「結局、何が言いたいの?」と言われてしまう理由
顧客に契約手続きとツールの設定をまとめてメールで依頼したが、なかなか伝えたとおりに実行してもらえない。そのような経験はないでしょうか。また、顧客への説明や上司への報告で「何が言いたいのかわからない」と言われてしまい、依頼したかった行動をとってもらえないという悩みもよく聞きます。
依頼したが行動してもらえない、何が言いたいかわからないと言われる──どちらのパターンも根本的な原因は同じ。一度に複数のテーマを伝えてしまっているからです。
人に動いてもらうためには、伝えるテーマをひとつに絞ることがポイントです。こちらが思ったとおりに相手が動いてくれるかどうかで、仕事の生産性もずいぶん変わりますね。今回は、「テーマをひとつに絞る」ことの重要性についてお話しします。
人間が一度に覚えられる情報は少ない
コピーライティングの古典として有名な『ザ・コピーライティング』(ジョン・ケープルズ著、神田昌典監訳、齋藤慎子・依田卓巳訳、ダイヤモンド社)には、「言いたいことはひとつに絞れ」とはっきりと書かれています。ほかにも「1コピー1アイデア」や「1のルール」など、人によって言い方は違いますが、皆、口をそろえて、ひとつに絞ることの重要性を語っているのです。
私の会社員時代、会社が合併した際の出来事をお話ししましょう。式典で会長、社長、副社長や役員が順番に挨拶したのですが、全員が「私からお伝えしたいことは3つあります」と話し始めたのです。すると3人めくらいで、最初に挨拶した人が何を言っていたかわからなくなってしまいました。思い出そうとすると、今度は今挨拶している人の話が耳に入ってこない。結局、ほとんど頭に残らず挨拶が終わってしまいました。
人間が一度に覚えられる情報量はさほど多くありません。資格試験の受験勉強のように繰り返し頭にインプットできるならともかく、仕事や日常生活において、覚えるまで繰り返し聞く/伝えるというのは現実的ではないでしょう。式典の挨拶はのちのち社内のイントラネットで確認できるようになっていましたが、普段の仕事では、よほど重要なこと以外、伝えたことを相手が何度も確認してくれることはまずないのです。
だからこそ、テーマをひとつに絞り、一度に伝える情報をできるだけ少なくするのが重要になります。そうすることで記憶に残りやすくなり、結果として、行動してもらいやすくなるのです。