IT企業経営者における「カスタマーサクセス」の認知度は3割弱?
カスタマーサクセスとは、顧客の成功体験を能動的に導くことで、自社との双方に利益をもたらすという考え方や基づいた活動のこと。欧米で生まれた考え方ですが、近年では日本の大企業でも事業戦略の一環として取り組まれているケースが見受けられるようになりました。
徐々に浸透し始めていると思われたカスタマーサクセスの概念ですが、実は認知度はまだまだ低い状態です。2021年1月にIT企業経営者・役員374名を対象に実施した「カスタマーサクセスに関する認知度調査」におけるカスタマーサクセス認知度はわずか28.6%でした。
ただし、認知していると答えた人のうち、72%が事業戦略として重視しているという回答も得られています。全体的な認知度としては低いものの、すでに認知している層にとって関心の高い分野と言えます。
重要性を承知してもなお、多くの企業が未だにカスタマーサクセスの導入に二の足を踏んでいます。すでに認知していた回答者にカスタマーサクセスの取り組みに関する課題を尋ねたところ、50%の人が「ノウハウが不足している」と答えています。認知度に加え、導入例が少ないのは、情報量の不足や成功事例が少ないのが原因です。
サブスクリプション型では継続的な利用が利益を生む
本調査の対象をIT企業の経営者とした理由は、カスタマーサクセスが特にサブスクリプション型サービスとの関連性が高いとされているためです。サブスクリプション型ビジネスの要であることも併せてお伝えしていきます。
2018年ごろより始まったサブスクリプション型サービスの台頭により、これまでは売り切り型だった価値の提供が変化してきました。月間利用料を低く抑えたり、システム構築費を省いたりすることで導入の障壁を下げているサブスクリプション型サービスでは、継続利用を前提として利益の発生を見込んでいます。短期間の契約のみで十分な利益が発生するようなケースはほぼありません。月ごとに新規顧客を獲得していたとしても、同数の解約が発生すれば損益が悪化していく仕組みです。
解約率の低減、すなわちサービス利用の定着化を実現するためには、増加する既存顧客との関係性の維持が重要となってくるのです。したがって、カスタマーサクセスを行う多くの企業では、「チャーンレート(解約率)」をKPIのひとつとしています。