売業、小売業 58人(10.9%)
金融業、保険業 22人(4.1%)
不動産業、物品賃貸業 18人(3.4%)
学術研究、専門・技術サービス業 17人(3.2%)
生活関連サービス業、娯楽業 8人(1.5%)
教育、学習支援業 1人(0.2%)
医療、福祉 4人(0.8%)
複合サービス事業 3人(0.6%)
サービス業(他に分類されないもの) 78人(14.7%)
その他 36人(6.8%)
(2)企業規模
50人以下 40人(7.5%)
51~100人 72人(13.6%)
101~300人 230人(43.3%)
301~1,000人 125人(23.5%)
1,001~5,000人 61人(11.5%)
5,001人以上 2人(0.4%)
わからない 1人(0.2%)
※各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としている
※構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がある