提案資料を「攻めの営業」仕様へ見直そう
前回の記事「『顧客には課題があるはず』の思い込みを捨てよ!新規開拓営業に立ちはだかる『引き合い対応慣れ』の罠」では、「待ちの営業」のアプローチのまま新規営業に臨んでしまうことのリスクをお伝えしました。それでは、「攻めの営業」では具体的にどのようなことを意識すればよいのでしょうか。ポイントは「事前準備」「ヒアリング」「クロージング」の3点です。
1. 事前準備
過去の連載記事では、新規営業の初回商談においては、「マーケティング部門が作成した」「機能紹介がメインの」「ボリュームのある資料」を流用してしまうと、成約が遠のいてしまうとをお伝えしてきました。ニーズが顕在化していない顧客との商談には、次の3つの見直しポイントに沿って、既存の提案資料を見直してみることをおすすめします。
1) 顧客の課題から製品紹介までの流れを深堀する
ニーズが顕在化していない顧客に対しては、製品紹介の前に「必要性の訴求」を行って共感・納得を得ることが最優先であるため、「開口一番に製品を紹介する」ことは絶対にNGです。商談の際は「顧客からよく見聞きする課題」の話題からスタートすることがベストでしょう。
しかし、これも相手の関心・理解度を過信するあまり「浅い」内容にならないように注意が必要です。たとえば、情報セキュリティ関連商材の提案資料では、「昨今、○○攻撃の被害に遭う企業が増えている」⇒「ですので、この新製品を導入しましょう」と、「セキュリティ被害の増加」という課題を「製品紹介」に直接結び付けるケースが散見されます。しかし、このロジックが通用するのは、提案先の情報セキュリティに対するリテラシーが高く、こちらが説明しなくても「なぜ今導入している製品では不十分なのか」を顧客自身が明確に認識できている場合に限ります。そうでない場合は、きちんと「従来の対策だけでは不十分な理由」を明示し、「売り込み感」を払拭する必要があります。
また、顧客が中小規模の企業である場合は、「大企業で○○攻撃の被害が急増している」と言われても、「自社には関係ないだろう」と対岸の火事として受け止められるケースも珍しくありません。このような場合は、「大企業と取引がある御社にもビジネスリスクがある」という観点をきちんと説明し、「自分ごと」としてとらえてもらう必要があります。
このように、事前準備の段階で「この顧客は、おそらくこの箇所にハテナを浮かべるだろう」「それならば、〇〇の情報を説明文に盛り込むべきだろう」と仮説を立てたうえで資料に落とし込んでおくことが重要です。これにより、「なるほど、だからこの製品は必要なのか」と相手からの納得・共感を獲得しやすくなります。