「デマンドジェネレーションセンターになる」と宣言
田口(ユーザベース) 飯島さんは長らく営業企画に携わり、マーケティング組織を先導してこられたと聞いています。ご経歴からおうかがいできますか。
飯島(NECソリューションイノベータ) 日系の製鉄メーカーでBtoB領域の営業企画からキャリアをスタートし、マイクロソフトで約14年プロダクトマーケティングを担当しました。NECソリューションイノベータに入社したのが2016年、外資と日本企業のマーケティング組織にちょうど半分ずつ属し、営業・マーケティング職に携わってきたことになります。
入社当時は新規事業開発の担当でしたが、「自主事業の更なる強化」という経営方針のもと、2018年にマーケティング推進本部が新設されました。以降、マーケティング組織をリードする役割を担っています。
田口 外資企業と日本企業のマーケティング組織で営業企画を経験されて、どのような違いを感じますか。
飯島 組織のあり方に違いを感じますね。グローバルなマーケティング組織の場合、リードをいかに案件化して営業のパイプラインに貢献できるか、いわゆる「デマンドセンター」としてうまく機能しています。
一方、日本企業は特定顧客に寄り添う営業スタイルが主流だったため、マーケティングの必要がなかったという背景があります。製品と営業力の強さゆえに、「営業部門のもとで展示会の企画やカタログ制作に携わることが、マーケティングや営業企画の役割だ」と認識されていたように感じます。営業と対等な関係性が築けていない印象です。
そのため、2018年に各事業部に分散していた販促部門が集まってマーケティングの専門組織が立ち上がった際、「営業部門と同じ重さでKPIを背負う、デマンドジェネレーションセンターになる」ことをミッションやKPIに落とし込みました。これは「営業とマーケティングは対等であり、横の関係性である」との宣言でもあります。
田口 営業と横の関係を強化するために、まずはどんな取り組みをされたのでしょうか。
飯島 「何か困っていることはない?」と、各営業部門の人たちに話しかけるところから始めました。売上が順調なチームは新しいことを始める必然性が薄く、外から来た人間にはなかなか耳を傾けてくれません。そのため、あえて困っている人を探しました。すると、ある営業部門のマネージャーが「展示会で毎回3,000件くらいリードを獲得していながらパイプラインがつくれない」とチームの課題を漏らしたんですね。
私どもでプロセスを分解したところ、名刺のデータ化に1ヵ月かかり、そこから営業のフォローが始まっていたことが判明したのです。そこで展示会場に名刺管理ツールのスキャナを持ち込み、名刺を即時データ化してMAツールで即お礼メールを送信し、インサイドセールスで仕分けて営業へ引き渡せる状態をつくった結果、パイプラインの創出率が約10倍に。このように営業のボトルネックを改善し、スモールサクセスを繰り返して営業部門に仲間を増やしていきました。