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プロジェクトの3つのフェイズ 使えるお金・野心は右肩下がりになっていく
プロジェクトは大きく「仮説・計画期」「探索・実行期」「終結・定着期」の3つのフェイズに分けることができます。
これをCSの文脈に置き換えると、導入当初の計画策定が「仮説・計画期」にあたり、オンボーディングやその後の支援・提案活動が「探索・実行期」にあたります。一般的な1年間の契約期間中に顧客がどこまで目標に近づくかはケースバイケースです。なお、この活動中に行われる定期・不定期の打ち合わせを、本稿では「ふりかえり」と総称します。自社製品を使用して顧客の目標が達成されること、通常の業務フローに組み込まれることが「終結・定着期」にあたります。
図内の右肩下がりの矢印線は、使える時間とお金、試行錯誤できる回数のほか、「こんなことができたら良いな」という野心のサイズは次第に小さくなっていくことを示しています。長い期間成果が出ないと、顧客担当者や関係者の士気は下がっていきます。また、プロジェクトは計画から目標達成まで一直線で到達するということはめったになく、モレ・ヌケ・ズレ・ソゴが起きたり想定外のことに見舞われたりします。このような進み方を「非線形」と言います。試行錯誤を繰り返しても目標に近づけないようでは、解約は避けられません。
CS活動では、自社製品を使用する顧客のプロジェクトを、目標に近づくための軌道にできるだけ早く乗せていく必要があります。
CSがつくる資料では「顧客が目標に近づいているか」がわからない
そこでまずはCS活動での文書の目的を確認しておきましょう。CS活動における文書作成の目的は、大きく次の3つです。
- 現在の状況や状態の変化を記録・評価して、目標に近づいているかを確認する
- うまく進んでいない場合、改善案の検討・提案をし、意思決定しやすくする
- 決定したことを記録し、関係者が「誰が、何を、いつ、どのようにするのか?」の共通認識を揃える
以上の目的を満たすため、皆さんは顧客とのふりかえりで、どのような文書をつくり、顧客と改善案や今後の進め方を話し合っているでしょうか。製品の利用状況(ログイン率等)や製品で計測できるアウトプットの数値をまとめたグラフや表。進捗状況に応じた何らかの提案、ノウハウや事例。顧客に役立ちそうな新機能の紹介資料や議事録なども作成していると思います。これらの文書作成には少なくない時間をかけていると思いますが、これらの労力が報われない、残念な、どうしても避けがたい事実がひとつあります。
それは、多くのCSがつくることのできる文書は、あくまで自社製品のプロダクト利用に関するものであり、顧客のプロジェクトの目標に近づいているかどうかはわからない(わかりづらい)ということです。
製品を使いこなし、その製品から得られるアウトプットが、顧客が望むアウトカムとイコールであれば上述の文書でも目標に近づいているかどうかはわかります。しかし、自社製品が顧客のプロジェクトの一部分、一要素でしかなく、他にも多くの要素がある場合は、自社製品に関する資料をいくらつくっても、目標に近づいているかを把握することはできません。
そうなると、自社製品の利用状況だけがわかってもあまり意味はなく、顧客のプロジェクトの全体像が見えてこなければなりません。それを表現できるのが「プ譜」です。ここからは、計画策定時に顧客と共につくり上げたプ譜をベースに、目標への到達状況の把握や状況の評価方法、および意思決定の記録方法を解説していきます。