多様化する営業職!営業の種類を分ける5つの要素とは?
一口に営業といっても種類がある。何によって営業の仕事内容が分かれるのかを見ていこう。
【顧客】法人営業か個人営業か
まずは、営業対象となる顧客だ。法人の場合は「法人営業」、個人の場合は「個人営業」と呼ばれる場合もあれば、シンプルに「営業」とされる場合などもある。
法人とは、企業や団体、組織などを指す。大企業や中小企業、小規模事業者など、その規模はさまざまだ。それに加えて、業種や業界、業態など、法人といっても実に幅広い。法人営業は、互いに会社の顔としてビジネスの話を進める役割を担っている。
個人を対象とする場合、自社の製品やサービスを個人に売る。個人に直接働きかけることから、話の進み方がスピーディーかつ反応がダイレクトに返ってくるという良さがあるものの、人間関係が法人よりも緊密になりやすいという特徴がある。
【目的】新規顧客開拓かどうか
営業の目的が、新規顧客開拓かどうかという点も業務内容に大きく影響する。新規開拓でない場合、既存顧客、またはかつて取引をしていた顧客を対象とすることになる。新規の場合はそのまま「新規(顧客)開拓営業」と呼ばれる。既存の場合は「ルート営業」や「御用伺い」などと呼ばれることもある。
新規顧客開拓には、相手の興味や関心がどれくらいあるのかに応じて、いくつかの営業方法がある。例えば、飛び込み営業といえば、成約の見込み度に関係なく、リストや店舗などを片っ端から回るものだが、問い合わせ歴のある顧客を掘り起こすという仕事もある。
既存顧客だけではビジネスが先細る可能性があるため、企業にとって新規顧客開拓営業は重要だ。その一方で、既存顧客のケアや受注拡大という点では、ルート営業が重要だといえる。なお、新しい顧客を獲得するほうが、既存顧客に対応するより割く労力が多いので、新規顧客開拓のほうが報酬相場は高くなる。
【商材】有形か無形か
取り扱う商材が、有形か無形かも営業の仕事選びの際にはポイントとなる。有形はつまりモノで、モノは製品や商品などだ。無形はコトで、コトはサービスやシステム、体験などの提供ということになる。目に見えて手に取れるモノがいいのか、決まった形のないコトがいいのかは、個人の好みが分かれるところだろう。
【業態】自社製品かどうか
有形、無形のいずれにしても、商材を自社で作っているのかどうかは重要なポイントだ。自社製品の営業がやりたいならば、メーカーやサービス提供会社、システム構築会社などを選ぶことになる。自社製品でない場合、商社や卸売、小売、販売代理店などの選択肢となるだろう。「メーカー営業」や「代理店営業」などのように表されることが多い。
実際にものづくりに関わりたい場合は、自社製品を選ぼう。ものづくりの現場に立ち合ったり、製品が店頭に並んだり、売れたりするのを自分の目で確認できる。ただし、他社製品やサービスを取り扱う場合でも、商材をよく理解しておかなければならないことに変わりはない。
【アプローチ】対面かどうか
顧客へのアプローチの違いは、営業手法の違いだ。大きくは、対面か非対面かに分かれるといえる。コロナ禍によってリモートワークが進んだことも影響しているだろう。
対面での営業には、「訪問営業」や「内勤営業」、「反響営業」などがある。訪問営業とは、その名のとおり相手先を訪問する営業スタイルのことだ。これは、顧客が法人であっても個人であっても、取り扱い商材が何であっても変わらない。もっとも一般的なスタイルだといえるだろう。
内勤営業は、外回りの営業とは異なり、顧客からのアクションに応じる形で営業を行うものだ。営業所や店舗を訪れた顧客に対応する。顧客には、一定の興味や関心があるのが特徴だ。具体的には、旅行代理店や銀行の窓口、携帯ショップなどで、カウンターセールスとも呼ばれる。
反響営業とは、テレビなどマスメディアの広告やダイレクトメール、チラシ、あるいはWebサイトやSNSなどインターネットの広告を見て問い合わせてきた顧客に対して行うものを指す。顧客対応に加えて、広告の出稿を計画することもある。こちらも、興味関心のある顧客を相手にするところからスタートするのが特徴で、訪問や電話、メールなどを使って営業する。
反響営業の場合、店舗など対面で対応するケースと社内で電話やメール、チャットを使って非対面で顧客に対応するケースがある。反響に対して電話で営業することをテレコール営業と呼ぶこともある。
増加しつつある新しいタイプの営業職
ここまでさまざまなタイプの営業を見てきた。近年では、問い合わせ履歴などにより、興味関心のあることがわかっている顧客に対して時間をかけてアプローチし、商談へとつなげる動きが活発になってきている。
インサイドセールス
インサイドセールスとは、日本語に直訳すると内勤営業という意味になる。しかし、前述の内勤営業と異なるのは、電話やデジタルツールを駆使して非対面で営業するという点だ。メールやSNS、チャットだけでなく、ビデオ会議ツールを使ってオンラインでの商談もする。
マーケティングを担当する部署が絞り込んだ見込みの高い客層や、実際に問い合わせなどがあった顧客に対してコミュニケーションを取る。キャンペーンなどの情報をタイムリーに提供したり、質問に回答したりして信頼関係を築き、自社製品やサービスへの関心を高めながら商談へとつなげることが求められる仕事だ。
フィールドセールス
インサイドセールスに対し、フィールドセールスは、外勤営業とされる。アウトサイドセールスとも呼ばれる。従来の外勤営業(外回り)との違いは、インサイドセールスがアプローチしてきた見込み客やアポイントを取りつけた顧客に対して、訪問してプレゼンや商談をするという点だ。商談からクロージングまでを担当する。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスでは、自社製品やサービスを購入した顧客、つまり成約後の顧客に対してアプローチをしていくことが求められる。カスタマーサポートではなく、カスタマーサクセスといっている点が、両者の違いだ。カスタマーサクセスは、顧客が自社製品やサービスを利用することで成功へとつながることを目指すもの。
顧客満足度を上げていく中で、上位製品や関連製品などの購入を勧めていく。いわゆるアップセル(購入単価アップ)やクロスセル(セット売り)の手法を使って営業していく役割を担っている。もちろん、使い勝手や改善点などついて自社製品やサービスについてヒアリングし、社内にフィードバックするというのも重要な役目だ。
インサイドセールスとフィールドセールスは、見込み客の絞り込みと商談成立という役割分担をしているといえる。カスタマーサクセスは、成約後の顧客のケアをする。担う役割や営業手法の違いこそあれ、それぞれ協力し合って営業を進めているといえるだろう。
安定したニーズがある営業職の中から自分に合ったもの選ぼう
ところで、営業と販売との違いには、主に次の点がある。販売は、問い合わせや来店など一定の興味関心がある状態からスタートすることに加え、購入サポートをする仕事だ。その一方で、営業は、売り込みから始めることが多く、経営課題を解決することも含めて最適な製品やサービスを販売し、販売後のサポートまで行うといえるだろう。営業は事業の要ともいえる重要な業務で、常に一定のニーズがある。
厚労省が公開している営業職(人材紹介を利用する場合)の年収レンジ は、メーカーの法人営業で380~1000万円、MR(医薬品の営業)で400~1200万円、IT営業で400~1500万円と報告されている。年収は役割や成果に応じて与えられるものだ。営業といっても、近年ではさまざまなスタイルがあるので、自分に合ったものを見つけよう。