「電話だから」と軽視しない 導入企業が課題を抱えるワケ
――菊池さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
愛媛県でのアパレル企業勤務を経て、2011年にブリッジインターナショナルに入社しました。当時はインサイドセールスという言葉もまだ現在ほど浸透しておらず、電話による非対面営業の募集を見て「こういう仕事ってあるんだ、面白そうだな」と思ったのを覚えています。入社後は松山事業所で、通信業界のお客様からアウトソーシングで委託されたプロジェクトにアサインされました。右も左もわからずという状況でしたが、数多くのお客様のインサイドセールスを請け負ってきた弊社には、しっかりとしたトレーニング制度があったため、それに沿って少しずつ成長できたと思います。
同じプロジェクトで 2014年にスーパーバイザーになり、メンバーのトレーニングやチームの KPI管理も任されるようになりました。そして2017年には東京本社へ転勤となり、それまでの経験を活かし、現在は弊社のフィールドセールスの担当として、お客様へインサイドセールスの導入や運用支援・運用改善に関する提案を行っています。
――インサイドセールスという言葉が日本企業に知られていないころから、経験を積まれたのですね。現在は企業にインサイドセールスを導入・運用支援を提案するお立場ということですが以前と比較して、インサイドセールス支援の引き合いはどのような状況でしょうか。
お引き合いは増えています。2016年ごろからインサイドセールスという言葉が一般的になってきましたが、昨年からの新型コロナウイルスの影響で一気に加速している状況です。特にコンサルティングファーム、金融、医療機器メーカー、精密機器メーカーなど、それまで対面営業を重視していた業界からのご相談が増えています。
お客様の状況をお伺いすると、インサイドセールスを導入したもののうまく機能していないというケースが非常に多いと感じています。考えられる理由のひとつとして、インサイドセールスが、従来の対面型営業であるフィールドセールスより、どうしても軽視されがちであることが挙げられます。「どうせ電話で非対面なんだから」という理由で、担当者がほかの業務と兼務しながら運用していることが多いようです。兼務の場合、PDCAを適切に回して活動の質を高めていくことも難しいため、結果的にインサイドセールスを導入したものの成果が出ないという状態になっているのだと思います。
本来、インサイドセールスを導入するからには商談数の増加や売上貢献への期待があるはずですが、専門の組織としてきちんと育てていこうという取り組みは、私が知る限りあまり見られません。「マーケティングツールを導入するだけで成果が出るわけではない」という課題がよくありますが、それと似ています。ましてインサイドセールスは営業職ですから、「いる」だけでうまくいくものではありません。たとえば、エンドユーザーとの「対話の連鎖」を生み出すコミュニケーションを設計するなど、十分な準備をした上で PDCAを適切なタイミングで回していかないと、うまくいかないのです。
成功の鍵は営業戦略の内製と「How」のアウトソース
――チームを立ち上げても、KPI設定の難しさなど運用の悩みもよく聞かれます。
導入すれば売上につながると考えて、最初から「KPI=売上」とする企業もあります。しかし、インサイドセールスは企業の営業活動全体のあくまでも一部だけを担う組織です。そのため、たとえばキーマンや商談の発掘数など、インサイドセールスが担当するプロセスや役割に合わせて、成果へのマイルストーンとなるKPIを設定する必要があります。もちろん、結果である「売上」を意識することも大切ですが、それだけを求めてもうまくいきません。ゴールに向かうためのプロセスを可視化し、評価をすることが重要です。
さらに、可視化することでさまざまな“気づき”も得られます。たとえば、エンドユーザーが持つ業務課題や利用している製品情報などはもちろんのこと、自社の認知や評判、競合企業・製品への評価、過去の自社からの営業活動へのフィードバックなどです。インサイドセールスの活用にあたっては、これらの情報が自社の資産になるという考えを持つことも重要です。その視点に立てば、インサイドセールスは営業としての売上貢献だけではなく、マーケティング部門や製品開発部門などに対しても、従来の営業組織と同等かそれ以上の貢献が果たせます。そのためには「売上」だけではないKPIの設定が重要な動機づけになるのです。
――御社がインサイドセールスの導入・運用を支援している企業には、どのような特徴がありますか。
我々は「ANSWERS」と称して、自社でインサイドセールスを運用されるお客様を対象に、インサイドセールスの内製導入・運用を包括的に支援するサービスをご提供しています。「ANSWERS」は、インサイドセールスに必要なフレームワークを、必要なツールとともにご提供するもので、中小企業から大企業まで、さまざまなお客様にご利用いただいています。共通項を挙げるならば、本来は自社でインサイドセールスの立ち上げやトレーニングを進めたいと考えながら、具体的な立ち上げ方法や、トレーニングプログラムが必要十分であるかどうか、不安を抱えられているお客様が多いということです。
――現在はアウトソーシングしている場合でも、将来的には内製したいと考えている企業も多いと思います。御社へのアウトソーシングと内製を組み合わせて、成果を出すことも可能なのでしょうか。
もちろんです。言ってみれば「ハイブリッド」で運用されているお客様も実際に多くあります。特に、新たなキーマン発掘や新規開拓に向けたエンドユーザーのプロファイル収集など、セールスプロセスの前半部分を弊社にアウトソースされるケースが多いです。実は営業部門が花形部署と言われているお客様ほどその部分が苦手で、ベテランの営業担当者には成果に直結するクロージング活動に集中してほしいと考える傾向があることも関係していると思います。弊社のメンバーは専門のトレーニングを受け、多くの経験もありますので、エンドユーザーの本質的な課題に沿った商談を作ることができます。それらをお客様へ提供すると、「集められている情報量と質が圧倒的に違う」と商談を担当される営業の方からご評価いただくことも多いのです。
