USPとは
USPとは「Unique Selling Proposition」の略で、顧客側から見たときの「自社(商品、サービス)が持つ独自の強み」のことを指します。市場において競合他社と比べて自社にどんな強みがあるのか、売りがあるのかを明らかにすることで、消費者に購入意思をもたらすことができます。
USPの基準
USPは、1960年代にアメリカのコピーライターであるロッサー・リーブス氏が提唱した概念です。リーブス氏はその中で、USPには次の3つの基準があるとしています。
- 広告は顧客に対して、何らかの提案をすること
- その提案は、競合が提案していないものであること
- その提案は、多くの人を動かす力があること
USPでは、広告を打ち出すにあたり、顧客に対して何らかの提案をすることが求められますが、その提案とは「この商品を買えば、こういう利益が得られる」というベネフィットを明らかにすることです。
また、広告がなすべき提案は競合が打ち出していないもの、すなわち独自性があり、他社と差別化できる内容でなければなりません。さらに、その提案は既存顧客だけでなく潜在顧客も巻き込み、顕在化したニーズだけでなく潜在的なニーズにも訴えかけられるものである必要があります。
コンセプトとUSPの違い
USPと混同されやすいものに「コンセプト」があります。コンセプトとUSPの違いは、自社目線であるか顧客目線であるか、ということです。コンセプトは自社目線で「何を打ち出したいか、顧客に何を伝えたいか」を決めるものですが、USPは顧客目線から「自社(賞品、サービス)にどのような強みや売りがあるか」を見出します。
USPが重要な理由
では、なぜマーケティングにおいてUSPが重要とされているのでしょうか。USPが重要な2つの理由を解説します。
自社の強みを活かして競合と差別化できる
USPをまとめることで自社、あるいは商品・サービスの強みや独自性をはっきりさせれば、競合と差別化がはかれます。顧客や市場に対して唯一無二の存在になれるため、替えがきかない自社(商品、サービス)の価値を訴求できます。
強みや独自性をはっきりさせることはブランディングにもつながります。「○○といえば、あの商品(サービス)」「あの会社は△△に強い」と顧客や市場の中で地位を確立できれば、新規顧客の開拓にも、リピーターの獲得にも役立つでしょう。
消費者に注目してもらいやすくなる
USPによって商品やサービスが顧客にどのようなメリット、ベネフィットをもたらすのかわかりやすく伝えることができれば、消費者からの注目を集められます。USPの基準に「多くの人を動かす力がある」とありますが、USPの打ち出しに成功すれば多くの商品やサービスの中で際立った存在になれるため、多くの人の心をゆさぶることができるでしょう。
また、USPによって消費者からの注目を得られれば、結果的に営業のリソースを減らすことにもつながります。商品やサービスを使うベネフィットがわかりやすく伝わり、顧客側にとって購入する理由ができれば、わざわざ売り込みをしなくても購入や契約に至りやすくなります。SNSなどで口コミも広まりやすくなるでしょう。
USPをまとめるコツ
より効果的なUSPを打ち出すためには、USPをまとめる際にいくつかのコツを意識すると良いでしょう。ここでは、USPをまとめるコツとして5つのポイントをご紹介します。
ユニークさ、独自性、専門性を高める
USPが商品やサービス、自社の強みや独自性を表すものである以上、もっとも重要なポイントです。他社には決して真似できないようなユニークさ(個性)、独自性、専門性を突きつめていく必要があります。そのためには、まず差別化できそうな要素をリストアップすると良いでしょう。具体的には、次のような要素が考えられます。
- コストパフォーマンスの良さ
- 品質の良さ
- 利便性
- スピードの速さ
- 購入後、契約後のサポートや保証
ここで重要なのは、独自性や専門性であって「もっとも優れているかどうか」ではないことです。たとえば、品質の良さを表すときに「他社と比べて優れている」と示しても、実際に両方使ってみなければ顧客には伝わりません。しかし、「この商品やサービスにはこのように誇れる品質がある」と打ち出せば、顧客はメリットやベネフィットを理解しやすくなります。
