IVRyは、ALL STAR SAAS FUNDをリード投資家として、既存株主、新規投資家を引受先とした第三者割当増資により総額30億円の資金調達を実施した。今回の調達により累計資金調達額は49.5億円となった。
資金調達の背景
IVRyはソリューションのひとつとして対話型音声AI SaaSの「IVRy」を提供し、企業の業務効率化と生産性向上に向けて取り組んでいる。その取り組みの一環として、大規模言語モデル(LLM)を活用した音声対話AIの機能開発に注力している。
これまで、IVRyでは、電話を軸にAIを活用したプロダクトを展開してきた。しかし、AIの導入においては、ハルシネーションと呼ばれる、事実に基づかない情報を生成する可能性があり、社会実装するにはAIをコントロールする必要がある。IVRyでは、ハルシネーションを制御し、利用者がAIによる無人の「予約代行(一次受付)」をいつでも利用できるなど、AIの活用フェーズに入っている。
今後、AIを活用したプロダクトを含め、LLMの能力を制御し向上させる効果的な手段として、海外で主流になりつつあるさまざまなAI機能を組み合わせた複合AIシステム(コンパウンドAIシステム)を構築し、SaaSとして提供していく予定。
このコンパウンドAIシステムと、これまで蓄積してきた電話の音声データを組み合わせ、「音声コンパウンドAIシステム基盤」を提供することで、次のような対応が可能になる。
<可能になること>
- 通話データを文字化しさまざまなインターフェースで受け取ることができる
- 電話にて自動予約・注文が可能になる など
資金調達概要
調達金額:30億円
調達方法:第三者割当増資
株主:ALL STAR SAAS FUND、フェムトグロース・スリー投資事業有限責任組合、SMBCベンチャーキャピタル、BRICKS FUND TOKYO、Boost Capital(順不同)
調達資金の主な活用用途(予定)
1.「音声コンパウンドAIシステム基盤」を実現するための、AI技術を中心としたR&D(研究開発)人材の採用
IVRyにはGoogle本社でGoogle Assistantの自然言語理解チームに所属していたプリンシパルAIエンジニアをはじめ、AIに携わっていたエンジニアメンバーが在籍している。今後「音声コンパウンドAIシステム基盤」を実現するため、より多くのAIエンジニアを採用すべく、採用活動を強化する。
2.ビジネス・組織体制強化のための人材採用
IVRyには、メガベンチャー・有名ベンチャー企業を経験したメンバーや、上場・海外事業などを経験したメンバーも在籍。今後、ビジネスや組織をさらに拡大・強化するための人材採用にも注力していく。
3.利用事業者の拡大を図るためのマーケ&セールス費用
現在、対話型音声AI SaaS IVRyは、47都道府県、80業界以上、累計1万2,000以上のアカウントが利用しているが、さらに多くの事業者へ電話DXを通じた業務効率化を提供し、中小企業の課題である人手不足問題改善を目指すべく、利用事業者拡大に向けたマーケ&セールス費用として活用する。
投資家からのコメント(順不同)
ALL STAR SAAS FUND Managing Partner 前田ヒロ氏
「ARR100億円にとどまらず、1,000億円を超える次元を目指し、グローバル市場での成功を掴もうと邁進しているIVRy。代表の奥西さんは、そのビジョンを現実にするために必要な『大きな視野を持って物事を考えられる力』を持っています。私たちと同じように、奥西さんの野心的なビジョンに強く惹かれて、非常に高い能力を持つ“ALL STAR(オールスター)”なメンバーが次々とIVRyに参画している状況は、まさに『人材のブラックホール』。IVRyが世界で成功する大企業へと成長できるよう、全力でサポートしていきます」
ALL STAR SAAS FUND Partner 神前達哉氏
「今回の出資は、奥西さんとのポッドキャスト収録時に卓越した事業開発力、そして素晴らしい採用力に感銘を受けたことを契機に検討がスタートしました。IVRyが『圧倒的なPMF』の達成、そして緻密に構築されたオペレーションにより力強い急成長を実現していることを、SaaSメトリクスやお客さまインタビューを実施する中で強く確信しています。これから日本を代表するAI×SaaSカンパニーへと共に進化できることを本当に楽しみにしております」
