恥ずかしがり屋は謙虚ではなく、相手が見えていない状態
――『世界最高の話し方――1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた! 「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール』(東洋経済新報社)の出版、おめでとうございます。岡本さんが現職に至るまでのご経歴からうかがえますか。
10年ほど新聞記者として勤めたのち、渡米し、帰国後に日本のPR会社に入社しました。そこでリーダー向けのコミュニケーショントレーニングの仕事を始めたのですが、もともと苦手であった初対面の相手との会話やプレゼンの本場のスキルを学び、コミュニケーションスキルを鍛錬したいと考え、再びアメリカへ渡りました。現在は学んだノウハウを活かし、エグゼクティブを対象としたコーチングに携わっています。
武者修行の地にアメリカを選んだのは、コミュニケーションのメソッドが体系化されていたからです。コミュニケーションについて教わる機会が乏しい日本とは違い、アメリカには学術的にコミュニケーションを研究している機関が多く存在し、学校帰りや会社帰りの人たちが習い事の一環としてコミュニケーションスキルの教室に通っています。私は現地の大学にある「Shyness Research Institute」という研究機関を訪ね、学術的なアプローチで恥ずかしがり屋の克服に取り組みました。
――恥ずかしがり屋の研究機関があるとは驚きです。知らない人との会話や大勢の前で話すことに苦手意識を持つ日本人は多いと思います。修行を通して日米の違いなど、得られた気づきはありますか。
アメリカの政治家などに見られる、とにかく自分を大きく見せるためにジェスチャーや断言を多用する姿勢とは対照的に、日本のビジネスシーンでは自分を小さく見せて下手に出ることが良しとされていますよね。この態度は場合によってはおもてなしという価値を生みますが、強さやカリスマ性を出したいときは不利に働きます。
四方が鏡張りになっている箱の中に閉じ込められている様子をイメージしてみてください。そこでは常に自分がどう見えているか、迷惑をかけていないか、嫌われていないかという思考ばかりが働き、なかなか殻を破ることができません。多くの日本人がこの状態にあてはまるのではないでしょうか。恥ずかしがり屋の本質は、謙虚というより相手が見えていない状態なのです。