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「顧客とはヒトである」 営業が把握すべき3パターン
今井(セレブリックス) 向井さんが定義する「顧客」も聞かせてください。
向井(ウェルディレクション) 定期的に実施している営業ワークショップへ参加している経営者や事業責任者の方々に「皆さんのお客様は誰ですか」と聞くと、9割が「年商500億以上の製造業」「東京エリアの小売業」と組織単位で回答します。購買活動を行う対象を「顧客」と言うのであれば、組織を顧客と言うのは無理がありますね。なぜなら、「組織」とは「システムと概念」と定義されている存在だから。営業の提案を聞き、社内で議論して決裁するのは人です。
やはりBtoBであっても「顧客とはヒトである」ととらえていただくのがシンプルでわかりやすい。だからこそ、人がたくさん介在するエンタープライズセールスは難易度が高いと言われるのでしょう。
そのうえで、「顧客」は大きく3種類に分けられると思っています。ひとつが「買う人」です。この人たちに営業はアプローチしたいんですよね。理由はシンプルで、買ってくれる、売れる人だから。だからつい「決裁者へつないでいただけますか」と言いたくなってしまうんです。
もうひとつ大事なのが「使う人」です。現場の使う人たちは失敗したくない、評価されたいという感情がソース・オブ・エナジーであることが多い。一方で、買う人は経済合理性を求めています。両者には大きな違いがありますが、買う人と使う人を分けて考えられていない営業は多いですね。
向井 最後が「評価する人」です。たとえばSaaS導入の際、情報システム部門ならセキュリティや既存システムとの連携に問題がないか、財務経理部門なら業務フロー変更やROIはどうか、事業部門ではオペレーションが滞らず現場負担を減らせるかチェックします。つまり、リスク管理という観点を持つ人が「顧客」に含まれるのです。とくに大手企業ほど、重要なステークホルダーとなります。
買う人、使う人、評価する人それぞれが何を求め、何を軸に判断するか営業は知らなければなりません。それを無視して「これができます。こんな効果があります」とアピールしても、まったく響かないんですよ。
今井 買う人、使う人、評価する人で顧客を分けてとらえる。頭ではわかっていても、具体的にどのようにアプローチしたら良いんでしょうか。
向井 たとえば「使う人」は、現場担当者とその上司であるミドルマネージャー、課長や部長が該当するケースが多いですね。この人たちは会社が掲げる目的を達成するため、業務オペレーションに責任を持ち、その最適化を目的として購買活動を行っています。誰がどのような業務を担い、何を目的としているか営業は把握していなければなりません。
ところが「●●さんのお仕事で、とくに職責としてウエイトが高い業務は何ですか? 」と聞かない営業が多すぎるんですよ。聞いたとしても「あ、そうですか」と受け止めて終わったら意味がありません。「他社ではこのような業務を改善しようと取り組まれているらしいのですが、●●さんの部署でも同じ業務を重視されていますか? 」と深掘りできるかどうか。お客様の業務内容や職責を理解したうえで、買う人、使う人、評価する人を分類するのが第一歩です。