フェムトパートナーズ General Partner 曽我悠平氏/Senior Manager 小野瀬宏氏
「IVRyへの投資は3回目になりますが、前回の投資からの実績を毎度振り返ってみるとその圧倒的な成長に驚かされます。それはとりわけ社会的なペインの高さと、それに向き合い事業開発や顧客獲得を実現させてきた素晴らしいメンバーあってのものだと感じています。電話自動応答サービスにAI電話代行サービスが追加されたように、今後も顧客のニーズに即した事業拡大を行っていくことでしょう。
奥西さんは一見飄々とした雰囲気ながら、中には熱い情熱と野望を持っている人です。これまで有言実行でIVRyを率いてきました。私たちはこれからも想像のその先を見せてくれることを信じて応援していきます」
SMBCベンチャーキャピタル 投資営業第四部長 安田純也氏/投資営業第四部 部長代理 馬籠勇人氏
「IVRyさんに今回追加出資の機会をいただき大変光栄に思います。
前回出資させていただいてから現在まで、SMFGグループで連携し、数多くのご支援、ご紹介をさせていただきました。
その商談の中で、AI等先端技術を使い易く届けるプロダクトの魅力・短時間でアップデートし続ける技術力の高さ、について強く実感できました。
何より奥西社長を始めとしたチームの皆様が、顧客に正面から向き合い、顧客のパートナーとして共に課題解決していく、真摯な姿勢に感銘を受けております。
引き続き『IVRy』が今回の資金調達を機にさらに世の中に広がり、多くの事業者の皆様にとってなくてはならないインフラとして広がること、そしてIVRyという企業が日本を代表するベンチャーになっていただくことを期待しております。
そのために今後もSMBCグループとしてできる限り支援して参りたいと思います」
BRICKS FUND TOKYO橋本雄太氏(三菱地所 新事業創造部 主事)/秦野豊氏(プライムパートナーズ Partner)
「2023年3月のシリーズBに引き続き、追加出資の機会を頂けたことを嬉しく思います。この1年あまりで優秀な人材が次々とジョインし、いわゆるT2D3の成長曲線を実現する日本の産業界にとっても注目度の高いスタートアップへと成長を遂げられています。今後は技術的ブレークスルーを迎えた大規模言語モデル(LLM)を活かし、電話の自動応答のみならず、あらゆる対話を自動化する新たなコミュニケーション・インフラへと成長していくことを期待しています。本ファンド及び三菱地所グループでは、まちにおける様々なコミュニケーションの課題をIVRyとともに変革し、新たな価値の共創を目指すなど、同社の成長を多方面で支援してまいります」
Boost Capital 代表取締役 小澤隆生氏
「Let's boost together!」
IVRy 代表取締役/CEO 奥西亮賀氏のコメント
この度の資金調達にあたり、IVRyをご利用いただいている事業者様、投資家の方々、社内のメンバーをはじめ、すべてのステークホルダーの方々に心より感謝申し上げます。
2023年のChatGPTの台頭は大きな技術的変革点となりました。今後10年でAIの普及はさらに加速し、業務やビジネスのあり方も変わるでしょう。その中で、私は「電話」とAIを掛け合わせることで、社会課題である人手不足問題に対する業務効率化を実現できると考えています。
当社は、日本のすべての企業に最高のテクノロジーを提供することで、働く人々がやりたいことに集中できる「Work is Fun」な世界を目指しています。この度の資金調達は、その実現への一歩であり、このタイミングに合わせて当社はコーポレートバリューの刷新も行いました。
当社は、LLMをベースとしたソフトウェアで電話・音声業界をリードすることを目指し、近い将来、そのソリューションを国外にも展開することで、世界を代表する企業へ成長していきたいと本気で考えています。
今回、強力な投資家陣に株主として参画していただき、日本市場におけるより大きな問題解決やその推進、グローバルを見越した広がりへ繋がるよう、プロダクトをはじめ、自分たち自身をアップデートしてまいります。今後もさらなる価値提供に向けて邁進しますので、引き続き皆様の応援をよろしくお願いいたします。