お客様は“断る理由”を用意してくる
あなたが買う側の立場のとき、興味がある商品を見たい反面、「まだ買うと決めたわけじゃないし、いろいろ話されるのも面倒だ」と躊躇した経験はないだろうか。店員が待ち構えているお店に足を踏み入れるのは度胸がいる。私はよくショッピングモールに行くが、見たい商品があっても暇そうな店員を見ると、「また今度にしよう」とやめてしまう。しつこくされたり、何かを売りつけられたりするのは誰だって嫌なものだ。
私がかつて勤めていたモデルハウスも敷居が高い場所だ。将来の家づくりのためにモデルハウスを見て参考にしたい、と思いつつなかなか一歩を踏み出せない。そもそも家づくりを考えなければ行くところではないし、ダークスーツを着た営業スタッフが待ち構えていることを誰もが知っている。私自身も勤めるまでは一度も行ったことがなかった。
実際、来店したお客様の多くが「入るかどうかとても迷った」と言っていた。ショッピングモールどころではない入りにくさがある。そして、多くのお客様は丸腰では来店しない。営業スタッフと対面するときには、必ず“断る理由”を用意してくる。 たとえば「営業スタッフが売り込んできたら、“まだ先の話なので”と言おう」と考えている。
そこへいつもの売り込みトークをしたらどうだろう。「こちらが当社のおススメでして……」と説明を始めた途端、「すみません、まだ先の話ですから」と瞬殺される。お客様が用意してきた予防線に引っかかった時点でゲームオーバーなのだ。
ダメ営業スタッフ時代の私はその心理を理解していなかった。来店すると同時にセールストークを始める私に対して、お客様は「まだ先の話なので」とシャットアウト。こう言われるとぐうの音も出ない。お互いに気まずい感じに。何も進展せず、展示場から出て行ってしまうことも頻繁にあった。言い方などを多少工夫したものの、ほとんどこの負けパターンにハマっていた。そのときは「やっぱり新規のお客様と話をするのは難しい……」と思っていたものだ。
そんなある日のこと。私に転機が訪れる。