目指す世界とサービスの一貫性がカスタマーサクセスの大前提
高橋(HiCustomer) あらためて、上場おめでとうございます。カスタマーサクセスについてお伝えするために、さまざまな場所で「airCloset」を引き合いに出させてもらっています。「所有から利用へ」「モノ消費からコト消費」にいち早く取り組んできたエアークローゼットさんのビジネスモデルの成り立ちについて教えてください。
天沼(エアークローゼット) 2015年からサービス提供を開始していますが、実は現在流行しているシェアリングエコノミーやサブスクのサービスを提供しようとは考えていませんでした。ビジネスモデルやITツールはすべて、手段だと考えていますから、私たちが実現したかった世界について先にお話しします。
「ライフスタイルを豊かにするものをつくりたい」と考える中で「時間の価値」に辿り着きました。本来だれもが平等に持っているはずなのに、「面倒だな」「億劫だな」と感じる時間の価値は低くなってしまう。そこで「ワクワクが空気のように当たり前になる世界へ」をビジョンに掲げ、1分でも1秒でも生活の中でワクワクできる時間を増やすためのサービスをつくることにしました。
具体的なターゲットやサービスを決めていく中で、「時間価値を高くしたいと考えているであろう忙しい女性」×「ファッション」という軸が決まっていきました。百貨店に行くと一目瞭然ですが、女性向け衣料は数も多くモノ探しにも時間が必要。一方で、マタニティ期間には身体や時間の使い方が変化しますし、いまの日本では女性のほうが、ライフステージの切り替わりによって、時間の価値を考える機会や、困りごと・課題も多いだろうと思いいたったんです。
「忙しいけれど新しいトレンドも知りたいし、新しい服も着たい」方に向け、生活リズムを変えなくても新しいファッションに出会える体験をつくろうと考えました。
高橋 この時点でもまだサブスクというキーワードはないですよね。
天沼 そうなんです。ただ「品質が良いものに繰り返し出会い、体験して欲しい」ので、レンタルサービスに、「店舗がある場所以外の出会いを生む」ためにオンラインのサービスにしようと決めていきました。
高橋 airClosetが提供する顧客体験のこだわりもぜひ教えてください。
天沼 ひとつは、レンタルする服をスタイリストが選ぶことです。ものを探す時間をアウトソースしつつ、マンネリ化してしまっているファッションに新しい出会いをつくることが目的です。また、クリーニング不要で返却期限がないのも我々ならではですね。期限が決まっているサービスが多いですが、仕事を頑張りたい日や仕事帰りのお出かけを楽しみにしている日にクリーニングや返却のために早く帰る必要が出てくると、「お客様がワクワクする時間をつくりたい」という私たちが目指すビジョンからずれてしまいます。
いきなり長くなってしまいました(笑)。一方で、自分たちが目指したい世界観とサービスが一貫していることは、カスタマーサクセスを考える際の大前提になると思っています。ものをつくってマーケティングしていくのではなく、お客様にしてほしい体験が中心にあって、その周りにプロダクトやマーケティングが生まれていくようなイメージです。