コロナ禍で、営業活動や顧客把握の重要性を再認識
──まずはおふたりのこれまでのキャリアと、現在の役割を教えていただけますか。
山根 入社以来、営業部門を中心にさまざまな部門を経験しました。2020年からは営業副部長としてエンドユーザー向けの直販部門を統括しています。今回お話しするSFAの構築には2021年から兼任する経営企画と営業、双方の立場から関わりました。
今村 私は入社後、現場の数値管理やレポート化をもってKPIの達成や予実管理を支援する営業企画の部門に配属されました。2017年に前身のSFAを導入した際はプロジェクトの一員として要件定義に関わり、Salesforceへ移行した今回のプロジェクトでも業務フローの定義などを経て、現在は活用の促進を担っています。
──そもそも前身のSFAを導入したのは、どのような課題感からだったのでしょうか。
山根 当時は商談や顧客の情報が営業の頭の中にしかなく、データが各所に点在していました。点在する情報を相互に確認するための会議に追われ、さらにその会議のための資料づくりにも時間を取られる状況だったのです。引き継ぎの際に担当間で取りこぼされる情報も多く、資産であるはずの情報を貯めることができていなかったのが大きな課題でした。
──そこからSalesforceへ移行したのが2022年の春、コロナ禍の真っ只中で移行準備を進められたと思います。コロナ禍で抱えていたビジネス上の課題や、IT活用における課題はそれぞれどのようなものでしたか。
山根 まずはIT活用の課題ですが、前身のSFAを使っていたときは、会議室予約や見積もり管理のシステムが別個に存在しており、コロナ禍以前から二重入力が現場の負荷になっていました。負荷の割には「入力しなくても仕事ができてしまう」実態があり、正直、営業担当時代は私もきちんと情報を入力していませんでしたね。もちろん可視化されたことも多分にありましたが、依然として顧客情報や活動情報の全体像は見えていませんでした。
ビジネス面では、コロナ禍を機に“机と椅子だけの提供”からの脱却、つまり主軸である会議室以外のサービスの提供を開始しています。これらをどう「標準化」するかが、ポストコロナを生き残る上で必要だと考えるようになりました。
たとえば、コロナ禍ではオンラインのウェビナー支援などにリソースを割き、月間250本のウェビナーを顧客と共につくり成果を挙げましたが、会議室事業に比べると工数やリソースがかかっています。実績や既存顧客との関係値がすでにあり、スキームも確立されている会議室事業以外のサービスを提供する中で、営業活動の実態や顧客情報を正確に把握し、戦略に活かす重要性に気づき始めました。「アフターコロナでのさらなる成長を目指そう」と、SFAと会議室予約のシステム、双方を見直すことにしたんです。
多忙な営業の入力をExcelライクなRaySheetで促進
──よりビジネスを伸ばすためのIT戦略という考え方でスタートしたのが、DX戦略「イノベーションロードマップ」ですね。営業活動と管理から顧客の予約システムまでを一元化する基盤として、Salesforceを導入した背景を教えてください。
山根 既存の予約管理・見積もり管理システムも10年ほど活用していたのですが、どんな商品がどんなお客様にいつ売れているかなど、詳細の分析がしづらい課題がありました。TKPの会議室はイベントホールに近い50~100名以上の部屋規模が多く、企画のやり直しや見積もりの出し直しなど業務が複雑化しがちなのですが、それを一元管理できていない状態だったのです。
今村 そうですね。当時のSFAと予約管理・見積もり管理システムは、連携はできるものの、そのための開発が都度必要でした。これに対してSalesforceは、機能拡張やカスタマイズをしながらあらゆる情報を一元管理できる点が良いと考え、導入を決めました。
──導入に際し、組織づくりではどのような点を工夫されましたか。
山根 いちばん時間を割いたのが、TKPのあるべき姿=To Be像を議論することでした。各部門からマネージャークラスの人間を業務統括部という新設部門に引き抜き、プロジェクトを進めています。システムのあり方や業務フロー自体がどうあるべきか、組織として最終的に目指したいところは一体どこなのか。会社の各領域のプロフェッショナルたちが侃侃諤諤、3~4ヵ月ほどかけて話し合いました。
