対面商談やFAX受注……“アナログスタイル”からの変革
物流機器のパレットレンタル事業をメインに、物流IoT事業、アシストスーツ事業、ビークルソリューション事業、ICT事業などを展開するupr。一盃森氏は2010年に新卒で入社して以来、営業職として勤務してきた。2021年9月にDX企画グループへ配属されるまで、SFA/CRMに関する知識はまったくなかったという。IT未経験者の一盃森氏は、いったいどのようにしてDXを推進していったのか。
DXに取り組む前のuprは、いわゆる“アナログスタイル”だったと一盃森氏は語る。営業は現場に赴いての対面商談がメイン。営業個人の見込み金額も、保有している案件のフェーズ管理も曖昧な部分があった。受発注もほとんどが電話とFAXで行われていた。現場とのやりとりが多い物流業界ではこの“アナログスタイル”がかえって有効に機能する場面もあったという。しかしコロナ禍を経て、IT活用による変革の必要が生じた。
さまざまな課題が挙がる中、まず着手したのが営業改革だ。SFA/CRMの導入により、営業の属人化、個人の「経験・勘」に基づく意思決定というふたつの課題解決を図った。営業力強化と生産性向上を達成することで、営業改革を推進しようとしたのだ。
このような変革の中で、なぜIT未経験の一盃森氏がDX企画グループへ配属されたのか。
ひとつは、会社が求める人材にマッチしていたためだと一盃森氏は語る。uprのメイン事業であるパレットレンタルの流れや仕組みを理解し、かつ、営業への定着にあたり営業陣の実情や気持ちがわかる人材が求められていた。
もうひとつの理由は、一盃森氏個人のキャリアプランだ。世の中の変化に合わせて営業スタイルも変わる中、営業以外の知識・経験を身につけたいという思いがあった。会社が求める人材であったことと、個人として新しいことにチャレンジしたい思いがあったこと。このふたつがマッチしたことで、IT経験がない一盃森氏へuprのDX推進が託された。
一盃森氏が最初に直面した壁が、リリースまでのタイトなスケジュールだ。2021年6月にプロジェクトが発足して以降、一盃森氏は営業と兼務しながらDX推進業務に携わっていた。そして同年8月にDX企画グループへの異動が確定するが、リリース予定日は9月末。SFAをまったく知らないIT未経験者が、配属から1ヵ月足らずでSFA/CRMをリリースしなくてはならなくなった。
「ずいぶん無茶なことを言うな、と思いました(笑)」(一盃森氏)
一盃森氏は有償トレーニングを受講してSFA/CRMの基礎知識やupr独自のカスタマイズ内容を学び、なんとか9月末のリリースに間に合わせたという。
“急な異動”によってひとりで孤独にDXを進める中、どのようにモチベーションを保ったのか。この質問に対して一盃森氏は、「急だという印象はなかった」と答えた。当時の上長と密にコミュニケーションをとり、異動の可能性やITツールに拒否反応がないことを共有していたのだ。異動の話が出る以前から、一盃森氏自身の考えやキャリアプランを会社が把握していたことが、モチベーションに影響が生じなかった理由ではないかと語った。