追い詰められた状態で、良い発想はできない
ダメ営業スタッフ時代のこと。私は非常に効率の悪い仕事の進め方をしていた。
今やれば良いことを「まぁ、あとでゆっくりやれば良い」と先延ばしにする。そして締め切りが近づいてから「あれ、もう時間ないぞ」と焦り出す。そんなときに限って急用が発生。時間をとられさらに追い詰められる──こんな状態では良い発想はできない。最低のクオリティの仕事をしていたものだ。今から考えれば結果が出ないのも当たり前のことだった。
私はハウスメーカーで営業をしていた。住宅営業としてより良い提案をするためには、次のようにお客様の要望を聞き取ることから始まる。
- 予算はいくらか
- 購入時期はいつがベストか
- リビングや部屋の広さ
- キッチン、洗面、お風呂、トイレのグレード
- どんな外観が好みか
こういった要望をヒアリングして提案書を作成する。住宅営業は形のないものを売る職業だ。お客様の要望を形にした提案内容が命である。
ダメな営業スタッフは提案書づくりを先延ばしにする
ダメ営業スタッフ時代の私はお客様からのヒアリング後、すぐに提案書を作成しなかった。その理由は「夜になってからじっくり考えたほうが良い」と思っていたから。実際、日中はいろいろな連絡が入るため、まとまった時間はとれなかった。
しかし夜になれば、疲れが出てしまう。たいていは「まだ時間もあるし、疲れたし、明日やろう」と先延ばしにする。そのうちに数日経過してしまう。
誰でも時間が経てば、記憶が薄くなるもの。記憶をたどりながら「なんか違うような……」と悪戦苦闘しながら作成したものだ。
記憶が曖昧だと、作成するにも時間がかかるうえに内容も悪くなる。さらにはリミットが迫ればミスも多くなるものだ。こんな状態でお客様が満足する提案書をつくることができるはずはなかった。
本来提案書づくりは楽しいもの。しかし、時間が経てば経つほど作成に時間がかかり苦しむことになる。せっかくの楽しい仕事が苦行に変わってしまう。
お客様は「素敵なマイホームに住みたい」と夢を膨らませている。そこへ、平凡な提案書が提出されたらどうだろう? もしくは要望が抜けていたりしていたら……見た瞬間に「あぁ、この程度ね」とガッカリする。ライバル会社がいれば当然競合負けするし、単独指名だとしても「今回は話を進めないでおこう」となるものだ。これではいくら頑張って提案書を作成したところで、一向にチャンスはつかめない。