銀行のデータ活用の強みは「すでにデータが揃っている」こと
――ダイナトレックの創業は1984年までさかのぼるとのこと。創業の経緯を教えてください。
佐伯慎也(取締役/製品技術・コンサルティング担当) 当社は1984年に創業し、1991年から通商産業省における貿易保険システムの構築にかかわったシステムコンサルティング会社です。
当時の大きな仕事は、紛争や通貨危機などの国際政治が大きく動いたタイミング――たとえば輸出したモノの代金が、政変などで相手先の支払いが不可能となってしまった場合に、国として補填をする枠組みを整えることでした。「明日、どこで戦争が起こるのかが誰もわからない」状況下では、万が一に備えて関連するデータを瞬時につなぎ合わせてレポートを作成することが重要視されていたためです。当時は、バラバラに管理されているデータから必要なモノを抜粋するようなシステムが存在していなかったため、弊社がそうした分散されたデータを集約するような仕組みを整えました。こうした仕組みの汎用性に目をつけて製品化したサービスがDYNATREKです。
当社では、このデータ統合分析ソフトウェアであるDYNATREKを官公庁やメーカー、通信事業者、金融機関などに提供しています。
――計25の地方銀行に導入されるなど、さまざまな業界の中でも金融機関への支援実績を多数お持ちであるとうかがいました。
佐伯卓也(取締役/経営企画担当) 銀行には「データがすでに揃っている」という特徴があります。まずはデータを集める段階からスタートしなければならない業界も多数存在しますが、業務の記録を取ること、顧客との折衝履歴を保存することが規制として定められている金融機関は、すでに豊富なデータを持ち合わせている場合が多いです。
こうした前提を踏まえて、昨今の「DX」という文脈の中で、銀行には「マーケティング活動をアップデートしたい」「営業スタイルの刷新にともない、KPIも新たに策定していきたい」需要があります。これに関連して「各所で管理されているデータを、総体としてまとめたい」というニーズが増加しているんです。
課題を解決する方法は大きくふたつあります。「もうひとつ大きな箱をつくることで全データを縦横無尽に検索できるようにする」方法と、「さまざまなデータベースを仮想的につなぐ」方法で、DYNATREKは後者に該当します。DYNATREKは放散しているデータを横につなげること、そして既存の「箱」がすでに存在する場合は、それらに格納されていないデータを紐づけることの両方が得意です。
――「新たに大きな箱をつくる方法」「さまざまなデータベースを仮想的につなぐ方法」それぞれの利点を教えてください。
佐伯慎也 まず、「新たに大きな箱をつくる方法」のメリットは、データがきちんと整理されること、そして素早くレスポンスが返ってくることです。また、格納されたデータがすべて整理整頓されていることによる使い心地のよさも利点でしょう。
他方で、一度完成された箱をつくり上げてしまうと、その後何かしらの変化が生じた際、新たにつくり換えることが難しくなる点がデメリットとして挙げられます。その点、後者の「さまざまなデータベースを仮想的につなぐ方法」は、環境変化に合わせて柔軟に対応しやすい点が強みと言えます。