チャレンジングな人事制度 はじまりは「多様性に富んだ人材の受容」
――おふたりの「働き方リ・デザイン」における役回りを教えてください。
矢野 グループ組織戦略部でGM(部長)を務めており、部署横断的なタスクフォースの形式をとる「働き方リ・デザイン」で、さまざまな部署を束ねる事務局的な立場にあります。
タスクフォースの役割はふたつあり、ひとつは、リモート環境で困っていることや営業面で困っていることを足元から解決し、新しい働き方に向けて業務環境を変えていくことです。私が所属するグループ組織戦略部は、ここが担当領域になりますね。もうひとつは、コロナ禍の状況下で、将来どのようなビジネスを展開していくかを考える、いわゆるビジネス戦略の部分です。こちらは、グループ経営企画部という部署が担当しています。
中村 私はグループ人事部のGM(部長)をしています。もともと取り組んでいた働き方改革のための施策に加えて、新型コロナウイルス対策も並行して取り組んでいる状況です。現在は、コロナ禍をきっかけに、時間と場所の制約を取り払う大きな課題を軸足として、矢野のリーダーシップの元で「働き方リ・デザイン」の取り組みを進めています。
――これまで、新生銀行の働き方や人事制度はどのような変遷をたどってきたのでしょうか。
中村 従来の日本の銀行は、新卒から定年までひとつの会社で働き、決められた人事ローテンションの中で、ひとつの道を極めるような形で定年を迎えるのが普通でした。それに対して、2000年に設立された新生銀行では、顧客ニーズに徹底的に応えるために高い専門性を有する人材を即戦力で必要としました。そうした人材を採用するべく、日本人・外国人にかかわらず積極的に中途採用しようという方針を掲げました。
結果、さまざまな知識を持つ中途入社組と、もともと新生銀行に在籍している社員たちが融合する多様性のある組織となり、その多様性が組織にもたらすポジティブな魅力に気づき始めました。すると、次は「より多様性に富んだ人を惹きつける環境」の整備が急務となりました。人事制度を総ざらいし、ダイバーシティや働き方改革など、今に通じる体系的な見直しに着手し始めたのが2016年度からです。
まず、2017年に「セルフ時差勤務」を開始しました。時差勤務の制度を取り入れる会社は多くありますが、当行の制度は介護や育児などの事情がなくても自由に使える点が特徴です。新生銀行の定時は午前8時50分から午後5時10分までですが、それを前後30分刻みで2時間までずらすことができるという制度です。たとえば、午前6時50分に仕事を始めれば、前倒しした分、午後3時10分という早い時間に終業することができます。もちろん、朝ゆっくり仕事を始めることも可能です。働きたい時間帯、効率が上がる時間帯は人によって違いますので、それぞれの事情に合わせて働く時間を選べるようにしました。
その後、2018年には「在宅勤務」「ライフサポート休職」「兼業副業」を導入しました。在宅勤務制度に関しては、最初は週に2回を上限とした回数制限があったのですが、新型コロナウイルスの感染拡大にともない、現段階では回数制限は解除しています。現在、出社している社員は4割前後(2020年12月時点)ですね。
「ライフサポート休職」は、海外留学や介護などの理由で最大で3年間休職できる制度です。配偶者の転勤で一時的に東京を離れる必要が生じた場合にも、3年以内であれば復職することができます。これは、男女問わず活用されているように感じています。また、新生銀行には2,400名ほどいる社員の中で、約70人が兼業制度を活用しています。アプリ開発を個人事業主として請け負ったり、大道芸人をしたり、クラシックの指揮者をしたりする人もいるんです。自分の好きなことをお金にすることができるのは理想ですよね。
これらのほかにも、2019年にはドレスコードの廃止や、2020年4月には配偶者の妊娠からお子さんが1歳になるまでの間に20日間の休みを取得できる「はぐくみ休暇」を導入するなど、働きやすい制度は徐々に整備されてきているように感じています。