資料請求で生じる「知らないうちに失注」問題
デジタル接点管理の実例として、村尾氏は「資料請求編」「ウェビナー編」という2パターンの事例を紹介。まず最初に「資料請求」に関する事例を紹介した。
非対面での情報収集が主流である昨今は、買い手側の担当者が上司から指示を受け、複数ベンダーに対して資料を取り寄せるところから顧客接点がスタートする。資料請求の連絡を受けた売り手側では、セールス・インサイドセールスがフォローを行うのだが、買い手側の担当者が上司の新たな指示を待つ「休眠状態」に突入してしまう場合もある。一時的にコミュニケーションがストップした結果、「この問い合わせは商談化しなかった」と社内で早々に「終了」と判断されてしまうケースが散見される。
しかし買い手側からすると、単に上司の忙しさゆえに検討が止まっている状態にすぎず、翌月などに検討のためのミーティングがセットされている場合も少なくない。とはいえ、ここで早期に失注判断が下され追加のフォローが行われないと、メジャーな製品でない限り「知らない間に失注」をしてしまう。
「資料請求の現場では、自分たちは『商談化しなかった』と思っていても、先方では着々と検討が進んでいる場合も多い点は留意するべきです」(村尾氏)
各チームの心情は次のとおり。まず、マーケティング部門は「きちんとした訴求をして資料請求が増加しているため、商談化してほしい」と考えている。一方、インサイドセールスでは「顧客曰く社内検討はこれから行われるとのことだが、明確な課題はあるとも話していたため、今後しっかりとフォローを行えば商談化するはず」と考え、自分たちで引き続きタスクを持ち続けたり、セールスにパスをしたりするなど、案件を温めようとする。
他方で、セールスの立場では「フォローはしてみたが、先方の会社ごと巻き込めていないため、商談は遠いだろう」と後ろ向きになってしまうケースが多い。
デジタル接点管理は「仕組み化」を実現に近づける
「皆で一生懸命取り組んでいるのにも関わらず、3つの部門に軋轢が生じています。根本的な原因は『再アプローチ』の仕組みがなかったから。その点、デジタル接点管理に取り組むことで、そうした課題にアプローチできるようになります」と村尾氏は説く。
「フォローを行った直後に商談化まで辿りつかなかったとしても、後日検索経由でウェブサイトに来ているか否かなどの動きをキャッチして、それを取りこぼさずにフォローを行うことは重要です。商談創出の可能性がグッと高まりますし、まさにデジタル接点を管理するメリットのひとつでしょう」(村尾氏)
デジタル接点管理のフェーズにおいて、見込み客がウェブサイトへアクセスした事実はMAを活用することで掴めるが、それだけでは不十分であると村尾氏は指摘する。たとえば、メールマガジン経由でウェブサイトへ訪れた場合は、「たまたまメールを見て興味を持っただけ」というケースが多く、商談への発展が期待しづらい。村尾氏は、「必要なのは、お客様の行動を想像すること」と説明する。
「検索を通じてウェブサイトに訪れているような人は、企業や製品の『名前』で検索しているのだと想像することができます。デジタル接点をしっかりと管理していくことで、そうした前提を踏まえたうえでの施策づくり・仕組み化が実現に近づきますし、組織一丸となって顧客体験向上に向けた適切なフォローができるようになります」(村尾氏)