[大手通信業界の方からの質問]
アウトバウンド営業で、自社サービスを知らないお客様への意識づけ(興味づけ)をする方法を教えてください。「お困りごとをヒアリングするまでのつなぎ方」です。新規架電したお客様に対して、いきなりお困りごとを聞くのは失礼だと考えております。
忙しい購買者にアウトバウンド営業で新たな視点を
ご質問ありがとうございます。今回は初めて接点を持つお客様との向き合い方、とくにトップパフォーマーがどう振る舞っているのか、またそもそも「アウトバウンド営業」をどう考えるべきか、そういうお話をできればと思います。
正直に申し上げると、質問を拝読したときに違和感を覚えたんですね。もう一度読み直したときに、「サービスを知らないお客様への興味づけをする方法」に引っかかったのだとわかりました。そんな都合の良い方法は、ありません(笑)。
アウトバウンドにおいては、「自社サービスの話に至るまで」が重要です。まずは「なぜこの電話をしているのか」「自分は何者か」をきちんと説明しなければなりません。有名なのは、Salesforceの「Why You,Why Now」ですね。サービスの話はあくまで、電話をかけた理由の中の1トピックに過ぎないわけです。その出発点にまずは立ちましょう。
そもそも私はアウトバウンドは絶対に必要な営業アプローチのひとつだと思っています。BtoBの購買者側の多くは、それぞれの役割を果たすためにいろいろなことを頑張ってこなしているのですが、過重労働になってしまっていたり、良いやり方が見つからなかったり、何かしら働くうえでのお困りごとをお持ちです。アウトバウンド営業は、第三者の視点でそこを解決する新たな視点を提供することができます。
営業の皆さんに知っておいてほしいのは、お客様が困っているのは、効率化や業務過多などの「目の前の業務」ですが、組織として達成するべきは「売上」や「成果」など、また違う部分だということ。購買側の多くは、達成しなければならないことと、目の前の業務における困難について、うまく整理できていない状態にあります。
そんな状態のときに突然かかってきた営業電話で、「こういうサービスを提供していまして、こんな会社さんの課題も解決したことがあります。さて、御社の課題もヒアリングさせてもらえませんか」と突然言われてもお客様は困ってしまうわけです。
では、ご質問にあるようなヒアリングに進む前の段階で、営業はお客様とどのようなことを話せば良いのでしょうか。
売り物を起点にストーリーを組み立てない
たとえば、読者の皆さんがA社に対して「MA(マーケティングオートメーション)ツール」のアウトバウンド営業を行っているとしましょう。ご質問に照らし合わせると、このような齟齬が発生してしまう可能性があります。
[A社の状況]
- 展示会やさまざまなプロモーション活動でたくさんのリードを獲得している
- 最終的にはそこから商談、受注を増やしたい
- 接点は十分にあるが、受注につながらない点が問題だと考えている
- 現在のプロセスの改善点を考えたい
[アウトバウンド営業の状況]
- MAに興味を持ってほしい
- 大量のリードに対するコミュニケーションを自動化できると伝えてアポにつなげたい
[発生してしまう齟齬]
- 営業は「コミュニケーションの自動化に困っていないか」ヒアリングしたい
- A社は、自動化ではなく「成果につながるプロセスの改善方法」が知りたい
このように引いた視点で考えると「MA」の領域だけに答えがあるわけではないことが明らかです。
つまり、営業に必要なのは、売り物を起点にストーリーを組み立てるのではなく、電話をかけたお客様がどんなことに困っているのかを想像し、その原因を究明するためにどんなコンテンツをお渡しできるか考えること。もっとも重要なのは「あなたたちが困っていることに対してお話する準備があります」という姿勢。逆に言えば、それもないのに電話をしてしまえば、当然商談につなげることは難しいです。
アウトバウンドにおいてはアジェンダ設定が重要です。そしてその内容は売り物に関することではなく、相手のビジネスや事業のことであること。なかでも、お客様からは見えづらいことをお伝えすることが肝要なわけです。