「場」に「聞く」ための、6つのチャネル
広江 「自分に聞く」「相手に聞く」ことに続いて、「聞くプレゼン」を構成する重要な要素の3つめは「場に聞く」ことです。これまであまり注目されてこなかった、「場」の空気や、見逃せないシグナルをどうやって見抜くか。今回はそのために必要な「6つのチャネル」から、いくつか例を紹介します。アンテナを張ることで、「場」で何が起きているのかが見えてきます。
6つのチャネル 例①:視覚
私がオンラインで商談をするときは、Zoomに入るメインPC、ギャラリービューで参加者の顔を見るためのiPadを必ず用意します。PCとiPadの両方を見ながら商談やプレゼンを行うと、視覚から、お客様の表情や姿勢、振る舞いが見えますよね。それで、「場」で何が起こっているかを把握します。
6つのチャネル 例②:聴覚
お客様が今どんなところにいらっしゃるのか、あるいは、皆さんの息づかいやため息、乗り出すような声、息を吸うような声を聞き取ります。そこから、今のプレゼン内容はお客様に響いているのか、いないのかを把握します。
視覚チャネルと動作チャネルを使って、リスクを回避したエピソードをご紹介します。最近、6名グループのお客様と商談をしました。視覚チャネルと動作チャネルを使い、お客様に呼びかけながらプレゼンをしていたんですね。すると、特定の方の名前を言うときだけ、お客様の笑い方が不自然になるんですよ。もしかして……と思い、急いで名刺を調べたところ、私がお客様のお名前を間違えていたのです。「名前を間違えていることに気がつかずにプレゼンをしている」「間違われている人も今さら訂正できずにかわいそう」そんな苦笑いだったんですね。
こうして、視覚チャネルと動作チャネルを使い「場」に起こっていることの違和感を捉え、軌道修正しました。「申し訳ありません。私、お名前を読み間違えていました。正確には○○さんでしたね」「いやいや、気にしないでください」このやりとりで、皆さんの意識がプレゼンに戻りました。もし「場」に起こった変化に気づかず、名前を間違ったままプレゼンを進めていたら。どんなに内容が良いプレゼンでも、相手の注意はプレゼンの内容ではなく名前を間違えている広江に向けられて、受注に至らなかったかもしれません。
「場」に起こっていることを捉えてプレゼンするために、6つのチャネル、ぜひ使っていただきたいなと思います。