一方で、インサイドセールス導入の目的やその役割、つまり、どのようなエンドユーザーに対して何を売りたいのかという営業戦略はお客様自身でお考えいただく必要があります。その戦略に沿って、どのように商談や提案につなげていくかという「How」については、約20年間インサイドセールスの提供に取り組んできた弊社にお任せいただければと考えています。
インサイドセールスは「会社の顔」
――御社自身も最近インサイドセールスチームを立ち上げているそうですが、実際に立ち上げに取り組んでみていかがでしたか。
実は、弊社がインサイドセールスチームを立ち上げたのは2020年でした。インサイドセールスソリューションを提供する事業者でありながら、正直なところ立ち上げにはとても苦労しました。弊社はお客様の法人営業改革を全体的にご支援しており、実際の提案は、コンサルティングのような上流工程から、下流にあたるITシステムソリューションまで非常に幅が広く、またそれらを組み合わせたものも多くあります。インサイドセールスでは、このような多種多様な提案の切り口を適切に選択するためのヒアリング課題を設計し、きちんと実行に移す必要があります。その設計や必要になった準備は非常に複雑でした。ここで積んだ新たな経験をお客様へ還元していければと考えています。
――御社のインサイドセールスならではの特徴や工夫はありますか。
インサイドセールスには「自分の創出した案件がどういう成果に結びついたか」までの結果責任を求めています。そのために、フィールドセールスの商談の場に担当したインサイドセールスが同席したり、案件によってはメイン担当者として、プレゼンテーションやクロージングまで対応したりすることもあります。それが結果として営業組織全体のパワーを底上げになっていると考えています。
また、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの連携にはさまざまなデジタルツールを活用しています。ツールと仕組みとをうまく活用して営業活動を成功させる「法人営業のショーケース」になりたいというのも弊社が掲げている目標のひとつです。
――インサイドセールスを若いメンバーの育成の場とするケースも多いですが、御社ではどのような人材配置を行っていますか。
まず、弊社では若手だからインサイドセールス、という考え方はありません。若手社員もいれば、インサイドセールスのキャリアに特化したベテラン社員もいます。インサイドセールスを経験して、フィールドセールスに異動する人もいます。全体感を捉えてお客様や組織にとって何がベストかをゼロベースで考えられる人はフィールドセールスの適性があり、目の前のお客様のお悩み事に向き合い、深く掘り下げて本質的な課題を引き出せる人はインサイドセールスの適性があると個人的には思います。人材配置には、そのような適性とメンバーのキャリア希望を考慮して決めています。
――インサイドセールスというお仕事に熱い思い入れがあることを感じています。菊池さんにとってインサイドセールスとはどのような仕事でしょうか。
インサイドセールスは、「企業の顔」だと思っています。お客様と最初に接触し、会話をする回数もいちばん多いわけですから、たとえば「ブリッジインターナショナルの営業は?」とお客様へ聞いた際に、インサイドセールスの担当者の名前が挙がる、そうなるような重要な仕事だと思います。私自身がインサイドセールス担当として活動をしていたときも、お客様の課題をいちばんしっかり捉えて解決策を出してあげられるのは自分だという気持ちでやっていました。すべてのインサイドセールスの方には、そういう気持ちで取り組んでほしいなと思います。
法人営業も買い手の変化に合わせ変化していく時代へ
――変化の激しい1年でしたが、今後、顧客の営業組織にどのような価値を提供していくのか展望を教えてください。
法人営業を展開する企業の営業現場は、今後さらに「デジタル化」を進める必要があると考えています。それは、コスト削減や効率化を進めるためといった売る側の理由ではありません。エンドユーザーである買い手側が「デジタル」を活用した購買行動を一層望むようになってきているためです。いま買い手側はウェブやチャット、オンラインミーティングなど、さまざまなデジタル環境・ツールを駆使して情報収集や購買行動を行うことに慣れ、それが快適であるとさえ感じ始めています。法人営業の現場はそれら買い手の購買行動の変化に対応するために、顧客接点や顧客情報の一元活用などにおいて、デジタル武装を進めることが求められていると思います。
弊社は創業以来、「法人営業改革を支援する」というビジョンのもと、お客様の営業組織が目指す変革を常に支援してきました。今後は「デジタル化/ DX 化」を支援するための仕組みやサービスを提供していきます。そのショーケースとして、弊社の営業組織が常に最先端のデジタルツールを活用した取り組みを実践し、弊社からの営業活動を通じてその効果をお客様に体感いただけるよう進化を続けたいと考えています。
――さいごに、営業マネージャーへのメッセージをお願いします。
私は営業を楽しい仕事だと思っています。それは、たくさんのお客様と出会い、お客様とのコミュニケーションを通じてお役に立てるご提案を行い、成果を得て会社を動かすことができるからです。まさに営業ならではの醍醐味だと思います。
しかし、これまで法人営業の仕事に魅力を感じる若者は少なかったのではないでしょうか。それは、旧来の法人営業は属人的で、ひとりの営業担当にさまざまな仕事を「手作業」で担わせるなど、いわゆる「イケてない仕事」だったからではないかと思います。仕組みとデジタルツールで支援することによって、法人営業をもっと「イケてる」仕事にする。インサイドセールスとフィールドセールスとを組み合わせることによって、それを実現できると私は考えます。そのような法人営業組織をつくることで、多くの若者が法人営業の仕事に魅力と将来性を感じ活躍できるよう、営業マネージャーの皆様の課題に1つひとつ一緒に取り組み、ご支援をさせていただきます。
――御社の営業組織が、ショーケースとしてより進化しながら日本企業のインサイドセールス支援をさらに加速されていくことが非常に楽しみです。本日はありがとうございました!