ステップ1:都合の良い営業にならない
顧客を相手にする仕事をしているとよく耳にする言葉に「お客様は神様です」がありますが、みなさんはこの言葉にどのような印象をお持ちでしょうか。「お客様がいないと売上が成り立たないから当然だ」という意見もあれば「お客様は大切だけど、神様は言い過ぎだ」という意見もあるでしょう。
この言葉は、もとは演歌歌手の三波春夫さんの言葉で、お客様の前で歌うときの心構えを語ったもの。つまり語感から誤解されがちな「お客様のために何でもする」というものではなく、「何かを提供する側が持つべき心構え」を説いた言葉なのです。
とはいえ、営業をしているとどうしても「お客様=目上の存在」として接する場面は多いでしょう。そのようなマインドを持っていることでやってしまいがちな営業スタイルが「顔色うかがい営業」や「機嫌とり営業」です。意識的にそういうスタイルを選択する方もいると思いますが、実は無意識にやってしまっている人もいるはずです。
このような行動の裏には「ノーと言えば失注するかもしれない」「お客様のためにはすべての要望に答えなければ」という潜在意識の働きがありそうです。
このような営業スタイルだと「何でもしてくれる良い会社/営業だ」と好印象を与えることができそうですが、行き過ぎてしまうと最終的には「都合の良い会社/営業」と認識され、関係性もそれに見合ったものになってしまいます。そのような関係性ができてしまうと「最初のころは何でも聞いてくれたのに、今は全然要望に応えてくれない」と、小さなノーでも強い悪印象を持たれかねず、顧客の思考・行動に営業担当者が束縛される事態が発生してしまいます。
ですが、そういう関係性は、本当はお客様のためにもなりませんし、何より営業をしている自分自身にとって健全な関係性とは言えません。このようなスタイル・考え方から抜け出すためにも、「顧客のため」という観点だけでなく、「自分自身の価値」という観点も踏まえたうえで考え方を改める必要があります。