「AIがあなたの仕事を奪う」このような言葉が流布されるようになって久しい。
日々、AI関連のさまざまな技術革新のニュースが流れているが、中でも大きかったのはChatGPTの登場だろう。すでにこのツールを活用し、生産性や効率性を向上させた企業は少なくないはずだ。
大規模言語モデルの普及は世の中のトップ営業をどのように変えるのか、あるいは営業のあり方そのものを変えてしまうのか──。
ChatGPT活用の流れは止まらない
中野(ブリングアウト) ChatGPTの登場はビジネス業界のみならずあらゆる業界に衝撃を与えました。改めて、叶内さんはChatGPTをどのように評価していますか。
叶内(NLPeanuts合同会社) 非常におもしろい動きだと思っています。対話型のユーザーインターフェースとそれに合わせた学習の工夫が大衆に刺さり、多くの人が認知することとなりました。NLP(自然言語処理)を研究してきた身としてはすごく嬉しいです。
中野 ChatGPTは、GPTという大規模言語モデルの“脳みそ”を使ったチャットサービスです。GPTの可能性という点ではChatGPTがこれ以上はないほどに示してくれましたね。
叶内 はい。ChatGPTは対話型UIで誰でも容易に試すことができるので、アイデア次第でさまざまなサービスが生まれる可能性があります。
中野 私が代表を務めるブリングアウトも、4月にChatGPT対応版の提供を開始しました。目的は商談データを収集し、ホワイトカラーの生産性や効率性を向上させることです。
「商談のログをとるなんて……」から雰囲気が一変した2023年
叶内 早期にChatGPTの導入を決めた理由はあったのでしょうか。
中野 大規模言語モデルに着手しないとビジネスに乗り遅れるのでないかという危機感からです。この流れは不可逆的なものだと思っています。
叶内 今後は、どれだけAIを効率的に活用しているのかで企業の業績に差が生まれてくるかもしれませんね。これまではぼんやりと「AIでホワイトカラーの仕事が変わるかも」という雰囲気でしたが、ChatGPTの登場により大規模言語モデルでできそうなことが経営層にも認知されてきました。2023年の上半期は、「自社のデータでこんなことが試せるかも」と、データ蓄積と活用の動きが加速した印象があります。
中野 営業の変化という点で言えば、これまでは「商談のログ(録音)をとるなんて……お客様に失礼では?」という懸念からログ取得がスムーズに進まない課題がありましたが、その流れも大きく変わってきているのを感じます。
ChatGPTの台頭により、議事メモや要約など、ログをとる側にとってわかりやすい明らかなメリットが生じるため、多少の気まずさを乗り越えてログ取得に踏み出す企業も増えていそうです。