リクルートの営業が「きつい」といわれる理由5つ
リクルートの営業がきついといわれる、代表的な理由を5つ取り上げる。それぞれに詳しく見ていこう。
上昇志向が高い
上昇志向や成長意欲の強さはリクルートの特徴のひとつだ。安定を求めるタイプの人からすると、きついと感じるだろう。リクルートへの入社をゴールとするのではなく、リクルートへの入社を個人の夢の実現や目標達成の手段と考えている人材が集まってくると考えていい。
例えば、目標が達成できなかったとき、ネガティブになるのではなく、自分の何がいけなかったのか、何を改善すれば目標を達成できたのかと考えるという自分が成長する機会は自分で作り出すという社風があるともいえるだろう 。
目標へのコミットメント
リクルートでは、目標に対する強いコミットメントが求められる。営業ノルマが厳しいというイメージがあるが、これには、ふたつの要因がある。ひとつは目標設定が高めだということ、もう1つはノルマ達成にこだわる姿勢があるということだ。
このような目標に対する強いコミットメントを、成長機会ととらえられるなら問題ないだろう。その一方で、ノルマをプレッシャーと感じてしまったり、未達時の不安のほうが大きくなってしまったりする人にとっては、営業がきついと感じることになる。
なお、リクルートの場合、営業「ノルマ」ではなく「目標」という言葉が使われる。会社から課せられたり、上司から与えられたりしたノルマではなく、自分が立てた目標を自分で達成するという考え方の表れだ。
当事者意識の強さ
当事者意識の強さも、リクルートの象徴といえる考え方のひとつだ。社会で起こっていることや未来に望むことなどを、誰かがやってくれるだろうと期待する他人事ではなく、自分が何とかすると考え自分事としてとらえる力があるかが、問われるということだ。
自分が誰かの困り事や社会課題にどのように貢献できるかを本気で考えられるかともいえる。これまで数多くの起業家を輩出してきた、リクルートの真骨頂といえるものだ。逆にいえば、仕事に対する当事者意識が薄く、与えられたことをこなしていたい人にとっては、苦痛とも感じられるだろう。
なお、経営理念のトップに掲げられている基本理念には、「私たちは、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す」とある。
挑戦できる行動力
新しいことやまだ誰もやっていないことに挑戦できるかどうかも、リクルートの営業に求められるもののひとつだといえる。新しい価値を創造しようとするとき、必ずしも周囲の理解を十分に得られるとは限らない。仮にそのような状況に立たされることがあるとしても、自分の道を突き進める行動力があるかどうかだといえる。
挑戦には、失敗を恐れない気持ちや、失敗を受け入れて成功のために活用できる力が必要だ。失敗を避けるために慎重になりすぎる、リスクを最小限に抑えたいタイプの人にとって、挑戦し続けていける考え方を求められるのは、きつい営業だと感じても不思議はない。
なお、経営理念のページには、リクルートが果たす役割として、「まだ、ここにない、出会い」の実現が掲げられている。
論理的思考力
論理的思考力も、リクルートの営業に必須の資質だ。論理的思考力とは、物事を体系的にとらえ筋道を立てて考える力だといっていい。より具体的にいうならば、物事を因果関係や相互のつながりを含めて理解したり、共通する法則を見出したりするなどして、順序立てて整理していける力といえる。
論理的思考ができる人は、言葉を操る能力が高いとされる。難しいことを相手にわかる言葉で説明できたり、相手の話の要点を上手にまとめたり、物事の関係性を示したりできるということだ。このような能力を培うには時間がかかるため、計画的にスキルアップしてきたかどうかが問われるといっても過言ではない。
伝説級の営業を排出するリクルートの根底に流れる考え方
前章で取り上げたように、求められることが多く、きついともいわれるリクルートの営業。しかし、伝説とまで呼ばれるような人材を次々と輩出してきたことも事実だ。ここでは、その根底にある考え方について見ていこう。
会社は個人やチームが成長する場
よく知られていることのひとつに、リクルートは個人を尊重する会社だというのがある。個人を尊重する理由は、会社が成長する原動力は個人にあるという考え方があるからだ。会社を構成するのはチームで、そのチームを構成するのは個人と、最終的には個人にたどり着く。つまり、リクルートでは、会社での活動を通して成長していける意欲の高い個人が求められているといっていい。
それに加えて2021年、会社統合をきっかけに、個人とチームそれぞれに求めることが新たに定義しなおされた。新・人材マネジメントポリシーでは、協働・協創や多様性への対応がより強く意識されている。さまざまな個性を持つ個人がチームとして協働・協創し、多様性のある社会の実現を目指すことが謳われている。従来からの個人に加えて、チームでの成長も意識されるようになっているといえるだろう。
会社の仕事は成長を支援するための体制づくり
リクルートは、個人やチームの成長を促しつつ、それに不可欠なサポートを提供するのが会社としての重要な役割と考えている。これまでも、目標管理や学び合い、起業支援などの面で他社とは異なる仕組みや制度を構築してきたが、前述の新・人材マネジメントポリシーでその点がいっそう明確になった。
会社が社員に対して掲げるのは、3つのPromiseだ。その3つとは、「能力開発・チャレンジできる機会拡充」「安心安全を前提により柔軟に、よりクリエーティビティ高く個々人の働き方を選択しやすい環境へ」「Pay for performance」。個人に成長を求める一方で、会社側もしっかりと個人の成長を支援するため、個人の頑張りに応える制度を整えている。
リクルート卒業生の偉人伝説
最後に、リクルートを卒業(退職)した営業パーソンの偉人伝説をいくつか紹介しよう。
株式会社morichi代表取締役の森本千賀子氏は、リクルート史上、累計売上歴代トップという記録を樹立した。入社1ヵ月後、真摯に向き合わない営業姿勢や若さと可愛らしさには賞味期限があると、営業先の老舗企業の社長から指摘を受けたが、それをきっかけに一念発起。すぐに中小企業診断士のスクールに通い、入社1年目で営業成績1位と全社MVPを取得。その後もパフォーマンスを維持し、伝説となった。
入社1年目、名刺交換すら緊張し、逃げ出したいと思っていたと語るのは、元Twitter Japan株式会社代表取締役の笹本裕氏だ。営業がきつく、逃げ道を探していた際に見つけた会社の留学制度がきっかけでMBAを取得した同氏は、留学の選考に漏れないよう営業成績を上げようと必死で頑張り、トップを獲得するまでやり抜いたという。
1日に304件もの飛び込み営業でその名をとどろかせたのは、株式会社セールスヴィガー代表取締役の大西芳明氏だ。リクルート大宮営業所長時代、新規媒体の立ち上げで飛び込み営業1日300件という高い目標を立てたが、チームを率いて達成した。そのような経験を通して独自に編み出した営業術『サムライ営業』(経済界)として出版し、後に設立した同社で営業研修をビジネスにしている。
リクルートは、営業がきついといわれる会社だが、それにはここで取り上げたような理由がある。しかし、そのきつさを乗り越えたからこそ生まれる伝説があり、語り継がれる伝説が多いことも確かだといえる。