営業を追い詰める“クレーム”と“ゼロ月”のダブルパンチ
夏の甲子園でピッチャーがピンチになったとき、帽子のつばに書かれた言葉を見て自分を鼓舞しているシーンを見たことがあるだろう。そこに書かれている言葉は選手によって異なる。
「皆に感謝」
「歴史を刻め」
「チームの絆」
「主役は自分だ」
などなど。こういった言葉を見て不安な気持ちを吹き飛ばす。そして見事バッターを抑える。たったひと言の言葉が窮地から救ってくれるものなのだ。
これは営業活動でも同じことが言える。私はハウスメーカーの営業スタッフとしてキャリアをスタートしたものの、売れない時代が長く続いた。“一歩間違えばリストラ候補”といったギリギリの状態が長く続く。これがどれほど精神衛生上良くないかは営業スタッフの方ならわかってもらえるはず。当時は常に胃の調子が悪く、ランチの後は必ず胃薬を飲んでいた。
現在の私は営業コンサルタントとして、さまざまな営業スタッフとお会いする。個人向け営業の方もいれば、ルート営業、法人営業をしている方もいる。どの営業職も楽ではない。しかし、営業の中でも住宅営業はメンタル的にかなり厳しい部類に入る。
その理由のひとつは“クレームが多い”ということ。住宅業界はクレーム産業と言われるほどクレームが多い。多くのお客様にとって家は一生に一度の大きな買い物。「ちょっとミスがあったけど許しますよ」などと妥協はしてくれない。普段は物にこだわりがないお客様でも、細かいことを気にするようになる。これがクレームへと発展し、営業スタッフを苦しめる。クレームを抱えた状態での営業活動はモチベーションが上がらないものだ。
また住宅営業がきつい背景には“契約がとれないゼロ月”が長いことも挙げられる。3ヵ月ゼロは当たり前。ときには半年以上契約がとれないこともある。
クレームと連続ゼロ月のダブルパンチ。これはダメージが大きい。こうなると、何をやっても楽しくない。仕事はもちろんのこと、プライベートもうまくいかなくなった。そんなときに私の心を支えていたものがある。