異例のスピード改革を支えた「THE MODEL」
――御社が1年という短期間でここまで改革を推進できた背景には、独自のビジョンである「LIFULL THE MODEL」の考え方があったのではないでしょうか。
諏訪 LIFULL THE MODELを策定する際に意識したことがふたつあります。まずはオリジナルの「The Model」を大事にすることです。最初から独自のやり方で進めようとするとうまくいきませんから、Salesforceが提唱している営業プロセスモデルであるThe Modelのフレームワークを尊重するよう自分にも営業現場にも言い聞かせています。そのうえでLIFULL流のThe Modelをつくりあげ、アカウントマーケティング部にとどまらない全社的な方針にしていく気概を持つことも意識しました。この2点を核にしたおかげでぶれずに変革を遂行でき、LIFULL THE MODELがただのスローガンに終わらない血の通ったものになったのだと思います。
杉村 フェーズ管理を取り入れたころ、私たちはThe Modelで推奨されているステップ式の考え方を独自にアレンジしてマトリクスで捉えてみたのですが、案の定うまくいきませんでした。まずは「守破離」の精神で教科書を遵守してからオリジナリティを加えたほうが結果的には近道を辿ることができるのだと身をもって学びました。
――新型コロナの蔓延で世の中が大きく変わり、営業組織に柔軟な対応が求められるなか、LIFULL THE MODELのようなコアビジョンがあると判断に迷いが生じにくそうですね。今後チャレンジしたいことはありますか。
杉村 今までは営業の課題解決先行型でテクノロジーの活用を行ってきましたが、今期から所属する組織の名称が「営業DX推進ユニット」に変わったこともあり、テクノロジー主導で営業を変えていく攻めの姿勢を強化していきたいです。先日、Salesforceの人工知能であるEinsteinにリストを読ませて見込みのありそうな顧客へ営業活動を行う取り組みを試験的に実施しました。セールスフォース・ドットコムさんと一緒に、大胆な改革にもトライしたいですね。
――最後に、新しい営業組織づくりに取り組む読者に向けてアドバイスをお願いします。
諏訪 DXは業務効率化やリモートシフトを目的に推進されるケースが多く、短期的な獲得効率や成果を求めすぎると行き詰まってしまいます。私たちの場合は新しい営業の型をつくるという目的が先立ち、多少効率が悪くても「こういう使い方をしてみてはどうか」という試行錯誤を重ねながらDXを進めてきた姿勢が成功要因になったのかもしれません。効率化や売上の最大化自体を否定するわけではありませんが、プラスアルファで現場に資するメッセージを打ち出せるとDXは加速すると思います。
杉村 改革で重要な心得は、ゼロへの手戻りを恐れないことだと思います。新しいチャレンジは失敗して当然です。私たちの場合は「できる/できない」の2択だけでなく、「正しい/正しくない」の軸にも重きを置いて営業の変革を進めていきました。最初の5ヵ月間は模索の日々が続き、成果が出たのは10ヵ月めを迎えたころでした。1勝9敗でもめげずに正しいと思うかたちを求め続けることが重要ではないでしょうか。
――より良い営業活動を実現するための「新しい営業の型づくり」が軸にあり、それを手助けするためにうまくテクノロジーを活用されてきた一連の改革に非常に感銘を受けました。今後の攻めのテクノロジー活用も楽しみです。ありがとうございました!