今村 経営企画からマネージャー、管理側、オペレーションの部門まで、現場を理解している人たちでTKPのTo Be像を考えるこのプロセスはかなり重要だったと思います。システム的にどうしたいかの視点も大事ですが、まず「TKPはどこを目指すべきなのか」からスタートしたことによって、ゴールまで1本の筋が通るプロジェクトになりました。
──多くの組織でSFA定着における最初かつ最大の壁となるのが、「入力」の定着です。定着に向け、RaySheetを選んだ決め手を教えてください。
山根 前身のSFAでは私自身もきちんと入力していなかったわけですが、私を含め、営業担当者が情報を入力しない理由はいくつかあります。そもそも商談だけで忙しいうえに、弊社の場合はひとり当たりの担当案件数が年間3~400件と非常に多いです。SFAに入力する項目数も多いため、その掛け算になると入力ハードルがとにかく高い。これらのハードル、つまり私自身が入力しない理由をつぶしていく中で、RaySheetに行き着きました。
それまでExcelを活用して情報管理をしていたため、ExcelライクなUIでSalesforceへの入力が叶うとあって、RaySheetとの出会いから導入までは、スムーズに進みました。もちろん導入後1ヵ月くらいはオンボーディング期間が必要でしたが、SFA移行初期の混乱を最小に抑えながら活用を浸透させるハブとしても、RaySheetは非常に使い勝手が良かったです。
Salesforceに入力した情報をRaySheet上でダイレクトに見ながら話すようにするなど、ミーティングの手法を変更した部分もあります。定着に向けて、「入力しなくても仕事ができてしまう」状態をなくし、入力しない言い訳ができない状況をつくっていきました。
豊富な選択肢がTo Be像への歩みを後押し 3ヵ月で2.3万以上の案件を蓄積!
──機能拡張やカスタマイズをしながら一元管理できる点が良いとのことでしたが、データの一元管理の視点ではRaySheetをどのような活用をしていますか。
山根 TKPはビジネスの特性上、「受注日」から売上計上をする「会議室/ホールの利用日」までに一定のリードタイムがあります。以前のSFAではこれらの数字を捉えきれていなかったのですが、「受注日」「利用日」をRaySheet上で入力しやすくすることで、今回それも是正できました。必要な情報を必要なタイミングで、現場はもちろんマネージャーも、一覧で見ることができるようになったのは大きな改善です。一方でシステムを使うのは人間ですから、入力不備はゼロにはなりません。こうした場合にも、入力不備のところだけRaySheetで抜き出して「ここを埋めてください」と伝えられる便利さがあります。
今村 ダッシュボードで1つひとつクリックしてアラートを出していくのではなく、埋まっていないシートごと抜き出してアナウンスできるのが良いですよね。このような細かいところも含めて、効率化に一役も二役も買っていると思います。
──RaySheet活用によって得られた成果について教えてください。
今村 現在、営業部門を中心に活用を進めていますが、使用開始から3ヵ月で2万3,000件以上の商談情報が蓄積できました。これでもTKP全体のトランザクション数から考えると全体の6割程度の活動情報であり、今後予定している施設スタッフやコールセンターでの活用が始まると、10万件規模の情報量になってくると思います。
山根 今のところSalesforceは営業向けのSFAとしての活用を浸透させているところですが、今後は会議室に付随する備品やソフトウェアなどを管理するためのマスター情報や、イノベーションロードマップで示した顧客自らがオンデマンドに予約を受発注できるポータルシステムなど、幅広い活用を計画しています。Salesforceへの入力を行う多くの社員に活用は広がる予定です。
──そのほか、AppExchangeのどのようなアプリケーションを重宝されていますか。
山根 データ統合には顧客データ統合ツールのuSonarを使い始めています。弊社は商談数や顧客数がとにかく多く、油断するとすぐに二重データなどが発生してしまう課題を抱えていたのですが、RaySheetと組み合わせてデータ統合ツールを使うことで正確な顧客管理に舵を切ることができています。
