営業現場の「学習機会の減少」に気がついていますか?
近年、多くの企業が成果主義の導入やIT化、コンプライアンス強化を進めています。これらの施策により企業は社会的な要請を満たしていますが、一方で営業部員が業務を通じて学ぶ機会が大幅に減少しています。
営業部門の上層部は、こうした学習機会の減少に気づいていないことが多くあります。営業部員の学習機会の減少は、企業レベルでの施策による副作用であり、日常の業務において目に見えにくいからです。この問題は放置しておくべきではありません。
第1回では、成果主義やIT化、コンプライアンス強化が営業部員の学習機会にどのように影響しているかを解説し、営業部門の上層部が知るべき営業部員が業務を通じて学べる仕組みづくりのヒントをご紹介します。
成果主義が求める「短期視点」 新人に任せる仕事は?
成果主義は、優秀な人材の意欲を引き出し、生産性を向上させるために導入された評価制度です。多くの企業が従来の年功序列から「成果」に基づく評価に移行していますが、短期的な成果に偏りがちで、長期的な視点が欠けるとも指摘されています。
つまり、生産性や売上の向上など短期的な視点に偏り、長期的に重要な若手や新人営業部員の学習機会が減少しているのです。個人レベルでの影響を見てみましょう。
以前は、新人や若手営業部員が先輩の仕事を観察しながら学ぶ機会が多くありました。しかし、成果主義のもとでは「短期間で成果が見えづらい業務」を新人に任せるのが難しくなっています。
かつては、先輩のかばん持ちやコピー取りなどの業務を通じて、少しずつ仕事の進め方を学ぶ機会がありましたが、今ではそのような業務も減少しています。教育の一端を担っていた業務が「無駄」と見なされ、職場から自然と消えつつあります。
組織レベルでも、若手や新人に経験を積ませる案件を割り当てることが難しくなっています。営業部員は「顧客に育てられる」と言われるように、顧客とのやりとりを通じて成長しますが、成果主義の営業組織では、小さな案件でも確実な受注が求められるため、経験の浅い新人が経験を積む機会が不足しています。
さらに、難易度の高い重要な案件は熟練者に集中し、新人や若手が手持ち無沙汰になる一方、熟練者は多忙を極め、新人や若手を指導する時間が取れないのが現状です。