複数のアイデアを掛け合わせる
独自性や専門性を突きつめる過程で、ひとつの要素だけに絞る必要はありません。たとえば、コストパフォーマンスと品質を掛け合わせれば、非常に強力な訴求ポイントとなるでしょう。また、利便性が高く購入後のサポートに手厚い商品やサービスなら、顧客満足度の高さを強みにできます。
自社の強みや独自性を考えるうえで、競合を分析することは当然ですが、まったく異なる分野の商品やサービスも分析し、取り入れられそうな視点を掛け合わせることもときには必要です。競合を含む同じ業界の視点からは見つからなかった価値が、まったく異なる分野の業種の視点から見出せることもあります。
競合他社よりも先に打ち出す
USPは独自性を打ち出すものですから、当然、競合が同じような考え方を打ち出した後に追随しても全く意味がありません。例えば、ビジネスそのものを最初に始めたとしても、後から始めた会社が先にUSPを広めてしまえば、消費者には後から始めた会社の方が強く印象に残ってしまいます。一度残った印象を後から覆すのは並大抵のことではありませんので、まず競合他社よりも先にUSPを打ち出し、広める努力が必要です。
一部の顧客のニーズに応える
幅広い層の顧客のニーズに合わせようとすると、あれもこれもと詰め込みすぎになり実現不可能になるか、平均的で独自性や専門性のないものに行き着いてしまいます。そこで、一部の顧客のニーズに特化した商品やサービスを設計し、独自性や専門性を打ち出すことが重要です。
一部の顧客のニーズに応える個性的な商品やサービスを打ち出すと、ターゲット層との強い結びつきや高いロイヤリティを得やすくなります。消費者は平均的な商品やサービスよりも、自分が抱える課題にピンポイントで寄り添ってくれる商品やサービスを求めているためです。
USPを商品・サービス開発の指針にする
商品やサービスを開発するためにUSPをまとめるという、あえて順序を逆にする手法もあります。これはマーケティングの基本的な考え方である「ターゲット層となる消費者のニーズを把握する」ということともつながります。
消費者の心に強く訴えかけるUSPを打ち出しても、ニーズとズレてしまっていては意味がありません。USPで打ち出す独自性や専門性と顧客のニーズをうまく組み合わせて、商品やサービスの開発を行うことも重要です。
USPの事例3選
最後に、USPを打ち出すことで成功をおさめた企業の事例を3つご紹介します。
ダイソン
ダイソンは、「吸引力が変わらない、世界でただひとつの掃除機」というキャッチフレーズをUSPとして打ち出し、成功をおさめました。紙パックを利用しないため吸引力が変わらない、という明確な特徴を「世界でただひとつ」とはっきり表現しています。わかりやすく、かつ伝わりやすい表現で、消費者の印象に強く残ることに成功した好例です。
ドミノピザ
ドミノピザは「30分以上かかったら、ピザの料金はいただきません」というインパクトの強いUSPを打ち出しました。ここで重要なのは、ピザの味での優位性にはこだわらず、あくまでスピードだけを端的に打ち出したことです。味にはそこまでこだわらないけれど早く食べたい、という一部の顧客のニーズに寄り添うことで、成功をおさめた好例です。
アップル
アップルは「ポケットに1,000曲のミュージックライブラリを」というキャッチフレーズで一世を風靡しました。携帯音楽プレイヤーの市場で、多くの企業は容量や音質などスペックで勝負しようとします。しかし、アップルは利用シーンの明確なイメージがつくれるフレーズをUSPにしました。これは、ユニークさや独自性が消費者の心を動かした好例です。
USPで自社の強みを活かし、競合他社と差別化を図ろう
競合他社と差別化し、自社の商品やサービスの強み、独自性を明らかにしてUSPを打ち出すには、提唱者が設定した3つの基準を満たすとともに、今回ご紹介した5つのポイントを意識することが大切です。既に成功したUSPの事例も参考に、ターゲット層に強くアピールできるUSPを打ち出しましょう。