(2)営業プロセスのデジタル化
続いて桐原氏はふたつめの「営業プロセスのデジタル化」について、アナログ時代の営業プロセスと比較して解説した。
アナログ時代は、「顧客選定」「日程調整」「商談準備」「商談実行」「記録」「契約」という一般的な営業プロセスにおいて、多くの企業は一部のプロセスだけにITシステムを導入して対応していたという。一方、デジタル時代に入ってからは、こうしたプロセスをカバーするデジタルツールが多く登場した。たとえば、AIによって議事録を自動作成するツールや、契約リスクを自動管理できるツールなどが挙げられる。
「米国では、ほぼすべてのプロセスに対応するSales Techが生まれ、それらを介して営業プロセスの効率化が進みました。実際、米国では現在1,000以上のSales Techツールが展開されています」(桐原氏)
こうしたツールを使うことで、データを蓄積でき、結果としてAIで処理できる部分も増えていくといったメリットがあるという。
「しかし、SaaSの平均導入数を比べてみると、米国企業では80もある一方、日本企業では9しかありません。日本は自社の業務プロセスに合ったかたちかつ、“オンプレミス”でシステムを組もうとすることが多いようです」(桐原氏)
(3)営業コンテンツのデジタル化
そして3つめの「営業コンテンツのデジタル化」について解説する。アナログ時代の営業コンテンツは、紙の資料や会話、対面商談だった。一方、デジタル時代の営業コンテンツは、デジタル資料や動画、Webページ、テレビ会議などが該当する。デジタル資料や動画が、Webページやテレビ会議によって伝達されると、営業は大きく変わるという。
「とくに注目すべきが、多くの企業で『サービスサイト』として持たれているような一般向けに公開されているWebページです。これからは個別顧客向けのWebページを活用したセールスが重要になるでしょう。たとえば、米国では『デジタルセールスルーム(DSR)』という言葉があります」(桐原氏)
DSRとは、「個別のお客様が入れるWebページ」を営業担当者が容易に作成できる仕組みだ。そこにはテキスト情報や資料、動画が登録されており、顧客がそれを確認することで購買意欲を上げることにつながるという。
「こうしたツールのメリットは、商談時間以外でも顧客の購買意欲を高めやすく、劇的に営業効率を上げられることです。商談自体の回数を減らせる場合もあるでしょう。さらに、取得したデータにもとづき戦略的な映像コンテンツを作成・活用することも可能になります。また、閲覧された日時、資料がダウンロードされた日時などがわかるため、次回の商談を円滑に進めるための準備にも利用できます。しかし、こうした営業コンテンツのデジタル化は、残念ながら日本ではまだほとんど進んでいません」(桐原氏)