1年では短すぎる 中長期計画でビジョンの共有を
──はじめに、鈴木さんのキャリアをかんたんに教えてください。
新卒で入社した通信事業会社から現在まで4社を経験し、一貫して営業やパートナー戦略に携わってきました。現在はLayerXのバクラク事業部で、パートナーアライアンスの責任者を務めています。
3社めのクラウドカメラを提供するセーフィーでは、執行役員 営業本部副本部長兼VPoSとして営業活動全体を管轄し、2021年9月にはIPOを行っています。その際、IR資料でセーフィーのパートナー戦略やパートナー経由の売上比率の高さが公開されたことをきっかけに「パートナー戦略に関する勉強会を実施してほしい」と声をかけていただく機会が増え、個人としても支援を行っています。
──これまで20社以上のスタートアップ企業へ勉強会を実施されたそうですね。支援を行うなかで、パートナー戦略に挑むスタートアップにどのような課題を感じていますか。
何と言っても、目先の売上にとらわれてしまうことですね。事業を成長させるため、早く売上をつくりたい気持ちは理解できます。しかしパートナー候補となる大手企業は、中長期の戦略が固まっていて、関係者も経営陣から事業部長、営業担当まで多岐にわたる場合がほとんど。そのような企業と目線を合わせるには少なくとも2~3年は必要ですが、相談をいただいたスタートアップの多くが、長くても1年程度の計画しか立てていませんでした。結果として、せっかくパートナーになってもうまく回らなくなってしまうのです。
加えて、売上を上げるためだけの関係に終始してしまう可能性もありますね。本来、パートナー戦略はお互いのビジョンを共有して、5年先、10年先にどのような姿をともに描けるかを語り合うことが大切です。ところが多くのスタートアップでは、その重要性についてパートナー戦略の責任者の認識が低く、定量的な計画に終始しています。せっかく「この業界をこのように変革したい」という思いで会社を立ち上げ、一緒に実現できるパートナーを見つけたのに、パートナー戦略の責任者が目先の数字ばかり見ているのはもったいないですよね。