“育成スキル属人化”からの脱却
見直すためのふたつのコーチング
――4つの視点変革を意識することで、セールス・イネーブルメントを実現していくわけですね。これまで営業の属人化は問題視されてきましたが、“営業教育の”属人化を解消することが鍵であることがわかりました。
そうですね。当社としてはとくに“人の行動変容”による営業の属人化の解消に貢献できればと思っています。たとえば、当社が提供する「Enablement App」を使うと、営業で成果を創出するための、営業プロセス、スキル、ナレッジのつながりが体系的に整理された「スキルマップ」で営業メンバー個々人の強み・弱みを可視化でき、それらをガイドにコーチングできるようになります。
データにより育成課題が正しく抽出されていれば、「今度の提案ではここをヒアリングしてみようか」というように具体的かつ、1人ひとりに合わせたアドバイスが可能になるわけです。スキル標準化や早期成長が期待できるうえに、マネージャーがそのためにどう対応したか、どんな内容でアドバイスしたかも併せて記録でき、育成による変化も追うことができるため、育成の効果検証が可能になります。マネージャースキルマップも標準搭載されており、「What(どのスキルを)×How(どのように身につけさせるか)」の繰り返しで、マネージャー自身も育成力を高められます。もちろん、育成のヒストリーを見ながら、次のマネージャー候補などの検討材料とすることもできます。
このように、イネーブルメントにはマネージャー育成の側面もあり、当社ではマネージャー向けプログラムの提供もおこなっています。イネーブルメントの成功に不可欠なのはやはり現場の協力ですが、特にコーチングの質は大きく影響します。SFAなどで商談状況を見て、部下に数字の達成を促す「商談コーチング(Deal Coaching)」や「商談をどう前進させれば良いのか」という疑問に応えるための「営業スキルコーチング(People Coaching)」などコミュニケーションの使い分けが肝要ですが、ここもやはり属人化しがちです。コーチング力の向上をはじめ、マネジメントスキルの標準化もイネーブルメントの重要なテーマです。
また、育成というと人事部門が担うイメージがあるかもしれませんが、人事とイネーブルメントチームはコラボレーションしながら育成を進めることができ、まさに「マネージャー育成」は両者が重なり合う部分です。現場に近い課長などファーストラインはイネーブルメントに近く、営業部長、本部長となると実務より経営幹部としての育成が必要で、サクセッションプランとして人事が担当することになるでしょう。そこで、人事とイネーブルメントがシームレスにつながるよう協業する必要があると思います。そのうえで、課題の固有性を見極め、育成を担うのが人事部なのかイネーブルメントチームなのか、自社の事情に合わせて役割を振り分けると良いでしょう。