AppExchangeのアプリケーション群があることで、TKPのTo Be像に近づくための手段を、Salesforceと連携できるものの中から探すことができるのはありがたいですね。今後は、顧客満足度を高める観点やトレーニングの観点でさまざまなアプリケーションを追加したいと考えています。明確なTo Be像がある当社にとっては、そこへ向かうための豊富な選択肢が必要不可欠だと感じています。
今村 複雑な開発不要で使いやすい“ありもの”がたくさんあるのは、魅力ですよね。
顧客ポータルローンチへ 営業は顧客の事業戦略に資するパートナーに
──今後のチャレンジについて教えてください。
山根 足元の目標は、まずはイノベーションロードマップの核心であるSalesforceと連携した顧客向けポータルをきちんとリリースすることです。Salesforceはデータの出し入れが簡易にできる点も特徴のひとつですから、予約から利用までをお客様がセルフサービスでいかにつなげられるか、オンデマンドで会議室予約を受発注できる顧客ポータルシステムのローンチに向けて準備を進めています。これが実現すると対応スタッフの事務作業が減り、人的リソースも効率化できますから、将来的には価格戦略に還元する計画もあります。
今村 いわゆるダイナミックプライシングモデルのようなものですね。期間や会議室規模などに応じてお客様へ最安値を提示できるよう、BtoCの取り組みに着想を得ながら、柔軟に価格設定できる状態は、TKPのTo Be像のひとつとして掲げています。
山根 予約管理システムをSalesforce上で実現することで、ポータル上の顧客の行動などの情報を可視化できます。そうなれば、営業担当者個々人の力量に頼らず、誰でも売れ筋や顧客ニーズを把握することができるようなるはずです。
──それらが実現すると、営業の役割も変わっていきそうですね。
山根 TKPは商品の特性上お客様の業界・業種が幅広いですが、部門ごとに異なる課題に応えながらお客様が実行したい施策のロジ周りを一手に引き受けるのが、本来のTo Be像だと考えています。たとえば人事部門が研修をするために会議室を借りるのであれば、人事の方には研修を良いものにするために全力を使っていただきたいんです。ただ部屋を貸すだけではなく、言うなれば「お客様の事業戦略や経営課題に資するパートナー」のような存在になれるよう、営業部門としてもレベルアップしていきたいと考えています。
今村 先ほど山根が話した顧客ポータルシステムのように、お客様の最初の接点づくりや、予約・問い合わせの処理などの手間がかかる部分をシステムで効率化することで、営業の役割をお客様の課題解決パートナーへと進化させていきたいですね。
山根 事務作業や使いづらさを排除していき、こうしたTo Be像に近づいていくことが、ひいてはTKPの企業価値向上にもつながっていくはずです。SalesforceやRaySheetはそれを支えるインフラであり、ゴールに向かうための制約を取り除いてくれる存在だと感じています。
──SalesforceおよびAppExchangeを活用し、着実に改革を進めてきたリーダーとして、営業改革、組織改革、顧客接点改革に取り組む営業リーダーにメッセージやアドバイスをいただけますか。
今村 システムありきにならないことが肝要です。我々もまだまだ挑戦の途中ですが、Salesforce導入に際しては、中核のメンバーが熱量を持ってTKPのTo Be像やあるべき業務フローを議論しました。そこがTKPなりの改革プロジェクトの肝の部分であったことは間違いありません。
山根 周りに宣言してしまうことも大切だと思います。1回宣言してしまったら、やらざるを得なくなるところがありますから(笑)。宣言し続けてとにかくやるんだと決めたら、できる・できないではなく「どうやったらできるだろうか?」と思考回路から自然と変わってくるはずです。
──改革に取り組むチームで同じ方向を見ているからこそ、システム導入から定着、活用がスムーズに進んでいくことが伝わってきました。ありがとうございました!
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